「うちの会社は、入るのも大変だけど辞めるのはもっと大変よ!」

これは、以前に休職していた際に、上司から言われた言葉だ。
新卒で入社した。
それは、もう大昔のことであるし、ただ若いだけで社会のことなど無知であり、闇雲にただ「希望」を抱いていた頃と現在を比較しようとしても、なかなかうまくいかない。

病気が理由であれ、他の理由であれ、退職にはそれなりの手続きが必要なのだということは、わかるよ。
でも、「もっと大変」とは、どういう意味なのか。
たぶん、自分はもうすぐこのことを思い知らされるような気がする。

「入る」大変さは、筆記や面接を潜り抜けることだ。
人事としては、外れを引かないように、一年がかりで準備をする。
そして、企業内において、「使える人材」へと育てていく。

「辞める大変さ」とは、そういった人材が流出しないようにする企業の「意思」と闘うことなんだろうか。
そこでは、個人の事情よりも、駒をひとつ失うことの方が優先されるのだろうか。
そもそも、僕はどんなふうに育ったんだ?
はい、育ってませんよ(笑)

今回も、何の準備もなく休職期間に突入してしまった。
もちろん、デスクの上も中もそのままだ。
ただ、一瞬の間に、
「もう戻ってくることは、ないだろうな」
と思ったことを覚えている。
今となっては、再びあの場所で仕事をする自分が想像できない。
主治医によると、辞めることを前提に復職することは、会社に不義理をすることになるために、休職のまま退職をすることが一般的だそうだ。
だとしたら、あの場所を片付けるためだけに、出向く日が来ることになる。

「冷静に判断ができるようになるまで待て」

という主治医に従うと、まだ先のことになるかもしれない。
そもそも、辞める際に、会社と対立しなくて済ますことはできないのだろうか。
今、なんとなく嵐の予兆を感じて、大いに困惑している。