30分経ったのに、まだ迎えにくる気配が無い。
その間も、待合室の隅で、膝の上に笹木先生はノートパソコンを出し、念入りに打合せをする私達。
婚姻費用の審判の申立書案
こちらが求める婚姻費用金額の根拠となる計算式と裁判所が採用している現行の婚姻費用算定表の確認
離婚訴訟になったら…の流れの確認
不倫バカ女さんとの裁判次回期日に提出する書面案
時間を惜しむように、濃厚な打合せをしました。
ふと腕時計を見たら、1時間以上も経過していました。
私→遅くないですか?
笹木先生→本当ですね。もしかしたら裁判官も交えての評議に入ってて時間がかかってるのかもしれませんね。
そこからも、しばらく綿密な打合せを続けているとハイミスが迎えにきた。
ハイミス→お待たせしました。
中に裁判官もおりますので、まずはマナさんから話してください。
ハンドバッグを握る手に、じわっと汗が滲んだ。
初めまして。
裁判官。
私の思いが届く人でありますように…
ハイミスがノックをして、調停室のドアを開ける。
お連れしました、と促された。
顔を上げて、ビッと背筋を伸ばす。
「失礼します」と一礼して
笹木先生、私の順番で入室した。
柔和な笑顔を浮かべた眼鏡の裁判官が、調停委員に挟まれる形で座っていた。
裁判官→お辛かったですね
裁判官の開口一番がその一言だった
途端に、ぐるぐると今までの事が走馬灯のように駆け巡った。
私→…はい…
そう言った瞬間、涙が溢れた。
演技でも何でもない。
「お辛かったですね」
そう言われて、あぁ…辛かったんだ…そう痛感した。
突然ボロボロと泣き出す私を見て、裁判官がポケットティッシュを差し出してくれた。
すみません…と、それを受け取り、止まらない涙をハンカチとポケットティッシュで拭き続けた。
裁判官→いやいや、小さいお子さんが二人いて、お辛かったでしょう。
我慢せずに、お気持ちを正直に話してください。
私は涙ながらに口を開いた。
・子供達との生活の為に、まずは婚姻費用を払ってほしい
・私が求める婚姻費用の金額の根拠は、裁判所が採用している算定表と計算式通りの金額だ
・今後どうなるか分からない見なし年収での金額で計算された金額では到底納得できない
・婚姻費用の調停は、今日で決着がつかないのならば審判に委ね、一日も早く明確な金額を決定したい
・離婚については、こうなった以上やむを得ないと思っている
・しかし、離婚するのなら、トオルから事の真実を全て明らかにして、然るべき対応を求める
・子供達を愛しているのなら、トオルからの心からの謝罪と、不貞の離婚に見合う金額の慰謝料と養育費を求めるつもりだ
・もし離婚調停でトオルから真実を明らかにしないのなら、早々に離婚調停も不成立にし、離婚訴訟を起こしてもらって構わない
・不倫相手との裁判もしていて、相手とトオルの弁護士が同じなので、調停中のお互いの発言が裁判に支障が出るのであれば、もう私は何も喋りたくない
・面会については、今までの事が積もり積もっているし、私達の信頼関係がこじれまくっている以上、子供達がトオルに連れ去られる恐れがあるので、直接的な子供達との面会は怖い
・トオルに、子供達共々、経済的に絞め上げられてるので、トオルとの面会を通じて、子供達の福祉を鑑みて有効だとは思えない
こんなにボロボロ泣きながら言う私の言葉に込めた思いは、どこまで裁判官に届いただろうか…