高校時代、ボート競技の楽しさを知って以来、その虜(とりこ)だ。今でも年1回開かれる埼玉県戸田市の市民レガッタには可能な限り参加し、同じ釜の飯を食べた仲間たちとオールを漕(こ)ぐ。これが実に楽しい。この時だけは経営者の責務を離れ、競技者として集中する。当時に比べて筋力、持久力は衰えた。ただ熱意は変わらない。現在のベストを尽くすため、週末のトレーニングは欠かせない。 ◇ なたまめ歯磨き
の製造などを手がける会社を経営している。朝5時半に目覚まし時計を止め、身支度を整えた後、1時間程度のウオーキングに出かけるのが、週末必須のスケジュールだ。始めて以来、少なくとも3年は超えている。 距離はおよそ5キロメートル。ほとんど同じペースで決めたコースを歩く。多少の雨ならば気にしない。帰宅後、身体が温まったところで、スクワットや腕立て伏せなど筋力トレーニングにも取り組む。年1回の市民レガッタで最善を尽くすためにも手を抜けない。 市民レガッタは母校である川口市立川口高校のボート部OB会のメンバーで参加し、「ナックルフォア」と呼ばれる5人乗りのボート競技に出場している。年齢を重ねるごとに体力が落ちるのは自然の摂理とはいえ、少しでも、それに抗(あらが)いたい思いが足を前に進ませる。 楽しみにしている年1回のイベントでケガをしたくない気持ちも強い。実は苦い思い出がある。懸命に練習し、出場を決めた1975年の高校総体。本大会で選手宣誓も任されていた。ところが直前の練習中に思わぬケガで入院し、涙をのんだ経験があった。 市民レガッタでは成績は二の次だ。ただ「この日のために」との思いで可能な範囲で努力し、持てる力をすべて注ぎ込んでオールを漕ぎ、ゴールした時の充実感は何ものにも代え難い。さらに、その後、先輩、後輩を含め、仲間たちと酌み交わす杯が抜群にうまい。 会社経営は難しい。時には打開策が思い浮かばず、思考の迷路に陥ることもある。ただ週末にはそこから一歩距離を置いて、ボート競技のことを考え、トレーニングに打ち込むことでリフレッシュできる。おかげで、なた豆歯磨き
の良いアイデアが浮かんだ経験も多い。これからもボート競技と共に生きる。
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