**あらすじ**
家に帰宅した有実子は母、陽子より発見されたパソコンで遊んでいた。
することがよくわからなくなって有実子がバッグから取り出したのは、ある1枚の紙。
その紙に書かれている数字通りに有実子がパソコンに打ち込み、現れたのは…
あの年齢別恋愛サイト、星屑LOVELYだった。
有実子が星屑LOVELYのサイトを開いたその翌日、千は学校へ行くため、熱をこれでもかというほど、吸収しきっているアスファルトの坂道を歩いていた。
「あっちぃ…。」
中身のない言葉を吐き千はふと後ろを見た。
「…何してんだ、日陰…」
「うげっ、何で後ろ見ちゃったの!あと一歩なのに!うそ!エスパー!馬鹿!」
勝手に跋扈されて喜ぶ人間はいないだろう。千ももちろん例外なわけはなく。
その証拠に彼の眉間にはしわが浅く刻まれた。
「ふうん。結構結構。俺が何者だろうと君には関係ないことだね、赤の他人の日陰君。」
「え?今、なんて?」
「ほう、通じないのか。じゃあ、I have nothing to do with you,don't you?」
「どんちゅうー…?んと、えと、まじすみませんっした。あいやややや!!!マジさーせんっした!!!お許しを!!つかまじ、さーせんした。」
「…。」
「サーせんんんんんんんn!!!!!!!!!」
日陰がワタワタとうるさく謝る。このまま千が無言を貫けば、目の前の五月蝿い虫は、何か行動を起こさなければ、永久にこの状態から脱退できないことは誰であろうとも容易に想像がつくので、千はぼそりと呟いた。
「別にいいよ。五月蝿いし。そこまで俺の心のキャパシティは狭くない。逆にそれを疑われた方がー…」
「マジで!!いいの!!怒らないの!よし!」
千の決まり文句をいつもと同じようにさらりと流した日陰は先ほどまでのおどけた表情をいきなり凍らせた。そして何かを考え込むように口に手を当て黙った。
あえて何も聞かず千は日陰を見る。日陰の静止状態は変わらないため、まだ何か考えていることが窺い知れる。
あんなおどけた表情をしていたのに何かひらめくと即これである。
そして何より、日陰は普段あんなでも意外に聡かったりする。
とんだ道化師である。
そんな迷惑道化師は伏せていた顔を勢いよく上げ、どちらが本心かわからない「仮面」を顔に貼り付ける。
「そういや千って、なんであのサイトのURL知ってたの?」
少し期待していた分、少々肩透かしを食らった千はハハッと笑って言った。
「お前らがあのネットカフェに行く前の週だったかな…?」
千は思い出しながら、あの日のことをそっくりそのままを話した。
-自分が見た、すべての始まりであるあの付箋、それに書かれたURL、タイミングがよすぎる噂-
その話を始終聞き、日陰はそのままの感想を口にした。
「その付箋が始まりなのか。…フ。とんだ迷惑だぜ」
迷惑はどっちだ。と千が突っ込んでやると日陰は少しうなだれた。
「そりゃないぜー…。あ、あとさー、何で千ネットカフェなんか行ったの?お前パソコン持ってんじゃん。永久オンラインだったじゃん。そりゃもう、年中無休もいいように…。」
若干皮肉混じりな日陰の言葉を軽く無視して、千は泰然と答える。
「俺のパソコンがぶっ壊れたんだよ。それでさ、ちょい事情があって、どうしてもパソコン使わないといけなくて…。そして行ったらコレだ。」
「んー、そうなんかー…。大変だな、お疲れさんー。」
気休めにすらならない言葉を千にかけ日陰は手を頭の後ろに組んだ。
そこで会話が途切れた。
そこから二人は何も言わず、暑苦しい坂を上り続けた。
千と日陰が目的地である学園にたどり着いたのは、チャイムの不協和音が学園中に蔓延する十分前だった。
彼らの教室の扉のは片開き扉のため、上から黒板けしが落ちてくることは無かったが、別の仕掛けが飛んでくることは多々あった。
気をそこに集中させれば、飛んでくるものが教科書であろうと、みかんであろうと、ダンボールであろうとギリギリの反射神経で避ける事ができるのだ。
だが、ソレはあくまでも気を集中させていればの話である。
現に今、日陰たち二人は暑さと気だるさで集中どころが朦朧としていた。
とにかくなんでもいいから涼しいところに逃げたいという願望から日陰は勢いよく扉を開いた、開いてしまった。