桜井淳事務所ホームページ / Kiyoshi SAKURAI Office Home Page

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本欄の編集方針は、2010年4月から、桜井の考え方を基に、全体を見直し、公開情報最少化(Home Page)に変更しました。2016年9月から事務所縮小化実施中です。作成記事は、公開用5%、研究のための非公開用95%です。コメントは「アメーバ会員」のみです。

(1)業務内容、(2)経歴・著書・学術業績、(3)学術セミナー開催案内など掲載。


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桜井淳の著書・共著・編著・編集・監修・翻訳75冊及び学会論文誌掲載論文32編(筆頭名21編)・国際会議論文50編(同40編)。

桜井淳カリフォルニア事務所のHP代わりの硬いブログ-原発のどこが危険か

「原発のどこが危険か」(朝日選書、1995)。電源信頼性の問題提起。福島一原発事故の予言(2011.4新版緊急出版)。

桜井淳カリフォルニア事務所のHP代わりの硬いブログ-原発事故の科学

「原発事故の科学」(日本評論社、1992)。原発事故分析の学術書(2011.4緊急増刷)。

桜井淳カリフォルニア事務所のHP代わりの硬いブログ-原発システム安全論
「原発システム安全論」(日刊工業新聞社、1994)。苛酷炉心損傷事故発生確率評価法と結果の学術書。

$桜井淳カリフォルニア事務所

「福島第一原発事故を検証する-人災はどのようにしておきたか-」(日本評論社(2011))。原因は過去半世紀の原子力開発の矛盾の積み重ねであることを論証した原発社会論。

$桜井淳事務所(水戸-サンフランシスコ-アルバーニィ)
「原発の後始末」(青春新書インテリジェンス(2012))。独自視点での原発社会論。


$桜井淳事務所(水戸-サンフランシスコ-アルバーニィ)
「福島原発事故の科学」(日本評論社(2012)、事故後11冊目)。独自視点での事故解析の学術書

桜井淳事務所(水戸-サンフランシスコ-アルバーニィ)
日経ものづくり編集部編「事故の事典Ⅱ」(桜井論文8編収録)、(日経BP社(2012)、事故後13冊目)、48000円。


「科学技術社会論序説」(論創社(2015))、3000円。東大大学院総合文化研究科での5年間の学術論文集。

【修行テーマ1】桜井の巡礼登頂、

国内(男体山、高山、前白根山、白根山、谷川岳(夏山1回、雪山1回)、八方尾根(夏山2回)、乗鞍岳、北横岳(夏山1回、雪山1回)、北岳、槍ヶ岳、西穂高(雪山1回)、奥穂高岳、北穂高岳、加波山、鳴虫山、半月山、社山、黒檜山、山王帽子山、蓼科山(雪山1回)、立山、黒部渓谷、雲竜渓谷、舘岸山(3回)、焼額山(夏山1回、雪山1回)、奥久慈男体山(2回)、筑波山、茶臼岳、黒斑山(雪山1回)、富士山(雪山1回)、裏磐梯(雪山3回)、磐梯山(夏山2回)、安達太良山)、

国内縦走(愛宕山・団子山・大福山・難台山・吾国山(16回)、御嶽山・雨引山・燕山・加波山・足尾山・筑波山(2回)、志賀山・裏志賀山・横手山、寺子屋山・裏寺子屋山・岩菅山、横手山・鉢山・赤石山、十二ヶ岳・節刀ヶ岳・鬼ヶ岳、薬師岳・夕日岳・地蔵岳・行者岳、金精山・五色山・坐禅山・白根山・前白根山、山王帽子山・太郎山、半月山・社山・黒檜岳、赤薙山・女蜂山・小真名子山・大真名子山・男体山、硫黄岳・横岳・赤岳、白馬岳・小蓮華山・白馬乗鞍岳、上高地・涸沢・北穂高岳・屏風ノ耳、高根山・寝姿山)、

海外(アイガー/ミッテルレギー稜とマッターホルン/ヘルンリ稜とエギーユ・デュ・ミディ(途中までの調査登山済み)、メンヒ、ユングフラウ、ブライトホルン、モンブラン、スンダルピーク、チュクングリー、カラパッタール、メラピーク、世界8000m級14座のチョー・オユやK2やエベレストなど)です(未完))。
完遂後に著書「巡礼登山論」にまとめます。

