マンションから、自転車で通い慣れた弁護士事務所への道。


今日は、高速道路からの道を運転しながら向かってる。



前までは、パートとして。

今日は、クライアントとして。




そう。

初めての
弁護士事務所で面談である。




私がここへ初めて来たのは、パートの面接だったけど。


今日からは、クライアントとして面談しに来るんだ。


ボスとも笹木先生とも、他の弁護士先生や弁護士の卵である司法修習生ともパートさん達とも、全員と顔見知りではあるけど…。





なんだかソワソワ緊張する





鼓動のスピードが早まってる

五感が研ぎ澄まされてる感じ





「インターホンが鳴らされて、面談の予約の人が来たら、できるだけ明るく優しい声で。リラックスできるように出迎えてください。弁護士事務所というものは、普通の人生では、そう足を踏み入れる事が無い場所です。皆さん緊張してるし、真剣な思いを持って、ここへいらっしゃいます。たかがお茶出し・電話番とは思わずに、相談に訪れた人の気持ちや思いに寄り添った接客対応…いや、接客対応なんて言うより、身内の人へ接するようにお願いします。」


パート採用された日に、とても優しい目をしてるボスに、そう言われた言葉を思い出す。





ガチガチに緊張してる声

切羽詰まった声

半分泣いてるような声




クライアントの皆さんは、初めてここへ相談電話をする時は、そういう声だった事を思い出す。


「今から行ってもいいですか?」

そう言われる事も多々あった。



面談予約や相談の電話もせずに、突然駆け込むようにインターホンを鳴らして来た人も多かった。




大変申し訳ございません。
弁護士のスケジュールを確認して、面談日やお時間について夕方までにお電話さしあげます。

そう言う私へ、あからさまに落胆する人や、急いでるんです!と泣き言を言われる事も多々あった。



皆、切羽詰まってるんだ…


今の私のように、緊張してたんだ。


新しいパートさんにも、しっかり挨拶しなくちゃ。
どんな人なんだろう?(笑)






あまりに緊張してたから…
あの自分の目で確かめに行った日に、タローくんのマルメンをもらった以来のタバコを、コンビニでドキドキしながら買ってみた。


学生時代に吸ってた銘柄でも、タローくんのマルメンでもなく。


ヴァージニアの1ミリ。
初めての銘柄で、ジャケ買い(笑)
ついでにライターも。










約束の時間まで、1時間近くある。


近くの灰皿がある場所まで向かう。


風上に背を向けて、両手で覆いながら口に咥えたタバコに火をつける。


大きく息を煙と一緒に吸う。


口の中に苦味とメンソールの刺激が広がる。


思ったよりタバコっぽくない。


軽〜い!


少なめの煙とタバコを持つ自分の指をまじまじと見つめた。


しばしタバコを味わう。


早まってる鼓動や血圧が下がり、指先が冷たくなるのを感じた。


ピカピカに磨かれてた黒塗りの車のボディーに、現実よりも短足デブに映る私の姿に一瞬笑える。


ブラックカーデに、白シャツ、ネイビーのタイトスカート。

ぱっと見なら、どこかの一服休憩しているOLに見えるかな?
いや、無理だな(笑)

一人でそう自分にツッコム。



風が冷たいので、タバコを吸い終わってから、私の車の中へ戻る。


さぁ、戦闘用メイクだ。