・File1 リザルト 登場話:2、42~45話


「はい。幹部は城下町の公営多目的会館で会議してます」
「幹部会議に顔を出すのですか?」
「そうですか。……あの、先週の戦闘会議の件で、ちょっとよろしいですか?」
「会議でサクスは解雇すべきだと決まりましたし、自分もそう提案しました」
「魔術師ギルドに頼んであの者の契約を解除してもらうなど。しかもその費用、こっちで負担するんでしょう? ウィーナ様が会議の後で決められたって聞きましたが」
「何だかおっしゃってることがよく分からないですね。自分の頭が悪いんでしょうか?」
「何で会議で決定したことを後になってわざわざ覆すんですか? それに普段の訓練や実戦での経験で腕を磨くことを奨励しているのはウィーナ様ではないですか?」
「はあ……、分かりました……。しかし、会議の事務局は自分なんですから、何か気に食わないことがあったら直接言ってもらえますか? こういうことがあると会議をしている意味がないので!」
「自分も給料をもらっている立場で、雇われの身の上。雇う側の問題はウィーナ様ご自身で解決していただかないと」
「しょうがないでしょう! 俺のレッドアローは本来一人乗りなんですよ」
「言うな、男3人鎧着て3ケツしてりゃ、スピードなんて出るわけねぇ。大体ファウファーレ殿も、あんな立派な翼を持ってるんだから、どっちか一人乗せてくれりゃあいいものを!」
「すいません」
「はあ?」
「いや、何と言うか、俺達が力不足っていうのがちょっとよく分からないんですけど」
「バングルゼ殿、それでいいんですか?」
「やっぱり俺達も」
「何で2人で行かせた?」
「バングルゼ殿もファウファーレ殿も、協調性がねえなあ……」
「ファウファーレ殿に仕切られてるからだろ。ファウファーレ殿がウィーナ様の意思を代弁して、俺達のまとめ役に収まってるもんだから」
「俺達を組織化して、ファウファーレ殿は一体何をするつもりだ?」
「それで委員会メンバーの肩書きをもらう必要あるか? 大体、あれウィーナ様の許しを得てないだろ」
「そもそも、ただの管轄従者ごときが何で委員会からメンバーの肩書きを受け取って、さもウィーナ様の意思を代弁しているかのように振舞ってるんだ。ウチから出ているメンバーはそもそもウィーナ様とヴィクト殿の2人だ」
「仮にそうするにしても、同じ管轄従者で、キャリアも年季も上のバングルゼ殿がその役に就くべきだろう。お前やカネスタが付いていながら何でそんなスタンドプレー許してんだ」
「ハイム殿はそれを黙って見ていたのか」
「それまずいだろ。そんな好き勝手やってても、委員会の意向で、ウィーナ様やヴィクト殿の意思を実現するためって大義名分がありゃ合法じゃねーか!」
「ハイム殿はもう戻ってこないんじゃ? ウィーナ様一人で戦場を歩いてくるのか」
「エイカンだ。平従者じゃ多分一番強い。フィーバより強い。でも戦闘馬鹿」
「俺もだよ。そもそも動ける奴全員動員するつもりだったのに、たった数名で時空の塔に突っ込むなんて。あのヴィクト殿が側についていながら、勝ち目も無しにそんな無謀なことするか? ほんと理解できねーよ」
「何だって!?」
「さっきの市街地での戦いの最中に聞いてきたのか」
「そもそも、俺が来る前に、ファウファーレ殿とバングルゼ殿とお前とカネスタとフィーバで何かこれからについて相談したのか?」
「そう、その書状は知ってる。俺はファウファーレ殿に連れられて本部のフンニュー副委員長に会ってきたんだ。それで洞窟にサリファ取りに行こうってことになって、その書状はファウファーレ殿が預かってんだ」