【修行テーマ2】桜井は、2009年4月より、比較宗教学(ユダヤ教、ヒンドゥ教、仏教、キリスト教、イスラーム)と宗教社会学の視点から、国内外の寺・神社・教会・シナゴーグへの調査研究「千寺巡礼」を開始しました。完遂後に著書「千寺巡礼/神と仏の世界への巡礼旅」にまとめます。


【修行テーマ3】桜井は、2010年9月1日より、曹洞宗禅僧として、曹洞宗総本山などで、月3回、仏教・坐禅の調査研究及び修業中です。完遂後に著書「神や仏との遭遇-禅寺修業記録」にまとめます。

委員就任(各委員名は静岡県HP掲載の静岡県防災・原子力学術会議原子力分科会議事録参照)

桜井は、2015.4に、静岡県防災・原子力学術会議の原子力分科会の委員に任命され、それ以降、主に、浜岡原発の新規制基準、さらに、その後に控えている特定重大事故防止対策施設の安全審査の進捗状況や安全にかかわる事項について、技術論と社会論を基に、検討を行っています。

主な検討事項

・新規制基準(地震、津波、竜巻、火災、火山、電源多重化、冷却系多重化など)の技術的検討。

・特定重大事故防止対策施設(新規制基準対策後から本格化する航空機衝突テロ対策)の技術的検討。

・内閣府・静岡県主催広域避難訓練(静岡県原子力防災センターでの図上訓練、半径30km圏内での実動訓練)に参加・検討(4年間4回)。

主な提案事項(静岡県HP掲載の静岡県防災・原子力学術会議原子力分科会議事録参照)

・苛酷事故対策(ハード対策とソフト対策、特に、福島事故対応失敗を克服するための人材養成)。

・ブラインド方式シミュレータ訓練の徹底。

・浜岡原発3 & 4号機の確率論的リスク評価結果の開示。

・内閣府・静岡県主催広域避難訓練の論理化。

・シミュレータ訓練と浜岡原発防災訓練の現場見学・検討(コロナ禍のため時期待ち中)。

最近の資料分析

2020年12月25日に開催された原子力分科会リモート会合の際に配布された資料「浜岡原子力発電所の安全対策の状況について」のp.8には、過去の安全審査会会合回数が記載されており、3 & 4号機の安全審査申請日から6-7年経ており、計110回の会合実績があるため、形式的には、他の審査例と比較すれば、審査終了しても良い条件に達していますが、浜岡原発特有の問題が存在するため、長引いているものと推察します。上記資料のp.10には、基準地震動について、「プレート間地震」の審査は「概ね妥当」、「増幅あり地震動」の審査は「審査中」、p.11には、H断層の審査状況について、「活動性評価の対象」の審査は「概ね妥当」、「H断層系は約12-13万年前以降活動していない」の審査は、「審査中」、p.12には、基準津波について、「プレート間地震の津波」と「地震以外の要因による津波(海底地滑り、火山等)」の審査は、「審査中」と記されております。資料の記載内容から判断すれば、残された課題は、増幅地震動とH断層であり、少ないように解釈できます。

