最近、私が演奏会で着ている秩父銘仙ベスト。

これを製作している服飾デザイナーの井深麗奈さんの企画で、影森の養蚕農家さんを訪ねました。

 

 

影森養蚕所を営んでいるのは久米さんご夫婦。二人ともとてもお若い方で、養蚕についてたくさんお話を聞かせていただきました。

 

 

お蚕は生まれてから30日間桑の葉を食べて育ちますが、生後小さい頃から育てている養蚕農家さんは全国でも珍しいそうです。

 

 

お蚕は回転蔟(まぶし)といわれるアパートみたいなところで3日間かけて繭(まゆ)をつくります。それぞれお部屋があり、ひとつのお部屋にお蚕一頭。(蚕は家畜として扱われているので一匹でなく、一頭と数えます)

お蚕は上に向かって行く習性があるので、お蚕が上に行く度に蔟が回転する仕組みになっています。お蚕は、天の虫と書きますが、天を仰ぐような恰好をするのでその名がつけられたとか。天井にもお蚕が張り付いているのが見えました。

 

 

作られた繭は、通常どこへ出荷されるのかわからないのですが、秩父では絹織物業者、さらにデザイナーの手にわたり、着物ができるまですべての行程がひとつの地域でできるきわめてめずらしい場所なんです。

かつて絹織物業者が買継商通りで絹の取引をしたのが秩父夜祭の原点。その年にできた繭を献上する儀式は今でも行われている。秩父における養蚕の起源は紀元前にも遡るそうで。この深い歴史を知るともっと秩父が好きになりますね。

 

 

昨年秋のコンサート終演後にデザイナーの井深さんと撮った写真。

秩父銘仙ベストを着て演奏すると秩父の歴史と文化が、西洋と深いところで繋がりひとつになるのを感じます。