「ハイム殿が聖剣ジークを手に入れるのに何年もかかったんだ。ファウファーレ殿が委員会で現状の対応に当たっている片手間に、同格の神器であるサリファを手に入れてみせたら、もう委員会はハイム殿よりファウファーレ殿の方が優秀だと認識するだろうな。ファウファーレ殿はウィーナ様の代理って立場を利用して委員会で台頭しようとする気か? 何が目的なのか……」
「ウィーナ様はなぜ、一度は取りに行くことを禁じた洞窟に俺達を行かせるんだろう……」
「ところでトリオンフ、これは俺が冒険者ギルドにいたころの話なんだけど、仲が悪くて、お互いに嫌い合っていた2人がどういうわけか急にタッグを組んで、森の奥深くへと探索に出かけた。それで、戻ってきたのは一人だけだった」
「戻ってきた奴は、もう一人は魔物に襲われて死んだって言うんだけど、その話を聞いた誰もが思った。きっとあいつが殺して、森のどこかに埋めてきたんだと。でも、証拠なんてどこにもないから、そいつの言うことを信じるしかなくって、誰も咎めることはできなかった」
「もし、戻ってきたのがファウファーレ殿だけだったら」
「面倒くせー。斬った方が早い」
「テメービビッってんのか?」
「いや、俺の方こそすまん。先の見通しが立たないときで、お前の意見の方が正しかったもんだから、つい熱くなった……」
「穴の主は倒したんですか?」
「なんてこった……。まさかあのバングルゼ殿がやられるとは」
「ああ。入る前、確かファウファーレ殿仰ってましたよね? 戦闘では自分らよりファウファーレ殿の方が役に立つと。てっきりあなたも一緒に戦うのかと思ってました。見た感じ、傷一つついてませんが」
「レッドアロー!」
「ライト!」
「どうって、バングルゼ殿の骸を持ち帰るんですよ。敵の首取って相討ちになってから、ファウファーレ殿に鎧を持ち帰るように話したってことは、死体は残ってるんですよね?」
「ちゃんと骸を持ち帰って、然るべき場所で葬る。そんでもって角でも切ってバングルゼ殿の遺族に送って、戦士として立派な最期を遂げたって伝えにゃならんでしょうが。それが戦士の心意気ってもんだし、人一人死ぬってのはそういうことです」
「俺一人で行くんだから別にいいじゃねえか。お前はファウファーレ殿に乗せてもらえば飛んで帰れるだろ。鎧は任せたぜ」
「腐乱するでしょうが! ハエがたかって、ウジが沸き、魔物に骨肉を食われる。一度でも血みどろの地獄を経験している者ならそんな筋は出てきません」
「決まったな。トリオンフ」
「糞芝居もいい加減にしろ! さっき俺達を力不足と言っといて、『力を合わせて一丸となって』だなんてどの口が言いやがる、ファウファーレ! もう化けの皮ははがれてるんだよ!」
「き、貴様っ!」
「なるほどな……」
「トリオンフ!」
「駄目だ、レッドアローが寝ちまってる……」
「くっそー、やられた! もう最初っから全部読まれてたんだ……。完全にはめられた!」
「馬鹿言え、この距離を。間に合うわけねーだろ! それに眠ったレッドアローをここに捨ててはいけない」
「正気か!? あいつの蝶の魔法の効果はお前も見たろ。俺達が何やってるかは今も筒抜けになってると考えた方がいい! 今俺達がバラけたらファウファーレが戻ってきて一人ずつ潰されるぞ。悔しいが俺達単体ではあいつに勝てん!」
「なあ、トリオンフ。俺達ってなんか、全然駄目じゃねえ?」