現時点での浜岡原発のマクロ分析

岩盤の深さと質

日本の原発サイトの相互比較をして分かることは、浜岡原発サイト(最大東西方向1.6km、、最大南北方向1km)には、他にない特徴がいくつか確認できます。そのひとつは、岩盤がいちばん浅いことです。日本の原発サイトの岩盤深さは、平均地下約20mですが、浜岡サイトは、平均地下約数mと浅く、最も深いのは、柏崎刈羽原発サイトの地下約40mです。原子炉建屋の設置は、岩盤着床であり、浜岡原発では、そのまま設置せず、他の施設との整合性を図るため、岩盤をさらに地下約20mまで削り、設置しており、原子炉建屋の構造は、他のBWRのそれと同様、B2, B1, F1, F2, F3, F4, F5となっているのに対し、柏崎刈羽の場合には、特例として、B5, B4, B3, B2, B1, F1, F2となっており、世界一大きな原発であるにもかかわらず、大部分の建物が、地下に設置されているため、地上部分が少なく、非常に小さな施設と映ります。浜岡原発サイトの岩盤深さマップは、開示されていないものの、4号機附近の南北方向の断面図は、開示されており、その情報から、大雑把に、全体を推定できます。海岸から北へ約1.5kmの区間において、海岸からサイト南端の海抜約10mまでは、日本三大砂丘のひとつと位置づけられており、表面は、砂や低木でおおわれているものの、深くなると強固な地質であり、サイト南端附近の防潮堤の地下約10mには、岩盤があり、サイトを北へ進むにつれ、岩盤は地下約6mとなり、サイト北端の高さ約46mの丘は、表面が土や低木で覆われているものの、その下は、岩盤になっており、丘は、大部分が岩盤でできています。ふたつ目の特徴は、岩盤の地質が、土と岩の混合物である軟岩であり、原発を設置できるN値(高層ビルや原発の建設ではN値は50以上)は、確保されているものの、岩盤の質としては、良い部類には入りません。しかし、安全審査の審議事項には、入っていません。岩盤については原子力分科会の検討事項ではないように思えます。

H断層の質と数

三つ目の特徴は数多くの断層の存在です。浜岡原発サイトには、東西方向に、サイトいっぱいに伸びるH断層(いずも、地下約100mまで伸びており、完全に垂直方向ではなく、斜め下に伸びている)があり、一定の間隔で、サイトの南端から北端まで、計9本(過去半世紀間に、最初、3本、徐々に増え、現在、9本)存在しています。中部電力は、H断層に対し、 「耐震指針で定める活断層(12-13万問前以降に活動痕跡が認められる)ではない」と主張していますが、現在、審査中です。サイトのH断層マップと1-5号機の原子炉建屋設置位置マップを重ね合わせると、原子炉建屋は、H断層の真上を避け、H断層の間に、はさまれるように、設置されています。どのような意図でそうなっているのか?南海トラフ地震が発生すると、御前崎市は、震度七となり、浜岡サイトも、当然、震度七となりますが、岩盤が軟岩であることと、数多くのH断層の存在が、地盤の安全性に対し、マイナスの影響をもたらさないとの検討は、なされているのだろうか?H断層については原子力分科会の検討項目ではないように思えます。

増幅地震動

原発サイトの増幅地層の存在の可能性は、建設時のボーリングによる地質調査の深さ(普通150m、特に深い場合300m )の限界から、深い箇所が、どのようになっているのか分わからず、どのサイトにも存在しており、2007.7.16に発生した新潟県中越沖地震に被災した柏崎刈羽原発1-7号機(増幅地層が、サイト内の地下約20kmに存在し、2号機の東西方向の原子炉建屋B5での観測地震動約450gal.が、B5の設計地震動約150gal.の4倍、1号機と3-7号機のそれは、2倍。それに伴い1-4号機の基準地震動は2100gal.に引き上げられた)や2009.8.11に発生した駿河湾地震に被災した浜岡原発5号機(5号機直下300-500mから北東方向のサイト内外の区域にかけ、増幅地層が存在し、3 & 4号機のB2の地震動観測地150gal.であったにもかかわらず、5号機のそれは、426gal.に達した。それに伴い基準地震動は2000gal.に引き上げられた)のように、発生しないと明確なことは、何も分かりません。原発での実施例はないものの、事前に、増幅地層を把握する方法としては、ボーリングによる地質の直接調査には限界が存在するため、今のサイト内外の地表や深部に設置されている地震計による地震動観測システムを利用し、サイト内の深部で、ダイナマイトを爆発させ、人工地震動を発生させることにより、増幅地層の存在を確認することも可能です。増幅地震動については原子力分科会の検討事項ではないように思えます。

