これ、

「小澤征爾さんと、音楽について 話をする」

という村上春樹さんの本の中の一節です。

このワンセンテンスだけで、著者が誰だかわかっちゃいますね。(正直、ちょっとふきだしちゃいました。この人、こういうインタビュー本書くときもこんな書きぶりなんだ、と。村上ワールドの匂いぷんぷん)

いつも購読しているブログ(失礼があるといけないのでここでの紹介は遠慮します)でシリーズで紹介され、すごく興味がわいて読みました。

斉藤秀雄に鍛えられたこと、日本が経済の発展段階で言えば今のインドかインドネシアぐらいのステージのころに単身外国に赴き、カラヤンやバーンスタインから学んだこと、毎朝4時に起きて譜読みに励み、音楽を極めてきたこと、ウィーン国立歌劇場の音楽監督という地位にまでのぼりつめたこと、後輩の育成、そして闘病・・・

それらの過程で小澤さんが見聞きしたこと、名演、名録音の裏話などが、8か月ほどをかけて世界の様々な場所(東京、ホノルル、スイスなど)で、著者でありインタビュアーの村上春樹さんのマニアックなリードでききだされ、積み上げられていったものがこの本です。

村上さんのマニアぶりには本当に脱帽。

おかげで、クラシック音楽の素人にとっては恰好の音楽評論にもなっています。

小澤さんの指揮は、90年代の半ばにニューヨークのメトロポリタン歌劇場で、たしかエフゲニーオネーギンかフィガロの結婚、2003年のサイトウキネン・フェスティバルでブルックナーの7番を聴いたのみ。もっと聴きに行きたくなりました。

マーラーのシンフォニーにも俄然興味がわきました。

けど、本当にすごい人の言葉っていつも率直。

レトリックを極限まで排した言葉にこめられた魂の響きって言うのかな、そんなものも感じました。

それは、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式でのスピーチにも通じるもの。

マエストロとして世界をとらえたともいえる(こんな凡庸な言い方をおゆるしください)セイジオザワには、達成感のかけらもない。

「僕くらいの年になってもね、やはり変わるんです。・・・僕は病気をして、入院して、長い間指揮から遠ざかっていて、それで今回ニューヨークに行って、ばあっと一気に指揮したわけです。それから日本に戻ってきて、お正月にほかにやることがないものだから、そのプレーバックを繰り返し聴いていました。それがね、僕にとってはものすごく勉強になりました」

それに対して、村上さん、こんなインタビューができるだけですごいんだけど、早朝4時の仕事の習慣で小澤さんと同一線上にご自分を位置づけるあたり、もしかしてやや達成感あり?なのでしょうか・・・