「ウィーナ様はいずれ、天界へと戻り、女神として返り咲くことになるのでしょうか?」

「……私は罰を受け、二度と天界に戻ることはできなくなった。もっとも、頼まれても天界には戻るつもりはない」

「では、ずっとこの冥界にいてくださるのですね」

「おそらくはな」

「ならばこのシュロン、身命を賭してウィーナ様にお仕えいたします」

「言葉は嘘になる。軽々にそのようなことは言わないことだ」

「申し訳ありません……(でも、わたくしはあなたの為なら、本当にどんなことでも……)」



「ウィーナ様が悪霊を浄化するようになられてから、この荒れた冥界に一条の光がさしたようですわ。冥界は少しずつ平和に向かって進んでいます」

「大したことではない。今の冥王の統治がまず過ぎただけだ」

「ウィーナ様なら、この暗く無骨な冥界を緑あふれた美しい世界に作り変えて下さる。それこそ天界のような」

「買いかぶるな。私はもう神ではない」

「まあ、ご謙遜を……(ウィーナ様は圧倒的な力を持っていながらそれを鼻にかけたりはしない。なんて素晴らしいお方なのかしら)」



「シュロン。ある筋から手に入れた魔術書だ」

「これは……」

「天界のものだ。もし興味があるなら読んでみないか?」

「お貸し頂けるのですか?」

「ああ」

「あ、ありがとうございます! 読まさせて頂きます!」

「部下の中で、私と対等に魔法を語れるのはお前だけだ。この本に書かれている術式がお前の呪術に応用できないか話せたら嬉しい」

「はい! 喜んで!」



「お前の彼氏を名乗る人物が、お前に呪われて頭からヒマワリが生えたと押しかけてきたぞ」

「彼氏ではありません。もう彼とは終わっています」

「あのヒマワリはお前がやったのか?」

「だって彼、ウィーナ様のことを胡散臭いって言うんですもの。わたくしがウィーナ様に洗脳されているって。当然の報復ですわ」

「更にだ、お前の彼氏を名乗る別の人物が、お前に呪われて頭がミステリーサークルのように禿げたと言って押しかけてきた」

「彼氏ではありません、もう終わっています。彼はわたくしの体目当てでよってきた忌むべき下劣な男ですの。当然の処置でございますわ」

「お前がプライベートでどのような恋愛をしようと自由だ。だが、色恋沙汰が職場に影響を及ぼすようなことは控えてほしい」

「申し訳ありません……」



「シュロン。今度冥民調で開かれるパーティーに、私と一緒に出席してもらいたい」

「かしこまりました」

「着ていくドレスは持っているのか?」

「はい」

「お前は化粧が上手だと聞いている。美容関係の魔法も」

「い、いえ、そんな……。未熟なものです」

「当日、私に化粧を施してくれないか? せっかくだから試してみたい」

「ああああ……(わたくしが、ウィーナ様のお化粧を!? ウィーナ様の髪をセットし、ウィーナ様のまつ毛を整え、ウィーナ様の唇にルージュを塗る! なんて恐れ多いことなの!)」

「おい、シュロンどうした? 顔が赤いぞ! 大丈夫か?」

「ああああっ!(バタッ」

「お、おい! しっかりしろ! 誰か! 誰かいないか! シュロンが!」