基準地震動の策定

3.11地震の発生前、政府の地震研究推進本部は、青森県沖から千葉県沖までの太平洋岸から太平洋プレートまでの間を縦方向に約二等分し、横方向に上から順に約四等分した計八区域で発生する地震のモーメントマグニチュードを推定しましたが、Mw=7.2-8.2(Mwが8.2と9.0では、地震エネルギーが、約80倍も異なり、定量的評価になっていない)と過小評価しました。それから11年が経ち、地震学のレベルは、変わっていませんが、南海トラフ 地震にかかわる評価は、信頼性が高いと言えるのでしょうか?原発の耐震設計に必要な基準地震動は、あらゆる地震を対象とし、その中から最も支配的な地震を選択し、応答スペクトル法(点モデル)と断層モデル(二次元モデル)で評価しています。浜岡原発の例からすれば、前者の方が大きく出ており、モデル化の意味からすれば、後者の方が、相対的に、より現実に近いように感じられます。後者の場合には、震源域をたとえば正方形からなる二次元的分割を行い、各領域において、たとえば、プレート間地震であれば、プレートの移動に伴う代表的な条件まで考慮した評価が可能になり、全体の影響は、個々の領域の影響の重ね合わせになるため、ベストエスティメイトとまで言えなくとも、相対的には、よりベストエスティメイトに近いと言えます。地震や基準地震動の評価の妥当性については、地震・火山分科会、津波については、津波分科会での検討に任せ、原子力分科会では、基準地震動を用いた軽水炉システムの耐震設計と耐震補強の妥当性の検討をすべきです。今の浜岡原発3 & 4号機の耐震設計・耐震補強の工学的マージンは、何倍くらい確保されているのか、途中の詳細分析まで含め、根拠を知りたい。原子力分科会での作業において、具体的な計算において、学術書の濱田政則・曽田五月也・久野通也『原子力耐震工学』(鹿島出版会、2014)が役立ちました。

桜井技術論・社会論の手法と具体化

問題提起の範囲が、炉物理、臨界安全、未臨界安全、原子炉安全解析、原発安全解析、原発事故・故障分析、経年炉安全などの範囲であれば、現役時代の知識範囲から、いくらでも深く、詳細な分析と問題提起もできますが、静岡県原子力分科会委員になってから、地盤、地震、津波、竜巻、火災、火山、航空機墜落などのような新規制基準審査プラス特別重大事故防止施設審査のように広くなると、マジになればなるほど、分からないことが多く、原子力分科会会合での質問や問題提起において、徹底的に調べ、計算し、確認には確認し、慎重に準備していますが、範囲が広すぎて、疲労蓄積の日々です。浜岡原発にかかわって35年経ち、その間、現地見学・調査10回、現場を歩きながらの質問やメールでの質問や打ち合わせの際の質問など合わせれば、合計数百件になります。それでも分からないことは多くあります。南海トラフ地震について、浜岡原発について(地盤特性、サイト特性、原子炉建屋構造設計、耐震設計・耐震補強、津波、防潮堤など)は、満足できるレベルで、独自の視点での分析と問題提起ができます。特別重大事故防止施設については十分理解可能です。学術書『科学技術社会論序説』(2015年刊行、東大大学院総合文化研究科での5年間の研究成果の体系化)の続編学術書『浜岡原発の技術論・社会論』(静岡県防災・原子力学術会議原子力分科会での6年間の研究成果の体系化)の執筆のため、徹底的に、掘り下げています。

基本文献

・原子力分科会会合配布資料および討論内容。

・濱田政則・曽田五月也・久野通也『原子力耐震工学』(鹿島出版会、2014)

