今日の司令官はとても機嫌が良さそうである。
それもそのはず、昨日にボーグクィーンの頭の配線を抜くと言う大仕事を終わらせたばかりで、今日はライサに行けるのだ。
とは言ったものの立場上今日1日だけで、しかも午前中は仕事、明日も午前シフトに間に合うように戻ってこなければならない。
ついでに言うと、移動手段は副司令官の圧力、もとい大人の事情によりシャトルである。
「副官も、素直に1日行かせてくれたらいいのになぁ。ライサって言った途端に今日の午前中は仕事しろって。プラモ組み立てるから基地内に居るって言ったら1日休暇にしてくれたかな。そしたら転送でこっそり抜けて1日ライサにいれたかも。。」
司令官、モノローグが外に漏れてますヨ。
ま、周りに誰も居ませんけれど。


「おはよう。」
兎にも角にも、午前シフトの仕事をしなければ。
「おはようございます、司令官。」
ブリッジ勤務の仕官たちが返事をする。
「司令官、早速で悪いんですが物資の仕入れに行ってきてください。」
あいさつもそこそこに、黒い微笑を顔に張り付かせた副司令官がそう言った。
よく見ると、口元は笑っているが目が笑っていない。
「え、アカデミーが休暇に入ってるし、科学主任とかに行かせたら?って、すっぽっくチーフはどうしたの?」
「すぽっく中尉はロミュラン風邪で昨日から休暇中です。科学主任は午後シフトなんでまだ寝てます。」
「うぐ…。」
「それに今日の午後から休暇じゃないですか。行く前に一仕事済ませてから行ってください。」
「いや、だったら副官が…。」
「10分後にシャトルで先方がいらっしゃいますから、よろしくお願いしますね。」
「ハイ、ワカリマシタ。」
戦艦エンキドゥ、戦艦さなえの前にあっけなく撃沈である。
「あ、物資入れるついでに貨物室の整理もお願いします。」
哀愁を漂わす背中を向け、司令室を後にする司令官に追い討ちをかけることも忘れない。
副官おそるべし。


「うお!!!??」
断っておくが魚が基地内に落ちていたわけではない。
21世紀、某所歩行者道路のど真ん中に水クラゲが3匹落ちていたことはあるらしいが。
それはさておき。
先の悲鳴は無事取引を終え、貨物室に入った司令官のものである。
「こ、こないだ科学主任と片付けたような気がするんだけどな。。」
そう、先日遭難ごっこが出来るくらいに荒れ果てた貨物室は、科学主任と司令官の手によってきれいに整理整頓されたはずである。
というか、されたのだ。
にもかかわらず、どうだろう。
あれから1ヶ月も経っていないと言うのに司令官の目の前には荒野が広がっていた。
「やるだけやるか。」
とりあえず、仕入れた物資を所定の場所に収めて、目についたところから片づけをはじめる。
…。
……。
………。
…………。
「埒があかーん!!!」
司令官、キレた。
「エンキドゥからアク。」
「…はぃ、、。」
しばしの空白の後、眠そうな科学主任の返答があった。
「片付け、好きだよね?」
「ぇぇ、好きですけど。。」
「じゃあ今日、勤務終わったら貨物室片付けてくれないか?」
「いいですよ。…ってか、まだあと2時間も寝れるじゃないですか、中途半端な時間に起こさないでくださいよ(プツッ)」
一方的に通信が切れた。
寝た子を起こすのは、、危険である。
「よし、行く準備しよう、そうしよう。」
切り替えが早いのは、もはや特技としか言いようがない。


「さなえからエンキドゥ。」
「どうした?」
「言い忘れてましたけど、アラゴスタとダルダヌス使えませんから。」
「へ?」
「最近全然使ってないギニュー整備していってくださいね。」
語尾にハートマークが付いてそうな台詞ではあるが、言っていることは鬼である。
「うが…。」
「がんばってくださいねー。」
今日は厄日らしい。
司令官はそう割り切ることにしたようだ。


「シャトルの整備かぁ。機関主任休みなのが痛いな。いや、機関部員が少ないのがそもそもの間違いなのだろうか。」
そもそもの間違いは自分だけライサに行こうとしたことですよ。
「ついでだし改造もしてやるか。」
第113宇宙基地で唯一ノーマルだったシャトル、ギニューにハッキング機能がついたのにはこういうわけがあったからなのであった。


その後、司令室では。
「おはようございます。」
科学主任が出勤していた。
「おはよー。」
「副官、司令官ライサに行けたんですか?」
「何が何でも行きたかったみたいねー。あれだけ妨害工作したのに行っちゃった。」
やはり、今日の副官の行動には裏があった。
「普段の勤務もそれだけがんばってくれたらいいのに。」
「あー私もライサ行きたいよー。休みー。スイーツー。」
雑煮の中で溶けた餅よろしく、椅子の上で器用にダレている副官である。
「今晩わらび餅作るんですけどいりますか?」
以外かもしれないが科学主任は菓子作りが得意だ(好きなわけではないらしい)
「ちょうだい!」
「あ、そうでした副官。」
「何?」
「午前中に司令官から通信があって『貨物室片付けてほしい』って言われたんですけど、司令官の私物、処理しちゃっていいんですよね?」
「もちろん♪」
司令室には、悪魔が2人居た。