・File2 トリオンフ 登場話:42~45話


「ファウファーレ殿待っているだろうな」
「そりゃまたどうして?」
「じゃあ何で呼んだんだよ」
「俺は『達』ですか……」
「行ってらっしゃい! 自分達は待機してますんで、どうか2人ともご無事で!」
「行ったな……。ダンジョンの内部を探索できるなんて、便利な魔法を使うもんだ」
「待ってろって言うんだから、言う通り待ってりゃいいじゃねーか」
「いや、バングルゼは普段協調性あるよ? いい人だもん。アレだ。なんかバングルゼの奴、怒ってねぇ?」
「そんなとこだろうな。あの女は人に協調ばっかさせて、自分は協調性ないから」
「さあ。ファウファーレはウィーナ様が存分に力を発揮できるように手助けがしたいだけだって言ってたけど」
「だろうな。今の状況を考えてもウィーナ様はとてもそんなこと把握していられる状況じゃない」
「ああ」
「知らねーよ! 大体、今自分で言ったろ、何でウチのいち戦闘員に過ぎないファウファーレが委員会の中枢に入り込んでるか。つまり、前々から独自に委員会の、それも中枢への後ろ盾を作ってたってことだろ。メンバーの身分を与えたのが委員会の意向だとしたら、そんな奴にケンカ売ったらまずいだろ。俺もカネスタも、バングルゼだって、委員会から見たらワルキュリアカンパニーの残党に過ぎねーんだよ!」
「そこだよ。あのケンタウロス女のうまいとこは。奴が表舞台に立ち始めたのは、ハイムが執政部の依頼を受けて早々に出て行った後だ。で、ハイムはもうこっちには戻ってこない」
「だからウィーナ様はハイムが呼び戻しに行ってる。聖剣ジークもそこで渡すらしい。とりあえずウィーナ様から指示もらわないと話になんねえ」
「フィーバと、あと名前分かんねーけど、ヒラが一人ついていってる。その2人でウィーナ様の護衛をする。ヒラは、あいつ。なんか小っちゃくて青い奴。頭に一本鋭い角がある」
「そうか……。それにしてもウィーナ様、あんなに部下が集団退職しても作戦を実行するとは思ってなかった。俺はてっきりすぐ委員会に身を寄せるとばかり思っていた」
「事実、最新の知らせだとシュロンもヴィクトもレンチョーもニチカゲも死んだっていうからな」
「城下町の正規軍陣所で、バリアナっていう執政官から俺が自分で聞いてきた。今はそいつがウィーナ様の依頼主ってことになってる」
「そうだ。だって幹部従者が誰もいねーこの状況で、頼みの綱のバングルゼはファウファーレの言葉を鵜呑みにしてウィーナ様の為、ウィーナ様の為ときてる。自分で情報を収集しようって気が、全っ然ねーんだもん。カネスタの野郎もその辺の補佐ができてない。戦うことがウィーナ様のためだと思って、働いてる気になってやがる」
「そんな暇あるわけねーだろ! 市街地があんな状況になってから、その対応で俺もお前も出ずっぱりだったしな。ただ、ファウファーレはヴィクトが委員会に送った書状を預かってて、ウィーナ様は霊鎧サリファを取り戻すことを望んでいるからすぐ確保しなければならないだの、当面の方針についてはあいつの口から出てきた」
「だからわざわざ手伝うこともねーだろって話だ。あの脳筋はそこんとこを分かってない」
「こんな状況だ。ウィーナ様はもう女神じゃない。なんかデカイ事をするには、神器は必要になってくるだろう。自分の身を守る鎧なんて特にだ」
「遅っせえな……。一体何やってやがんだ。まさか本当に月が沈むまで帰ってこねえつもりかよ」