桜井によるamazon書評

書評サブタイトル 原子力施設の耐震設計法の基礎から応用まで網羅した分かりやすい学術書

2020年7月5日に日本でレビュー済み 星五つ

本書は原子力関連の大学院(具体的には、早大・東京都市大共同大学院原子力専攻)の講義に採用されている教科書です。特徴は、商業用原子力施設(原子力発電所、再処理工場、低レベル廃棄物保管施設)の現場の最先端のことが記されており(たとえば、浜岡原子力発電所の耐震設計法や防潮堤設計法など)、生きた最新の情報を満載した教科書です。各章末には、多くの文献が示されていますので、根拠や詳細論については、いくらでも、遡って考察することもできます。
目次
まえがき
第Ⅰ編 原子力発電所の耐震設計
 第1章 原子力発電所の耐震設計の基本
 第2章 基準地震動の策定
 第3章 基礎地盤および周辺斜面の安全性評価
 第4章 建物・構築物の耐震設計
 第5章 機器・配管系の耐震設計
 第6章 屋外重要土木構造物の耐震設計
 第7章 津波に対する設計
 第8章 原子力発電所の計画、建設、運転、廃止措置
 第9章 放射性廃棄物の処理・処分技術
 第10章 将来に向けた原子力耐震技術 
第Ⅱ編 地震工学の基礎
 第1章 地震・地震動と津波
 第2章 構造物と地盤の動的応答解析
 第3章 耐震設計法
用語解説 
PWRやBWRのシステムの基礎から、地震や津波に対する対策、地震応答スペクトルの決め方、耐震設計法など、現場の技術が、手に取るように分かる生きた学問を体系化した分かりやすく読みやすい教科書です。本書の強みのひとつの要因は、浜岡原子力発電所の現場の耐震設計や防潮堤の設計に携わっている専門家(久野通也)が、分担執筆していることです。そのため、本書は、単なる解説ではなく、耐震現場の振動や防潮堤の波力が音を立てて迫ってくるような臨場感を覚えるほどの、ドキドキの世界に直面できます。
p.83の「許容応力−ひずみ曲線図」には、耐震構造物の許容応力とひずみの関係が記されており、塑性変形領域の設計引張強さ(Su)に対し、基準地震動(Ss)に対する許容応力として、Su×2/3となっており、材質により、異なるものの、図からは、弾性限界ひずみの3倍くらいまで許容されるように解釈できます。
そのことで思い出すのは、2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で震災した柏崎刈羽原発の耐震評価において、経産省に設けられた関連委員会では、まだ、詳細調査がなされていない頃、塑性変形を認めるか否かと言う議論が出ていました。詳細評価の結果、塑性変形に至らなかったため、その話は、断ち切れになりました。工学的に想定された設計になっていて、たとえ、そのようなことが発生しても、なぜ、問題なのだろうか?
高層ビルの耐震設計と評価基準ではどうなっているのか、私が、鹿島建設執行役員に対して実施した聞き取り調査では、「建築分野では、弾性ひずみの3倍までの塑性変形領域のひずみを許容している」と言っていました。産業技術の全分野において、考え方と設計法と評価基準は、みな、同じと考えられます。
p.83の「許容応力−ひずみ曲線図」とその解説は、原子力耐震設計のみならず、産業技術全般の設計法を理解する上で、大変、分かりやすい記載になっています。ただし、注意しなければならないことは、設計で想定されているからと言って、分野によっては、事故後において、そのままの状態で、再稼働しても構わないことを意味していないことです。
日本の原発は、建設後、社会背景により、初期設計時に考えられないほど高い基準地震動に変更になっており、それに対して、機器・配管などの耐震性は、的確な耐震補強を実施すれば、対応できますが、原子炉建屋などは、そのままになっています。
その答えは本書の69p.の図4-18の「鉄筋コンクリート造耐震壁のせん断ひずみの許容限界の考え方」から分かります。横軸が、せん断ひずみ、縦軸が、せん断応力になっています。せん断応力の終局点に対応するせん断ひずみは、4.0×10v-3であり、設計でのせん断ひずみの許容限界は、その半分の2.0×10v-3であり、実際には、その1/4くらいにしてありますから(本書の図4-26 女川3号機 最大応答せん断ひずみ、東京電力編「福島第一原子力発電所 東北地方太平洋沖地震に伴う原子炉施設への影響について」(2011.9)の図5-4-2と図5-4-3参照)、これまでの経験の範囲では、耐震補強をするには至りません。しかし、きりもなく耐えられるわけではなく、建設時の初期基準地震動の4倍くらいまでです。それを超えるようであれば、原子炉建屋と言えども耐震補強の対象になるかもしれません。
評者は、5年前から、静岡県防災・原子力学術会議原子力分科会の委員を務めていますが、専門は、原発安全解析や事故分析であったため、原子力防災や耐震設計が専門でなかったにもかかわらず、本書から学ぶことが多くあり、大いに自信を持つことができ、日本において、他に例のない優れた教科書だと痛感しました。良く言えば、学術教科書ほど角がなく、岩波新書を読むような読みやすさと入りやすさを感じました。
著者たちの「原子力施設の耐震設計法の概要的全体像を描き出す」と言う企みは、見事に、成功しているように思えます。

