この夏、入院をした。

主治医が、どこか自信ありげ(に見えた)に、オレに言ったのは7月のある日。
「睡眠障害の専門病院があります!」
なんだか「思いつき」のようなその発言に、「なぜこのタイミングで??」という気もしたが、
今までなかったアプローチが意外な出口になるかもしれないという期待が勝り、
一晩かけて睡眠の状態をチェックする検査を受けることにした。

当日、午後に防音が施された個室に入り、もろもろの説明を受ける。
普段飲んでいる眠剤は、そのまま飲めばよいらしく、
飲酒、喫煙などはもちろんNGだが、就寝時間までは自由とのことだった。
プラプラ散歩しようにも、周囲に何もない田舎にある病院で、
テレビを観るためのカードを購入したけれど、特に観たいものもなく、
読書をして、時間をつぶした。

夜の8時過ぎから、全身、頭から足にかけて、非常に多くのセンサーをつける。
これが、2人の看護師による30分もかかる作業なのだ。
頭に繋がれたセンサーはネットで押さえられているので、
「仕上がり」は、なかなかちょっとホラーな代物だった。
その後、ほぼほぼ固定された身動きが取れないせいもあるので、
早めに寝る体勢に入った。
「うまく、眠ることができるだろうか?」
「決定的な疾患が発見されたら、どうしよう?」
などと思いながら……。

家では、夜中に何度も中途覚醒というものが起こり、
冷蔵庫のものをゴゾゴゾと食ったりする。
しかし、人生初の入院であったにもかかわらず、
案外あっさりと落ちて、気がついたら朝という感じだった。
6時くらいにセンサーを外してシャワーを浴びる。
病院食を興味深くいただき、退院となった。

後日、結果を知らされた。
「大きな異常はありません」
無呼吸症候群よりも軽度な「低呼吸」という状態になることがあったらしいが、
これは一般に多く見られる現象で、治療が必要なものではないとのこと。
「あ、ああ、よかったです!」
素直にそう言いました。

自分は、おそらくここで目に見える形で治療すべき対象が見つかり、
それによって、新しい健康な身体が得られることを願ったんだと思う。
しかし、そもそもが「健康」だったという顛末である。
何かにつけて、自分はかなり頑丈であることを実感することがある。
「人はなかなか死なない」ものなんだ。
まあ、睡眠覚醒リズムはぐちゃぐちゃで、一日頭が痛くて、
あまりの全身のダルさに倒れたりするけれど、死なない。
というか、健康。

とりあえず、睡眠の病気があるようにオレに言った主治医、
少し文句でも言ってやろうか。