【ある男】


誠文堂文具店
外は…激しい雨
中では女が文房具を補充しながら…
泣きそうな表情…

と同時に
一人の男が店に入ってくる

客と目が合う…が
何も発することなく
男はお会計をする

そのとき…停電が起こる

店内は真っ暗になる…
男がブレーカーはどこですか?
と言う
周りはついているからと…

男が…ブレーカーを上げて
店内に灯りが戻り
男は傘を差して去っていった…

ある朝…
女の家
息子の悠人が起きてくる

母親が
レンコンさん入ってるやつ
向こうに持ってってくれる

OK!

鈴の音…
女の母親が手を合わせる

レンコン美味かったよ
お漬物 要る?
日常の様子が続く…

悠人は友だちと自転車で遊びに行く

自転車を止め…
ボール遊びをはじめる

その近くに
文房具を買っていた男が座って
何かを書いている…

そして…また
土砂降りの雨の中
男が店に来ていた…

店内にきていた人と喋っている声…

最近 思っちゃうわ
お父さん 先に天国に
行ってくれたんだって…
遼ちゃんが向こうで
さみしくならんよう
自分のことは
全部 後回しにして

孫のことを
考えるような人じゃったもんねぇ
正広さん

そこに悠人が帰ってくる

奥村のおばちゃんが
大成堂のケーキ買ってきてくれたよ

イチゴんやつと モンブラン

うそー! 
と喜ぶ悠人

悠人も おるっちゃし
初江さんがしっかりせんと
一番つらいとは
里枝ちゃんやっちゃし

横浜から戻ってきて
独りぼっちよ…

男がお会計にいくと…
奥村という名の女が
男に…
お兄さん
絵 描くの趣味? と…
聞くと…

男は…
声を出さずに…頷く

お兄さんが
絵 描いちょるとこ見たって
うちのお客さんが
言うちょったかい

清瀬川んとこの芝生で

今度 見せてよ〜
と言うが…

男は…
見せるほどのものじゃないです…と

里枝ちゃんも
見たいじゃろ?
と…奥村

おばちゃん 困っちょうよ…

ペコリとする…奥村

初江さん こないだね…
と…奥村は喋り続けるのだった…

別の日

ある場所では…
大祐
木の重心を見て
切り倒す方向を決めっとよ

こん木やと…
向こうに倒しやすい
分かる?

重心があるやろ?

大祐…
はい ああ…

そう 偏っとっとさ
そしたら
倒す方向に受け口を切る

近くの作業員が
黒木!
うんちく 長えが!

作業員たちが笑う

うるせえが!

ダメなんだよ
言葉で言ったってな

黒木…
見とけといい

チェーンソーで木を切り倒す

大祐 やってみな…



  農林土木組合

その谷口大祐って人 どこの人っすか?

群馬の伊香保温泉って
あるやろ?
そこの旅館の次男坊だって

結構 老舗の…

そんなとこの人が
なんで こんなとこで
林業やるとですかねぇ?
なんか気持ち悪い感じせんですか?

確かに 
普通じゃないけどよ…
まあ 人間
ある程度 生きると
すねに傷
持っちょらんヤツなんて
おらんやろ…

前科持ちとか?
問題 起こされたら
たまらんでしょ…
なんか暗い感じやし

暗いんじゃないの
おとなしいの
仕事 覚えるんも早いし
お前んとこの弟より
よっぽど使えるわ

タケシの話は
いいじゃないすか…

とにかくよ いいヤツよ
俺は好きよ 大祐


また…雨の日

里枝が店番をしているとき
大祐がやってきた

そして…
ボールペンを買い
里枝に絵を差し出す…

里枝は驚きながらも…

持ってきてくれたんですか?

恥ずかしいんですけど…

い…いいですか?
といい
絵をみる

絵 好きなんですね
いいなあ
なんか 悠人みたい
うちの子
よく ここで遊んでるんで

この店で見た
男の子だったかな?
た…多分 もしかして
そうかもしれないです

えーそうなんだ?
じゃあ やっぱりそっかな フフッ
えーうれしいな なんか
いいですね


あの…もし よかったら
友達になってくれませんか?
という大祐…

え?

いや
ご迷惑ですよね
家庭あるし すいません

家庭は ないですよ…
あの…子どもはいますけど
離婚したんで

あ…そうなんですね
すいません 何も知らなくて

知ってたら怖いですよ…

ああ… そう…
そうですよね

えっと…お名前は?
谷口です
名刺を渡し
谷口大祐っていいます…と

武本里枝です
と…自己紹介するのだった…


この二人は
今後
どのような関係に
なっていくのだろうか…
農林土木組合で
男たちが
話していたことは
本当の話なのだろうか…

続きはDVDで…