桜井による英語版のamazon書評

書評サブタイトル 原子力施設の耐震設計法の基礎から応用まで網羅した分かりやすい学術書-日本語版に地震確率論的リスク評価と国内外基準類追加-2Ⅰ編 原子力発電所の耐震設計 

021年7月16日に日本でレビュー済み 星五つ本書は原子力関連の大学院の講義に採用されている教科書です。特徴は、商業用原子力施設の最先端のことが記されており(特に、浜岡原発の事例)、最新の情報を満載した生きた教科書です。各章末には、多くの文献が示されているため、根拠や詳細について、いくらでも、遡って考察することもできます。
目次
まえがき

第1章 原子力発電所の耐震設計の基本
 第2章 基準地震動の策定
 第3章 基礎地盤および周辺斜面の安全性評価
 第4章 建物・構築物の耐震設計
 第5章 機器・配管系の耐震設計
 第6章 屋外重要土木構造物の耐震設計
 第7章 津波に対する設計
 第8章 地震確率論的リスク評価
 第9章 地震安全評価評価の国際標準と国内規制
 第10章 原子力発電所の計画、建設、運転、廃止措置
 第11章 放射性廃棄物の処理・処分技術
 第12章 将来に向けた原子力耐震技術 
第Ⅱ編 地震工学の基礎
 第13章 地震・地震動と津波
 第14章 構造物と地盤の動的応答解析
 第15章 耐震設計法
英語版に追加された第8章と第9章を熟読しました。修士課程学生やエンジニアのために、基本的枠組みを体系化しており、的確な内容にまとめられていると思います。
第8章の「地震確率論的リスク評価」では、確率論的リスク評価の歴史的経緯と基礎工学理論を飛び越え、いきなり地震への適用に入っており、展開が速すぎるように感じました。確率論的リスク評価の原発への適用は、米原子力委員会(AEC)により、45年前に実施され、歴史的成果報告書であるAEC ; Reactor Safety Study, WASH-1400(1975)が刊行され、それに対し、米国では、世界から寄せられたコメントを基に、さらに研究を重ね(ヒューマンファクター、誤差評価、地震や津波などの外部事象の取り扱い)、米原子力規制委員会(NRC)は、米国の1980年代後半の技術を適用し、WASH-1400の改定版と位置づけられるNRC ; Severe Accident Risks, NUREG-1150(1990)を刊行しました。地震確率論的リスク評価が世界で初めて実用化されました。日本では、2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震を契機に、大飯原発1 & 2と浜岡3 & 4に対し、実用的試計算が実施されました。それ以降、確率論的リスク評価は、内部事象(原発内での事故・故障およびヒューマンファクター)と外部事象(地震、津波、火山、竜巻、航空機衝突テロなど)を含め、原発の総合的安全評価手法として、世界で、採用されており、日本のように地震国では、重要な評価法であり、本書には、最先端の評価法の具体例が、記載されています。できることならば、改定版において、確率論的リスク評価における誤差解析法と具体的な不確実性の大きさ(90%範囲で±約1桁)についても、言及していただけるとありがたい。
第9章の「地震安全評価の国際標準と国内規制」では、諸標準(文献含む)がピラミッド構造に示してあり、分かりやすい。できることならば、改定版にいて、国際標準値ないし将来的目標値に対し、浜岡の地震に起因する炉心損傷確率の具体的な数値、さらに、日本の新規制基準適用後の原発のそれらの値を表にまとめ、国際相互比較することにより、教科書として、具体的で、より分かりやすく表現できるのではないかと感じました。
ふたつの章を追加したことにより、原子力耐震工学の教科書として、完全性が、より増したように思えます。世界には、本書のような教科書がなく、地震国の日本で、このような地震評価法を体系化し、世界に示せたことは、歴史的出来事であり、世界への大きな貢献です。
評者は、現在、静岡県防災・原子力学術会議の原子力分科会委員(2015.4-)を務めており、浜岡3 & 4の新規制基準適合安全審査の内容、具体的には、地震、津波、火山、火災、電源多重化、冷却系多重化などの内容や技術的問題を確認中であるが、日本語版と英語版に記載されている構造設計や耐震設計(耐震補強含む)などの記載例を基に、目的とする計算を実施できるようになり、工学基礎論全般にわたり、計算ができるようになるため、本当に役立つ生きた教科書と感じています。