「へえ」
「何が言いたい?」
待てって、俺達が身の振り方を決めるのは、ウィーナ様のご尊顔を拝してからでも遅くねーだろ。それに、今の段階でファウファーレが何か企んでいるっていう証拠なんて何もないだろ」
「だからファウファーレが何をしたがってるのかも分かんねえし、それがウィーナ様に、俺達に害をなすものなのかも分からん! 動きようがねえだろ。今奴を殺ったら俺達が委員会に、ウィーナ様に反逆したことになっちまうじゃねーか!」
「だとゴルァ!」
「……わりぃ、今は俺達で揉めてる場合じゃなかった」
「ファウファーレ殿、ご無事で?」
「まさかバングルゼ殿が」
「ああ、殺しても死なねえような人だったのに」
「まあ、そうでしょうね、あんたのせいですねそりゃ」
「だって、なあ……。リザルト」
「俺の見立てでは、ファウファーレ殿とバングルゼ殿の戦闘能力はほぼ互角。しかし、パワー一辺倒のバングルゼ殿よりもあなたの方が魔法だっていけるし、いろいろ応用が利く分強いと思うんですけど。状況見てやばかったら加勢するとかできなかったんですか?」
「まあ……。別に俺に謝らなくてもいいですけど」
「おいおい、今はそんなこと言ってる状況じゃねえだろうよ。ファウファーレ殿も仰ったろ。せっかく取ってきた鎧なんだから早く戻ってウィーナ様に届けないと」
「何だよ、しょうがねえなあ……。じゃあ、ファウファーレ殿、こんな奴ほっといてさっさと行きましょうや。すいません、後ろ乗せてもらえます?」
「ああ。ファウファーレ殿、この場合は、もう欲をかかずに、一旦この場での計画は断念して、素直に俺一人を乗せて戻らなきゃいけなかったんですよ」
「なんなら、今から全員でバングルゼ殿の死体を確認しに行くか? もし死体に不審な点が何もなかったら剣を抜いたことは謝ろう。どうせ一度突破した洞窟だ。走って確認しに行くだけならそんな時間はかかりゃしねえ。どうだ! 今のあんたにそれができんのかよ。ええ?」
「何だと?」
「ふ、ふざけんな! そんなのハッタリだ!」
「それこそハッタリだろうが。俺だって魔法ぐらい使えるから、魔力をある程度は肌身で感じることはできる。でも腹ん中にそんな蝶がいることなんて気付かなかった。つまり、蝶自体は微力な魔力で具現化させたもの。あくまで情報収集に特化したもので、爆発させることなんてできやしない。それにそんなことができるんなら、最初っからそれで俺達の腹をふっ飛ばせばいいじゃねーか! 今俺の口から出した蝶、試しに爆発させてみな!」
「こんなブラフ、まともに受けてんじゃねーよ、リザルト」
「くっそおおっ!」
「なめやがってええええ! 死ねえええっ!」
「あの女、ふざけやがって! リザルト、レッドアローに乗って空であいつを足止めしろ、俺は下から援護する!」
「何だって!?」
「おいリザルト、バングルゼは奴に殺されたんだ。それで俺達を委員会から遠ざけるってことは間違いなくウィーナ様の孤立を狙ってる。最悪、ウィーナ様を亡き者にするってこともあり得るぜ」
「ファウファーレの野郎絶対ぶっ殺してやる! リザルト、城下町まで走るぞ! ウィーナ様にもしものことがあったら俺たちゃ就職活動する羽目になっちまう! 給金が出ねーと来月の宿賃も払えん!
「だったらお前は竜の面倒一人でみてろ。こうなりゃ俺は一人で城下町まで走って、この件をウィーナ様に全部告発してやるぜ!」
「……言うな。ウィーナ様、生きてんのかな……」



