「住み始めてからの“その後”」④
家づくりは、完成した瞬間に終わりを迎えるものではありません。
家が建ってからが、本当のスタートです。
この実例集では、私が住宅ローンで関わったご家庭の住み始めてからの“その後”を紹介していきます。
④団信に救われたケース
私がまだ若かった頃に担当した、あるご夫婦のお話です。
奥様は私と同級生、ご主人は5歳年上の32歳。お子さんが生まれ、さらに身体の不自由なご両親と同居するため、新築住宅を建てることになりました。
当時は住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)で目一杯借入をして不足分は民間のローンでという時代。住宅金融公庫の審査も問題なく通り、2,000万円の住宅ローンを組むことになりました。
今もそうであるように当時も住宅金融機構の融資は団信加入が条件ではありませんでした。しかも記憶では当時はまだ一般団信しかなく、加入も「本人の希望次第」という雰囲気が残っていた時代です。
健康に問題はないとの事でしたが、私は強く加入を勧め、保険料を払ってでも団信に入っていただくことになりました。
しかし、新居に住み始めておよそ2年後、ご主人はまだ若いのに脳卒中で突然亡くなってしまいました。30代半ばという若さでした。
葬儀が終わり、少し落ち着いた頃でしょうか。残された奥様と小さなお子さん、そして義理のご両親の4人で来店され奥様はこうおっしゃいました。
「一般の生命保険には入っていたが、その保険金で住宅ローンを全額返してしまうと、子供がまだ小さく私が働きに出られないため、生活が立ち行かなくなる。住宅ローンの返済をどうにかならないか。」
借入手続きはすべてご主人が行っていたため、奥様は団信に加入していたことも、その仕組みすらご存じありませんでした。
そこで私は、ご主人は団信に加入しており団信の保険金が下りれば住宅ローンは完済となること、一般の生命保険は生活費として使えることを説明しました。
身体の不自由な義理のご両親は、まだ息子さんを亡くした悲しみの中にありながらも、涙を流して喜んでくださいました。そして何度も「ありがとう、ありがとう」と息子さんに語りかけていました。
奥様からも今でも感謝されており、あの時のお子さんにも今は子どもが生まれ、幸せに暮らしていると聞いています。
団信の保険金請求を実際に経験したのはこの時が初めてでしたが、融資の際に強く加入を勧めて本当に良かったと心から思ったケースでした。
家を建てる目的は「住む人(家族)のしあわせ」です。