桜井によるamazonでの英文書評

This book is a textbook used for lectures at graduate schools related to nuclear power. The feature is a textbook full of the latest information, which describes the cutting edge of commercial nuclear facilities (especially the case of the Hamaoka nuclear power plant). At the end of each chapter, a lot of literature is presented, so you can go back and look at the rationale and details as much as you want.
table of contents
Preface
Part I: Earthquake- and Tsunami-Resistant Design of Nuclear power plants
Chapter 1 Introduction to Earthquake-Resistant Design of Nuclear Power Plants
Chapter 2 Assessment of Standard Seismic Motion
Chapter 3 Stability Assessment of of Foundation Ground and Surrounding Slopes
Chapter 4 Earthquake-Resistant Design of Building and Structure
Chapter 5 Earthquake-Resistant Design of Equipment and Piping
Chapter 6 Earthquake-Resistant Design of Important Engineering Structure
Chapter 7 Tsunami-Resistant Design
Chapter 8 Seismic Probabilistic Risk Assessment
Chapter 9 International Standards and National Regulation on Seismic Safety Assessment
Chapter 10 Planning, Construction, Operation, and Decommissioning of Nuclear Power Plants
Chapter 11 Radioactive Waste Treatment and Disposal technique
Chapter 12 Future Technology for the Seismic Safety of Nuclear Power Facilities
Part II: Foundation of Seismology and Earthquake Engineering
Chapter 13 Earthquake, Ground Motion, and Tsunami
Chapter 14 Dynamic Response Analysis
Chapter 15 Earthquake-Resistant Design
I have perused Chapters 8 and 9 added to the English version. For master's students and engineers, I think that the basic framework has been systematized and the contents are accurate.
In Chapter 8, "Seismic Probabilistic Risk Assessment," I jumped over the historical background and basic engineering theory of probabilistic risk assessment and suddenly started applying it to earthquakes, and I felt that the development was too fast. The application of probabilistic risk assessment to nuclear power plants was carried out 45 years ago by the US Atomic Energy Commission (AEC), and the historical results report AEC; Reactor Safety Study, WASH-1400 (1975) was published. On the other hand, in the United States, based on comments received from all over the world, further research was conducted (human factors, error assessment, handling of external events such as earthquakes and tsunamis), and the US Nuclear Regulatory Commission (NRC) ; Severe Accident Risks, NUREG-1150 (1990), which is regarded as a revised version of WASH-1400, was published by applying the technology of the latter half of the 1980s. Seismic probabilistic risk assessment has been put into practical use for the first time in the world. In Japan, the Niigata Chuetsu-oki Earthquake that occurred on July 16, 2007 triggered practical trial calculations for Ohi nuclear power plant 1 & 2 and Hamaoka 3 & 4. Since then, probabilistic risk assessment has been a comprehensive safety assessment of nuclear power plants, including internal events (accidents / failures and human factors within nuclear power plant) and external events (earthquakes, tsunamis, volcanoes, tornadoes, fire, aircraft collision terrorism, etc.). It has been adopted worldwide as a method and is an important evaluation method in earthquake-prone countries such as Japan, and this book contains specific examples of cutting-edge evaluation methods. If possible, I would appreciate it if you could mention the error analysis method in probabilistic risk assessment and the specific magnitude of uncertainty (± about 1 digit in the 90% range) in the revised version.
In Chapter 9, " International Standards and National Regulation on Seismic Safety Assessment," various standards (including literature) are shown in the pyramid structure for easy understanding. If possible, in the revised version, with respect to the international standard value or future target value, it is important the concrete numerical value of the core damage probability caused by the Hamaoka earthquake and those values of the nuclear power plant after the application of the new Japanese regulatory standards. I felt that it would be possible to express it in a concrete and easy-to-understand manner as a textbook by summarizing in a table and making an international mutual comparison.
The addition of two chapters seems to make the textbook of nuclear seismic engineering more complete. There is no textbook like this book in the world, and it is a historical event and a great contribution to the world that Japan, an earthquake-prone country, systematized such an earthquake evaluation method and showed it to the world.
The reviewer is currently a member of the Nuclear Subcommittee (2015.4-) of the Shizuoka Prefecture Disaster Prevention and Nuclear Science Council, and the contents of the safety examination for conformity with the new regulatory standards of Hamaoka 3 & 4, specifically, earthquakes, tsunamis, and volcanoes, fires, power supply multiplexing, cooling system multiplexing, etc. are being confirmed for examples of structural design and seismic design (including seismic reinforcement) described in the Japanese and English versions. Based on this, I feel that it is a really useful textbook because I will be able to carry out the desired calculations and will be able to perform calculations across the basic theory of engineering.

