FIGHT FOR JAPAN DREAM JAPAN GP 201バンタム級日本トーナメント
2011/5/29@さいたまスーパーアリーナ


半年ぶりにさいたまスーパーアリーナの地に“巡礼”してきた。こんなにもここに来る期間が空いてしまったのは初めてだ。憂鬱な梅雨空の下、さいたま新都心駅から会場までの通い慣れた道を進んでいくと、まず初めの“異変”に気付いた。いつもなら人だかりができている場外グッズ売場のテントが、ない。これは経費節減策なのだろうと思いつつゲートに入り、一番近い207番の入口を開けようとするも、開かない。いつもより小さいサイズの客席レイアウトなのかと納得しながら奥のコンコース入口から場内に進むと・・・一瞬言葉を失う。次の“異変”がそこにあった。な、なんだこれは・・・本来ならリングを四方から客席が囲むはずが、三方向に大きな黒幕が張り巡らされ、まるでシアター状態。北側のみ200レベルと400レベルの客席スタンドが設けられ、東西にはアリーナ席が12列のみ、向正面の南側には客席は一切なく、選手・関係者席が一列のみ。いつものド派手な入場ランプもなく、スクリーンが二面のみ、シンプル極まりないセッティングは節電や
経費削減の趣旨よりもチケットの売れ行きによるものだと考えるのが妥当だ。


しかし、今日ここから新生DREAMが再出発するのだ。これまでの大会より明らかに来場者の数は少ないが、ここに集まった人たちはファンの中のファンたち。コアな思いが凝縮された場所からまた一歩一歩実直に階段を登っていくことで、新たなファンを生み、離れたファンを呼び戻していけばよい。
いまや日本で唯一のMMAメジャーな舞台となったDREAMは、実に濃密な格闘技空間となった。日本人を絶対的主役に仕切り直されたDREAMは、かつて同様に日本人のためのイベントとして立ち上げられたPRIDE武士道が甦ったかのような内容になった。


16時過ぎにイベントがスタートし、終了したのが22時過ぎ。実に6時間もの間、全11試合の大ボリュームが目の前のリング上で提供された。お腹いっぱいの満足度120パーセント。
しかし、この疲労感は我々コアな格闘技ファンが待ち望んでいたものではないか。日本人の武士道精神を闘う者と観る者で分かち合う、あまりにも特別で贅沢なひととき。
惜し気もなくそのときの日本人絡みの最高カードを実現していくことがPRIDE武士道の姿勢だった。新生DREAMがその魂を受け継いでいくのなら、これからの未来は限りなく明るいものになる。


実力拮抗マッチメイクゆえ規定ラウンド内で決着が付かない判定試合が続出する。これもPRIDE武士道の常だった。そしてこの日のDREAMもそうだった。しかし冗漫な試合内容はひとつもなく、リング上の2人は互いに激しく攻め合い、観る者に卓越した格闘技スキルだけでなく、闘う者の精神を届けてくれた。
しかしあえて言えば、軽量級の攻防戦をより堪能するには、さいたまスーパーアリーナという会場は大きすぎる。今後適正な会場選びも一考に加えてほしい。
その意味で次回大会の会場となる有明コロシアムはナイスな選択だ。かつてPRIDE武士道もこの会場で伝説的内容を生み出し、ブレークのきっかけとなった。新生DREAMも同じ道を辿れば・・・ますます今後に期待するしかない。


再出発にかける気合いは主役たる日本人ファイターがそれぞれのスタイルで表現してみせた。
連敗中で後がない宇野薫は“世代交代”と挑発したウィッキー相手に終始先手を取り攻め続け、完封の判定勝利。珍しく涙を見て、必死な思いを純情なまでに露にした。
同じく後がない所英男は前田吉朗との初戦に臆することなく挑み、相手のアクシデント棄権ではあったものの何より欲しかった勝ち星を手に入れた。
続く準決勝は山本篤とのリベンジマッチ。前田にもらったパンチで痛々しく腫れ上がった顔であっても所は堂々とリングに向かい、立った。今回独立して心機一転、責任と自信を背に、山本にペースを握らせず、要所で見せたクイックムーブで会場を沸かせ、見事に仮を返し、念願のベルトに大手をかけた。
メインを任される形になった今成は、ここぞというときの瞬発的強さを発揮し、大沢をヒール葬。今成が思わずガッツポーズで雄叫びをあげるなんてそう滅多にないこと。この空白の半年間で日本人ファイターたちが誰よりも格闘技界を引っ張る自覚を増大させていた。


また嬉しい“異変”もあった。
大会開催二ヶ月前の時点で主要カードが発表された。しかもどれもメイン級。ムサシvs泉のライトヘビー級タイトル戦、高谷vs宮田のフェザー級タイトル戦、川尻vs元修斗世界王者・シケリム、そして所vs今成のバンタム級ジャパングランプリ決勝戦、大沢vs山本のグランプリ三位決定戦。もうこのラインナップだけで十分満腹、贅沢の極みだ。
新生DREAMの本気度が存分に伝わってくるではないか。


早くあの頃の熱を取り戻せるように、再びさいたまスーパーアリーナの四方が超満員の観衆で埋め尽くされるように、再出発したDREAMを我々ファンも応援し、格闘技にしか生み出せない特別な“夢”を分かち合おうではないか。