・File3 フィーバ 登場話:38、46、49、51話


「あ、はい、分かりました」
「あの、ハイム殿、どこ行くんですか?」

「あっ、そうですか、すいません」
「はい! はい!」

「分かりましたすいません!」

「それではウィーナ様、私の側を片時も離れぬようお願い致します。エイカン! お前はウィーナ様の後ろを守れ!」
えっ!? そ、そりゃあそうか!? ごめんエイカン、お前先頭」
「いつまでもこんな場所にいては危険です。一刻も早くここを離れましょう。ほらエイカン。さっさと行こう」
「そういやずっとハイム殿の影に潜んでたからな。どうしよう?」
「はっ! そうだった。俺はこのときのためにさっき道具屋でダンジョン脱出アイテムのエスケープクリスタルを買ってたんだった……」
「くっそーっ! クリスタルでワープしたらハイム殿だけに戦わせることになる。でもこのまま戦ったらウィーナ様を危険にさらすことに……。わあーっ! ハイム殿、ウィーナ様! 一体こんなときどうすればいいんですかーっ! 何か適切な対処法を言って下さいーっ!
「分かりました!」
「うおおおっ!? 光がっ!? この光は!?」

「申し訳ありません。私も探していたのですが、見つからなくて、もどかしくなり、少しでも友軍の手伝いをしようと」
「すいません」
「ウィーナ様、ここは私とエイカンで!」
「おお、2人同時!」
「ウィーナ様、こ奴らの生前の記憶が見えたのですか?」
「いや、興味ないんで。所詮悪霊は悪霊
「了解しました。屋敷へ戻りましょう」
「委員会のことやリレー作戦のこと、いろいろありますけど、とりあえず何も考えず、食事を取って、入浴して、きっちり睡眠をとって、身支度するところまでやって下さい。俺とエイカンで準備しますから」
「まあ、壊れていたら壊れていたで仕方ないですね。食事は私が作りますし、屋敷に悪霊が入り込んでたら始末します。瓦礫にでもなっていない限りは休んじゃいましょう」
「お疲れ」

「あっ。俺もエスケープクリスタルの領収書もらうの忘れてた。請求できない……」
「ケニー殿、メクチェートはどこにいるんでしょう」
「ええっ!?」



・File4 チューリー 登場話:42、48~49、51話


「お疲れ様です。確かに頂きました。これはピエールさんにお渡ししておきます」
「どうしてバングルゼ殿はウィーナ様に加勢しないのですか?」
「その忠誠心、頭が下がります。……それで、これからどうするつもりですか?」
「ファウファーレ殿が……」
「バングルゼ殿、あなたは純粋な方ですね。本当にうらやましい。私にないものを持っていて」
「ウィーナ様のため、組織の為、冥界の為。ご自身のその逞しい腕力を拠り所に、力を振るうことに一点の曇りもない。私は、恥ずかしながら、ときどき自分が何をやっているのか分からなくなることがあります
「ただ、僭越ながら忠告させて頂きます。そのひた向きさ、純粋さは時に敵を作ります」
「いいえ。逆です。自分の利益のために、あなたの真っ直ぐな心を利用しようとする人達が友達の顔をして寄ってきて、あなたの耳に奇麗事を囁くのです」
「バングルゼ殿はシュロン殿の一件を聞いていませんか?」
「いえ……。バングルゼ殿。あなた達の仕事は戦闘行為という命のやりとりです。そういう世界で生きる者達の心は一筋縄ではいきません。具体的に誰とは、私の立場からは申し上げることはできませんが、います。あなたのすぐ側に。狡猾な獅子身中の虫が」
「必ず帰ってきて下さいね。この前の爆笑できるって話、まだオチを聞いてませんから」