英語版書評補足

『原子力耐震工学』の英語版が出版されたため、まず、amazonで、英語版の特徴を日本語で書き、それに続き、その内容を英文にしたものです。昔、『原子力耐震工学』が出版された頃、日本語の詳細な長い書評をまとめましたので、英語版では、それと重複しないように、英語版で追加されたふたつの章の特徴について、まとめました。その日本語をそのまま英文にしましたが、まだ、枠組みを決めただけであり、スマートな英語らしい英語になっていないため、今後、時間をかけて、何度も、修正していかなければなりません。良い書評を書くためには、視点のオリジナリティや長さや正確さなど、ひとつの原著論文に匹敵するくらいに仕上げねばなりません。

桜井の原子力分科会活動を通しての主な研究成果

評論文(NIKKEI系電子版、「茨城新聞」の担当「社説」)

(01)「新基準対応進む浜岡原発 / 工事の進捗を現地で見る」、編集部により全文6p.を2p.に編集した概要版、「日経ものづくり」、2014年9月号、日経BP社。

(02)「新基準対応進む浜岡原発 / 工事の進捗を現地で見る」、全文6p.、日経テクノロジーオンライン「NIKKEI Tech-On !」、2014年12月7, 14, 21日連載、日経BP社。

(03)「時論 / 原子力防災訓練 / 広域住民参加が課題」、「茨城新聞」、2017年5月7日、茨城新聞社。

(04)「原発再稼働に欠落している苛酷事故対応能力」、日経テクノロジーオンライン「NIKKEI Tech-On !改題して、NIKKEI x-Tech(クロステック)」、2018年3月14日(前半), 28日(後半)、日経BP社。

(05)「時論 / 福島原発事故から7年 / 人材対策に目向けよ」、「茨城新聞」、2018年3月25日、茨城新聞社。

(06)「浜岡原発に見る日本の原子力防災の課題」、日経テクノロジーオンライン「NIKKEI  xTech」、2019年1月9日、日経BP社。

(07)「時論 / 原子力防災 / 広域避難の訓練せよ」、「茨城新聞」、2019年6月16日、茨城新聞社。

(08)「談話室 /原子力産業の欺瞞 情報操作のからくりを知ろう 」、「世界」、2019年8月号、岩波書店。

(09)「時論 / 原発事故避難/ 要配慮者への対策を」、「茨城新聞」、2020年3月22日、茨城新聞社。

(10)「高齢者などの一時避難に有効なエアシェルター」、日経テクノロジーオンライン「NIKKEI  x-Tech」、2020年5月29日、日経BP社。

(11)「時論 / 広域避難訓練/ 最後進県から脱却せよ」、「茨城新聞」、2020年3月2日、茨城新聞社。

(12)「浜岡原発における社会科学的考察における暫定的評価ノート」、日経テクノロジーオンライン「NIKKEI  x-Tech」、2020年?月?日、日経BP社。

(13)「時論 / 福島事故再考/ 社会的欠陥の克服必要」、「茨城新聞」、2020年11月13日、茨城新聞社。

(14)「時論 / 2050の社会/ スマート革命実現を」、「茨城新聞」、2021年9月19日、茨城新聞社。

学術書

(15) 『浜岡原発の技術論・社会論』(論文集、書下ろし論文含む、まとめ中)。