■元ネタ
エンキドゥ・義光 2008年2月1日の71%はライサに休暇に行きました。
エンキドゥ・義光 2008年2月1日の19%はシャトルを違法改造しました。
エンキドゥ・義光 2008年2月1日の6%は貨物室の整理整頓をしました。
エンキドゥ・義光 2008年2月1日の3%は物資仕入をしました。
エンキドゥ・義光 2008年2月1日の1%はシャトルの整備をしました。


第113宇宙基地の1日は?はこちら


■作者・科学主任から一言
クラゲのくだりは実話です。
通学途中に二度見しました(笑)
ええと、上官の方々スミマセンでした。
でも懲りずに書きます(マテ
今日、アカデミーが休みだった科学主任は、趣味である惰眠をむさぼっていた。
否、惰眠をむさぼるつもりであった。
目が覚め、コンピュータに時間を問うたアクは絶句した。
習慣とは真に恐ろしいもので、いつもの起床時間に起きてしまったのである。

実のところやることは多大にあった。
アカデミーの学期末のレポート課題に期末試験対策、そして来期新入生のためのサークル勧誘用チラシ製作に、アマチュア企画の脚本執筆。
惰眠などむさぼれるはずはない。
彼女の場合、睡眠自体が現実逃避である感はどうしても否めないが、深層心理がそうさせてくれなかったのであろう。


話は元に戻り、アクの自室。
前出の原因でベッドの上をしばらくのた打ち回っていたわけであるが、このままでは埒が明かないと理解したのかおもむろに起き上がった。
しかし、そのまま動く気配がない。
「あ、しまった。。。」
たっぷり数分は経った頃、ポツリと発せられた台詞。
どうやらベッドに座った状態でうたた寝をしていたようだ。
よくこれで、今までの学生生活を正常に送れているものである。

目が覚めてから約1時間後、ようやくベッドから脱出したアクは、ストレートに見えて実は癖毛で扱いが非常に難しい髪の毛のセットに格闘しつつ、朝食のメニューを考えていた。
「ああ、睡眠時間短いとあんまり難しいこと考えてられんわ。」
短いと言っても軽く10時間は寝ているはずなのだが…。
それはさておき、メニューは決まったようである。
「ボイルキャベツ1/4個、青じそドレッシング10g、ライス100g、梅干2個」
レプリケーターに向かって発せられたのはこんなよく分からないメニュー。
健康なのか不健康なのか、そもそも食事として成立するのか否か。
アカデミーの食育はどうなっているかと艦隊上層部で議論が行われそうなラインナップである。
「いただきまーす。」
この女、どこまでキャベツと梅干好きなんだろう。

§ § §

「司令官から科学主任。」
「はい、どうしました?」
「冬期休暇中にわざわざアカデミーに出向いてアカデミー生生活相談室の大掃除を手伝ったんだって?」
「ええ。いつもお世話になってますし、片付けは好きな部類に入りますからねぇ。」
「よし決定だ。」
「何がです?」
「今から貨物室の片づけしようと思ってるんだけど、今日非番で頼めそうなのは…。」
「私だけなんですね、分かりました、すぐに伺います。」

朝食は食べ終わったが食器も片付けず、ソファに座ってボーっとしていた。
課題類は早急に手をつけなければ今後の生活やら仕事にも影響が出てくるのは明白である。
しかしながらそうと分かっていてもめんどくさいものはめんどくさい。
自分への言い訳としての適当な口実を作るため、司令官からの申し出を速攻で承諾した。
さっきまでのダレ具合が嘘のようにテキパキと朝食の食器を片付け始めた。
「この食器が今日の夕飯かなぁ、それともおやつかなぁ。」
そんなに感慨深く言う必要ないんではなかろうか。
科学士官と言う立場上(まだアカデミー生で見習いではあるものの)やはり、物事の本質を見る癖が付いてしまったらしい。
今朝顔を洗った水は…。
そこまで考えてその思考は放棄した。
世の中、考えるべきことそうでないことは、レプリケーターに関しては実に明確に区別されている。
生成される物体の組成については完全に後者の範疇だ。



現実が満ち溢れている自室から脱出し、起床時とは打って変わったにこやかさで貨物室へと向かう。
と、ターボリフトで勤務に向かう通信主任と一緒になった。
「おはようございます。」
「おはよう、ホロデッキに遊びに行くの?」
「いいえ、司令官と一緒に貨物室の片付けです。」
「うわ、大変そうだね。」
「いえ、片付け好きなんで。」
「へ~。ところで何時くらいに終わるの?」
「ええと、多分夕方には終わっていると思いますよ。」
「勤務明けにレクリェーションデッキでエクササイズしようと思ってるんだけど、一緒にどう?一人じゃ張り合いなくて。」
「いいですよ。」
「じゃあ、掃除頑張れ。」
いくらなんでも現実から逃げすぎなんじゃなかろうか。
通信主任が出て行き、一人になったターボリフト内でふとそのようなことを考えたアクであった。