「なぜ、あなたが……」
「ファウファーレ殿から?」

「あなたは? なぜ?」
「どうしてここが?」
「えっ?」
「臭い……、ですか?」
「しかし」
「あ、ありがとうございます!」
「……ウィーナ様?」
「ウィーナ様、なぜこのような所に? 屋敷におられるのではなかったのですか?」
「……その前にウィーナ様にお見せしたい物が」
「これを」
「これは本当にウィーナ様が書かれたものでしょうか?」
「先程深夜、サリファの洞窟に、ファウファーレ殿とバングルゼ殿とリザルトとトリオンフの4人が向かいました」
「そして、鎧を持って戻ってきたのはファウファーレ一人でした。他の3人はファウファーレ殿によって殺されたのです」
「実はバングルゼ殿はその場では死なず、カネスタとゴーカクに助け出されていたのです。私は物陰から、彼らがファウファーレ殿に逆襲する様子を一部始終見ていました」
「カネスタが言ったのです。ファウファーレ殿が『我ら仲間を奸計に陥れウィーナ様に謀反を起こした』と。私は以前からウィーナ様にファウファーレ殿が委員会と裏で接触していることは、逐一お伝えしていました。なのにどうしてウィーナ様はファウファーレ殿に自らの代理をお命じになり、鎧の回収をさせたのでしょうか? ファウファーレ殿に怪しげな様子ありと理解した上でこの書状を書いた意図をお伺いしたいのです」
「何故です?」
「でもファウファーレ殿は謀反を起こしました。バングルゼ殿、リザルト、トリオンフ、カネスタ、ゴーカク。管轄従者1人、中核従者3人、平従者1人を殺しているのです!」
「……えっ? 今、何て……」
「何をおっしゃるのですかウィーナ様! それではファウファーレ殿……ファウファーレはどうなんですか? アイツもウィーナ様に合流せず委員会に身を寄せていたではないですか! バングルゼ殿達と何が違うと言うんです?」
「彼らはレンチョー殿の命令に従って通常の任務をこなしていたのです。そして、冥界全体がこんな状況になってしまい、ウィーナ様の指示も仰げず、やむを得ない事情で委員会に合流したのです。そして、彼らは冥界の民を守るべく悪霊相手に戦っていました」
「吹き込まれたなど、それは誤解です! 私は私の役割を忘れてなどいません。仲間に仲間として接したことなど委員会の中でも、マネジメントライデンの中でも一度だってありません
「もちろん、それは私も分かっていました。でもそれは、あくまでより価値のある情報を引き出すための撒き餌であることはウィーナ様もご存じのはず」
「役に……立つ……?」
「え……?」
「あああああ……。私、私の。そんな、嘘、嘘……。ああっ、私のせい。私が殺した。あああっ……」
「うう。寒い……。血が、血が冷たいよお……」



・File5 カネスタ 登場話:46~48話


「もうすぐですよ、バングルゼ殿。もうすぐ委員会です」
「そうだ! 許すまじきはファウファーレ! 我ら仲間を姦計に陥れ、バングルゼ殿をこのような変わり果てた姿にし、ウィーナ様に謀反を起こした悪い奴!」
「絶対にこのままではすまさん。我らの受けたこの仕打ち、悪意ある作為者の流血をもって清算する! 見ていろゴーカク、委員会の奴ら一匹残らずこのカネスタが血祭りに上げてくれるわ!

