われわれ学生は厳しいドイツ語の教官が教室に来るのを静かに待っている。

昨夜はほとんど寝ないで予習したが、また今日も多くの学生たちが叱られるのだろうか。

 

講義の開始時間は既に何分か過ぎている。

 

一番前の席の学生の小さな机の上にはドイツ語の‘テクスト’とノートと辞書があり、一番端っこにショートホープの白い小さな箱があった。

 

少し遅れて東北帝大出身の教官が入室した。

 

フェル誰々、フロイライン誰々と出欠を取る前に、その一番前の学生に、

 

「君、スマンが煙草を1本くれないか」

 

ライターの火はその学生がつけた。

 

とても美味しそうに、まるで空気の澄んだ高原の朝に深呼吸をするかのように2,3度大きく吸い込み、天井に昇ってゆく紫煙を眺めていた。

 

この日は何人の学生が意味も無く発音が悪いからと言って叱られたのかは全く記憶が無い。

 

ただ小中高の教室と同じくらいか少し広い程度の語学の教室で、煙草を燻らす光景ははじめて見たしそれ以後見たことも無い。

 

 

学生時代の好きだった作家は、渡辺淳一、畑正憲、五木寛之、村上春樹。今は村上春樹以外はもう読んでいない。

 

みなさん、煙草がとてもよく似合う作家だった。村上春樹の私生活は全く謎だがおそらく煙草は止めて何十年にもなると予想している。

 

 

今日の散歩はいつもは行かない某公立中学の中を歩いた。

 

7時10分、真面目な教職員がすでに出勤している。クルマは7台あったので最低でも7人の教職員が校内にいたのだろう。

 

別府市内の公立の学校の校内は全て禁煙である。

 

スマホ片手に煙草を吸っている人を見かけた。

 

小学校区の以前の校長は敷地から出て立って煙草を吸っているのを何度も見かけた。何でも癌を患っていると聞いた。

 

あまりガラが良いとは思えない。

 

学校内に小さくてもいいので一部屋煙草を吸える場所を用意した方が良いのではないかと思う。昔の僕なら厳しく注意したが、今日は、見て見ぬ振りで足早に通り過ぎた。以前はこの中学の校長室で、あまりにもマナーが悪いし、生徒指導も出来ていないので、丁度、運動会の日に元校長と現校長を前に厳しく抗議した。

 

今はもう歳を取ったのか、そんなことをしても無駄だと悟ったのか、静観。

 

ただ僕も坂口安吾の作品はほとんど読まなかったが、あの安吾の部屋の写真が好きで、20歳から20年ほど煙草を吸った。

 

 

 

今はもう吸いたいとも思わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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