GW第2日、晴天。4月最後の記事は、プログレのスターが集まったスーパーバンド、エイジア(Asia)のハーフ・ベスト的なアルバム『ゼン・アンド・ナウ』(Then & Now、1990年リリース)です。
『ゼン・アンド・ナウ』
【Then】 ”これまで”のサイドとして、5曲収録。
スティーヴ・ハウ在籍時の2作品『詠時感~時へのロマン~』(1982)『アルファ』(1983)から。
1.時へのロマン/Only Time Will Tell
2.ヒート・オブ・ザ・モーメント/Heat Of The Moment
3.この夢の果てまで/Wildest Dreams
4.ドント・クライ/Don't Cry
5.嘘りの微笑み/The Smile Has Left Your Eyes
【Now】 ”これから”のサイドとして、5曲収録。
『アストラ』(1985)から1曲、未発表曲の編集による収録4曲。
6.デイズ・ライク・ディーズ/Days Like These
7.プレイン・フォー・ア・ミラクル/Prayin' 4 A Miracle
8.アム・アイ・イン・ラヴ?/Am I In Love?
9.サマー(遅すぎた夏)/Summer(Can't Last Too Long)
10.ヴォイス・オブ・アメリカ/Voice Of America
私は、1990年10月に、中野サンプラザでエイジアのライヴを初めて観ました。本作は、その前に購入しましたが、今回は、今年紙ジャケで再発されたものを部屋で聴いています。CDによる発売でもともとアナログレコードはないと思うのですが(違ったらゴメン)、それでも紙ジャケで出るのはうれしいことです。
当時の私は本作で、1st2ndの曲をしっかり聴くことができました。もしLPなら、上記の通り、5曲目と6曲目の間で分かれますね。だから、特に、「噓りの微笑み」の美しさ壮大さは、自分がエイジアの曲中これをマイ・フェイバリットのベスト3に入れるのに十分でした。
”これから”のほうは、6は、本作の代表曲という位置づけだったように思われます。中野のライヴでも、新しい4曲の中では、これだけが演奏された記憶があります(違ったら御免2)。ただ、どうも、4曲は印象に残らず少し退屈でした。
しかし、エイジアのデビューから40周年を迎えた今年!2022年!
本作を1曲目から順に聴いてみると、当時とは違った感慨を覚えるし、発見もあります。
今回、たまたま、日本語訳詞を見ながら聴いていたら、「時へのロマン」って、「ヒート・オブ・ザ・モーメント」って、こんな歌詞だったのか、と少し驚かされました。
「時へのロマン」は、その気にさせられていただけの男が、出ていく女を、皮肉を込めて見送る歌詞です。あんなに壮大な曲調なのに、です(笑)そして、これからの時間を歩んでいく。これが、女性に対する優しさを見せるなら、大沢誉志幸さんの(銀色夏生さん作詞の)「そして僕は途方に暮れる」になるのかもしれないし、参考までに、竹内まりやさんの「もう一度」を少し思い出すところであります(状況設定は異なるかも、とは思いますが)。
でも、この「時へのロマン」における男性は、強気です(▼▽▼)(笑)
「ヒート・オブ・ザ・モーメント」は、若かった二人が、何かのきっかけで別の道を歩み、相手は龍に乗って新しい世界をめざすんです。主人公は、ディスコにもはや興味を示さない相手(音楽への、大衆の人気の変化になぞらえて描かれているのか!?)がいま、情熱の瞬間にいることを尊重しているという感じの歌詞になっています。
たしかに、40周年のいま、風の時代を迎えて、And now we find ourselves in 2022!
この歌でも、And now you find yourself in '82(そしていま、君は1982年現在、自分自身を見出している)と歌っています。ここに、'82とあるのは、長い間、僕は見落としていましたが、2022年の今、落ちていたものを拾った気分です(・_・)(笑)
いろいろな問題が起きている2022年、
今こそ、みなさん、龍に乗りましょう←
「この夢の果てまで」は、中野のライブのオープニングを飾りました。
歌詞を読むと、国に操られる兵士たちと、純粋な希望をもってこれからを生きようとする個人の想いとの完全な違いを描かれているように読めます。いまの世界に重なります。
そして、辛い屈辱の暗黒世界を越えて、もうやりたいことをやっていいんだ、僕はここにいるから、泣かないで、と、空前の希望に満ちた音とメロディを背景に歌い走る「ドント・クライ」!