「委員会所属組織ワリキュリアカンパニー所属、カネスタと申します。故あってファウファーレ殿に目通り願いたい」
「ちょっと話したいことがありまして」
「知らないよ」
「通るっつってんだよ!」
「よし、行くぞゴーカク! バングルゼ殿の弔い合戦だ」
「バングルゼ殿、あまりしゃべってはお体に障りますよ」
「当たり前だ。まだバングルゼ殿は生きている。バングルゼ殿は勝利の女神に誓って俺が死なせん」
「た、確かに……。生きてるのに弔っちゃ仕方ない
「す、すみませんでした」
「ファウファーレ! 話は全てバングルゼ殿から聞いたぞ。貴様にこのカネスタのスタイリッシュトリックアクションバトル(STAB)の真髄を見せてやろう!」
「ふざけるな。貴様に何の決定権があってそんなことほざく。ここで十分だ。ここがお前の見る最後の風景になる。お前はもうここで死ぬのだ」
「ふん。移動魔法など使えなくてもこの俺の奇術と、ゴーカクの頭脳。この2つが合わされば、あの洞窟と城下町、遠く離れた2つの地点を一瞬にして行き来することなど訳ない」
「笑わせる! この場で即刻死ぬ奴に、わざわざタネを教えても、全くもって意味がない!」
「フフフ、どうやら俺の奇術を目の当たりにして、眼前の光景が信じられず、気が動転しているようだな。無理もない……」
「お前がバングルゼ殿達と共にあの洞窟に向かった後、俺は仲間の無事な任務遂行を祈願してタロット占いをした。すると、今日はバングルゼ殿の運勢が最高だということが分かったのだ。特に女運は史上最高だった。俺達はバングルゼ殿の女運にあやかろうと思い、任務を中断して後を追ったと言うわけだ」
「ゴーカク、続きを頼む」
「分かっております。バングルゼ殿。ファウファーレ、お前はこれからここで起こる奇跡を目の当たりにし、更に驚愕することになる」
「魔法もアイテムも使わずに、バングルゼ殿を治す」
「俺の手には何もない。魔力も出さない」
俺が手を叩いたら、バングルゼ殿の傷は一瞬にして治る。……ワン、ツー、スリー!」
「本来ならすぐに治したかったのですが、今このタイミング、この場所でしかできない奇術なので、申し訳ありません」
「何ぃ!?」
「き、貴様ああああっ!」
「うるさーい! こんな状況で落ち着いてられるか! 今落ち着いていつ落ち着かないと言うんだ!
「なんだと!?」
「ゴーカク、お前どうするつもりだ?」
「おおっ! さすがは戦闘員一の頭脳派! 行ける、行けるぞ!」
「いいだろう。今度は俺が相手だ」
「俺にとって戦闘能力の上下など関係ない。俺と相対した相手は例外なく全て死ぬ。俺の奇術に殺されるのだ」
「カネスタトランプ・スペードの3!」
「し、しまった。スペードの3は効果対象の攻撃力を3倍にするんだった!」
「ならばこれはどうだ。ダイヤの7!」
「うっ……。ダイヤの7は効果対象の防御力を7倍にアップさせるのだ……」
「……って、全部駄目じゃねーか! 何の為に一枚一枚法呪錬成したと思ってんだ!」
「あ、そうか……。早く言ええええっ!」
「ならば! 貴様の槍術と、俺の冥界流正統剣術の冴え、どちらが上回っているか!」
「あ、しまった! いつもの癖で思わず奇術を披露して、剣の刀身を鉄から、子供が大好き千歳飴にしてしまったああああ!」
「うん、甘い……ってやってる場合か! 飴で人が斬れるかこの横着者があああっ!」
「遊びは終わりだ。バングルゼ殿もゴーカクも死んだ今、俺は一人でウィーナ様が到着する前にお前を含めた委員会主要メンバーを一人余さず八つ裂きにしなければならない。貴様ごとき三下にこれ以上時間を割いてはいられん!」
「ジャスティス!」

「させるか!」
「仕方ない。S.T.A.B(スタイリッシュトリックアクションバトル)を志向する俺としてはなるべく下ネタなんてものに頼りたくはなかったんだが……。でも俺は奇術師である前にウィーナ様の従者。己の主義には反するが、勝利の女神に勝利あらんが為、どんな卑劣な手段でも使わせてもらおう」
刮目せよ! 最終兵器だ!」

「ただのウンコだと思わぬことだ。これは冥界で最も臭いと言われる、第2区画の防具屋トムさんのウンコだ。どーだ、いい臭いだろう。トムさんのウンコはその筋の者なら聞いただけで震え上がる。トムさんのウンコの詳細に関しては俺が執筆を手掛けた『週刊ギルド情報Vol.18』51ページ、『街角オススメ武器屋☆防具屋』の記事参照だ」
「見くびるな。俺がそんな泥棒みたいな真似をするわけないだろう。しっかりまともなやり方で手に入れている。事前にトムさんに事情を話した上でウンコの提供を依頼したのだ。トムさんは快く承諾してくれた」
「失礼なことを言うな! 俺は正気だ! 表ではウィーナ様の意見を尊重しているようなそぶりを見せ、裏で意に沿わぬ仲間の排除を涼しい顔して行う、狂ってるのは貴様だ、ファウファーレ!」
「ウンコの織り成すイリュージョン、良く見ておけ!」
「ナインボール、ウンコミラージュ!」
「目に見えぬ恐怖に怯え、己が罪をあがなうがいい」
「取りたければ自分で取ればいい。どうぞご自由に」
「素手で触るのが嫌なのか? 俺が捨てた手袋があるからそれで尻を拭けばいい」
「だからそんなの自分で拭けばいいんだ。それとも、自分でできない理由でもあるのか?」
「……だとすると、貴様は普段」
「貴様、さきほどこのトランプを自分に使えばいいと言ったな。馬鹿め! 敵にむざむざ塩を送るような発言をするとはな。俺もこのトランプでパワーアップさせてもらう!」
「な、何いいいっ!」
「ぎゃあああああっ!」
「ううう……。ま、待て、待って下さい。すいませんでした。お願いです、どうか、どうか命だけは……」
「そ、そうだ。手を組もう! 俺を助けてくれれば、ウィーナ様、あ、いや、ウィーナの弱点を教えてやる。助けてくれ……」
「はあああぁ!? のぼせんな馬鹿が! 誰が貴様のケツなど拭くか! バーカ!」
「ぐっ……」