「遅くなりました。」
アクが貨物室に入った時、目の前には大量のガラクタがうず高く積まれていた。
いや、ガラクタではないのかもしれないが、ぱっと見はただのゴミである。
シャトルが一機爆発し、その残骸をすべて収めたような状態だ。
「あ、来たか?こっちだこっち。」
「こっちってどっちですか?」
声が聞こえる方向を頼りに司令官を探すが、この暫定ガラクタのせいで音が反響しまくって訳が分からない。
「入り口にトリコーダー置いてあるから、それで生体信号拾ってきて。」
裏山で遭難したどこぞの21世紀の某高校山岳部じゃないんだから、基地内で捜索ごっこって…。
アクは心の中で盛大な突込みを入れた。
これでも半分は関西人の血が流れている。

それはさておき。
「これどうしたんですか?」
「マサ艦長がアーガスの近所で回収してきたんだ。なんでも、ヒュウガのセンサーでは組成が分からなかったらしくって。」
「それって、非番云々関係なくもろに私の仕事じゃないですか!」
「うん、だからあらかた整理が終わったら科学ラボで分析進めて。」
「分かりました。」
これは現実逃避以前に科学ラボに長時間缶詰になる羽目になるかもしれない。
科学ラボでの長時間の実験は別に苦にはならない。
それが好きで科学者を志したわけである、問題は課題類だ。
司令官の証明書があれば課題の期限は何とかなるのだろうか。
そんなことを考えながら、黙々と作業をする。
「あ、そういえば聞きたいことがあるんだけど。」
「なんですか?」
「来月に何か催し物をしようと思ってるんだけど、おでんパーティーってどうかなぁ?ほら、この基地ってゲストも含めて日系士官多いし。」
「いいんじゃないですか?おでんって地方によって結構色々バリエーションあるみたいですからねぇ。」
「とりあえず、関西風と関東風だよな。」
「ええ、あと静岡おでんっていうものもありますよ。青のりとかつお節かけて食べるんですよ。具も他の地方にはないものもありますし。」
「よし、じゃぁおでんで決定だな。具はどんなものがあるだろう?」
「うちの母は手羽元とか入れてましたよ。食べるタイミングを逃すとただの出し殻食べてる感じになりますけど、ちゃんとしたタイミングで食べればおいしいですよ。」
「でもやはり、バクダンははずせないだろう。」
「当然です、、って、その言い方は関西人以外には通用しませんよ。」
おでんについて熱く語り合いながら、二人はもくもくと作業を続けていった。


ラボで実験、そしてレクリエーションデッキでエクササイズ。
今日あるはずの楽しいことを連想しつつ、さらに来月のパーティーに思いをはせる。
そんなこんなの、アクの1日。


■元ネタ
2008年1月12日、アクの64%は地方別おでんの食べ方について熱く語り合いました。
2008年1月12日、アクの21%は貨物室の整理整頓をしました。
2008年1月12日、アクの7%は科学ラボで実験しました。
2008年1月12日、アクの4%はレクリエーションデッキでエクササイズしました。
2008年1月12日、アクの4%はレプリケーターの食事が元は何だったのかを考え込みました。


第113宇宙基地の1日は?はこちら


■作者・科学主任から一言
レプリケーターの件より前は実話です(いや、コンピューターに時間は聞いてませんけど)
あと、裏山で遭難した山岳部があるのも事実です。私がキャベツと梅干好きなのも。。。
小説書くのは実に2年ぶりです。
ここまで読んでくださってありがとうございました♪
■21世紀初頭における、24世紀にも生かせそうな科学技術~その1
『発電床』

現在JR東京駅丸の内北口の改札で実験中とのことです。
なんでも、歩行の際の振動で発電し、省エネに役立てようとの試みのよう。

圧力をかけると発電する圧電素子を敷き詰めたと言う単純な仕組みのようです。
ただし、発電量は1日で100W電球が1分強発光するだけだそうです。
その将来性に期待です。
■議題
アキラ級宇宙艦の当初の運用目的

■議題提示
・連邦宇宙艦ナルト艦長 MASA少佐

■主任研究者
・第113宇宙基地司令官 エンキドゥ・義光中佐

■回答
DS9で小型攻撃艇(ペレグリン級というらしいですが)を搭載する能力があるのだと思います。


(スミマセンコピペです)
■議題
最大転送可能距離はどのくらいか

■議題提示
・第113宇宙基地副官 さなえ中佐

■主任研究者
・第113宇宙基地科学主任 アク

■補助研究者
・連邦宇宙艦ナルト艦長 MASA少佐

■回答
詳しいメカニズムは抜きにして、TNG時代は約40,000 kmだそうです。
この距離はだいたい地球の直径の3.14倍になります。
これは、宇宙空間から惑星表面への転送時の距離で、岩盤などを通してではもっと短くなるようです。
2Km厚の花崗岩くらいであれば、転送は可能だそうです。
基本的に転送距離は転送される物質の荷重と相対速度に影響されるようです。
また、通常デフレクターシールドを通じての転送は不可能で、ワープ中の転送も目標との相対速度がゼロでない限り不可能だそうです。