前半ラスト「噓りの微笑み」は、ひとりぼっちになった男性が、新しい男性と手を取り合いつつ、こちらに笑みのない表情を見せるだけの女性を見送る歌。僕にはこういう経験が何度もありますよ。若いころ、変な男と手をつないで、雑踏で、目の前に突然出くわした時には全身から力が抜けるようでした。この歌の場合は、俺のせいじゃないと、歌われます。1曲目の再現ですね(笑)
これから何人の女性が、僕を見てやがては、微笑みをなくして自分の前から消えていくのだろう( ̄▽ ̄;
THE SMILE HAS LEFT YOUE EYES...♪
ドカーン!!(←)
さて、後半の曲も、こうして聴き返すと(ほぼ四半世紀ぶりに聴き返したかもしれない)、
それぞれ面白さがあるんです。
「デイズ・ライク・ディーズ」は、完全に他人の手による作品(スティーヴ・ジョーンズ)としては、初めてではないか(1987年映画『オーバー・ザ・トップ』サントラの「ジプシー・ソウル」は、ジョルジョ・モロダー作編曲、演奏はジョン・ウェットンのソロ状態)。今聴くと、わりと安定した、それなりに聴き心地のよい曲。なんと、ギターは、スティーヴ・ルカサー(TOTO)!
「プレイン・フォー・ア・ミラクル」は、ハードロック調のミディアムテンポのナンバーで、チープトリックとかジャイアントの高いキーのボーカルを思い起こさせました。そのジャンルの曲として聴けば、なかなかよくできていて、魂を感じます。デヴィッド・キャシディとスー・シフリンとウェットンによる作品。ギターは、ロン・コミー。
「アム・アイ・イン・ラヴ?」、ここでようやく、3rd『アストラ』のメンバー、マンディ・メイヤーがギターを弾きます。メイヤーさんはここまでで脱退。『アストラ』のアウトテイクを編集したらしいですが、やはり、『アストラ』の10曲とは趣が違っています。しかし、この『アストラ』にない新鮮な明るさを、それでも取り込むことができていたら、スティーヴ・ハウも取り込めていたのではないでしょうか(笑)
いいえ、これは本当にそう思います。『アルファ』に近い良さも感じます。ハウにとっては、『アルファ』も良くないかもですが・・しかし、いまのYESや、2006年オリジナル再結成後に出たエイジアの作品群にも通じるものがあります。
(僕は、ジョン・ペイン加入後のエイジアをよく聴いていないので、この感想は今後少し変化する可能性もあります)
「サマー」、これなかなか良くて、新しい4曲の中ではいちばん好きです。日本の80年代当時のポップスの感じもあります。
これこそ、「アム・アイ・イン・ラヴ?」以上に次への新地平を感じさせます。ウェットン&ジェフ・ダウンズが、ギターにスコット・ゴーハム、ドラムスにマイケル・スタージスを迎えて87年に録音したデモをもとに完成した作品。ここでエイジア継続は成らなかったのが惜しい。
かくして、1990年来日時には、ギターに、パット・スロール氏が参加しました。
『ゼン・アンド・ナウ』自体は、翌1991年の南米ツアー後、全米チャートで不振(110位台で終わり)。これを受けた北米ツアー中止とウェットンさんの脱退で、いったんエイジアは区切りがつきます。次の動きは、さらに翌1992年のダウンズ中心、ペイン加入の『アクア』となりますね…。
『ゼン・アンド・ナウ』の裏ジャケットには、ウェットン、ダウンズ、パーマーの3氏が出ています。
では、みなさん、この後も、よい連休をお過ごしください。