・File6 メクチェート 登場話:50話


「申し訳ありません」
「ただ、あそこで助けなければ、本当に悪霊に殺されてたと思うんです、あの人達。見殺しにするわけにもいかないでしょう」
「だから、何度も申し上げた通りそのとき私以外は全員ヒラだったので、私の一存で判断しました」
「合計32人です」
「申し訳ありません」
「いえ、別にそういう」
「と、とりあえずは屋敷に待機させてウィーナ様の指示を……」
「チクる? 私が誰に、何をチクるっていうんですか?」
「いや、そんなことは全然思っていません。私はそんな話ではなく、民間人の」
「なぜウィーナ様に知られると駄目なんですか」
「待って下さい! それは既にクリアした話でしょ? さっき民間人から護衛料金を回収してきたじゃないですか、一人頭1万G! ちゃんとさっき渡しましたよね、全員分合計32万G」
「だから今は護衛料の話を」
「スイマセン、でも一つ質問させて下さい。私や他の者達が対応しているとき、ケニー殿はどこに行ってたんですか? 現状で最高階級者が私だったので、やむを得ず」
「だから、私が責任取って民間人は何とかします。ケニー殿ほどのお方にわざわざお伺いを立てるほどのことではないと思ってまして」
「じゃあどうしましょう? ケニー殿の指揮で民間人をどうするか」
「……分かりました。民間人を屋敷から出して、他の場所に移します」
「それで結構です」
「別に、不満など何もありません」
「その前にさっき預けた保護代金を返してほしいのですが。民間人を他へ預けるんだったら話が変わってくる場合もあるんで」
「元々当面の安全を保証する上での金なんです。民間人が文句を言う可能性もあるでしょう。だったら返さないとまずいです」
「いや! それはさっきの話と明らかに」
「いえ、神に誓ってそんなことは1ミリたりとも! 私はただ民間人の安全を」
「え、その、ケニー殿?」
「私はメクチェートです! それじゃあ何か私が詰んでるみたいじゃないですか!」
「な、何ですって?」
「目の前で襲われていたから助けた。それだけです」
「すいません、助ける者を取捨選択とか、そういう意識すらありませんでした」
「この水晶玉で魔力アップの効果があるんです!」
もちろん凝ります。でも我慢してるんです! あの、そんなことより、さっき預けた保護料金ってどこにあるんですか? 今持っているんですか?」
「ケニー殿に少しでも期待を寄せた私が馬鹿だった。あの人達は他へ移す」
「ケニー殿はそれがお望みだ……」
「私がとりあえず払う。収まりつかんだろうから」
「私は家が近いから、すぐ走って金持ってくる」
「いい、いい。私の方から話す。厨房にユーイがいるから、もう民間人は頭数に入れないでいいって伝えといて」
「ああ、全くだ……」


なんとなく全台詞を特集してみました。

フィーバやメクチェートはまだ出番あります。

メクチェートは魔術師。パーティー全員一度に回復できる魔法とかが使える、マジでパーティーに必要とされる人材なのです。

てか、フィーバとカネスタひでえ。