PANCRASE PASSION TOUR 2010
2010/12/5@ディファ有明
本来主役であるべきism勢が理想の結果を出せなかったことに対する悲しさよりも、この男が遂に、遂に、リング上で期待通りの結果を残したことへの嬉しさがこの大会を表現する感情の全てである。
梁正基(りょう せいき)
現在パンクラスウェルター級6位にランクされているが、実は2001年のパンクラスデビュー戦以来勝ち星から見放されている状態だった。
随所にブランクもあり、もっとコンスタントに試合していたら結果も出るのになーとは思えど、決して格闘技が本業とは言わない梁が気が向いたときがリングに上がるときなのだから仕方ない。
それでも昨年から本格・・・ではなく“半”格復帰と言えるペースで、階級を落として参戦し直して今回が三戦目。
特に減量もせずに服を着たままで計量パスというこれまたマイペースなところが梁の魅力でもある。
しかし、本当の魅力はリング上で披露しなければ意味がない。その魅力こそ、打撃。ドスンと響くパウンド一撃で後楽園ホールをどよめかせたこともあった。腹部に突き刺さった蹴りが金的と判断されてしまった不運もあったが相手は完全にのびていた。
過去のエピソードを知ってか知らぬか、梁正基のプロフィールには“喧嘩ファイト”の文字が踊るが、それが完全なる形で披露されたことはなかった。
何をもっての喧嘩ファイトなのか、明確な解説に困るが、喧嘩云々とは関係なく梁のベストファイトは2001年ネオブラッドトーナメントでの三崎和雄戦。両者ドロドロに揉み合った気の勝負を紙一重上回った三崎は今や日本を代表するトップ選手のひとりに。
梁も早く追い付かないと・・・そう願い続けて幾年の月日が流れてきたことか。
長年待ち続けてきたからこそ、ひとつの勝利という結果がこんなにも歓喜させてもらえるものかと思えるほど嬉しい瞬間がやって来た。いや、梁正基自らが生み出したものだ。
いつも梁の相手は真っ向打撃勝負には来ず組み付き系が多かったが、この日の相手は違った。パンクラスismの渡辺の積極姿勢が梁の潜在能力を開花させてくれたとも言える。
パンチの交錯で幕を開けた一戦は、僅か23秒、しかし濃密な23秒でフィニッシュした。
さんざん練習してきたという前蹴りからジャブのコンビネーションが見事にグサリ。さらに間髪入れずに追い討ちのパウンドを突き刺し、レフェリーストップ。
遂に、遂に、遂に!梁正基が勝利を納めた瞬間だった。
昔からの仲間もリングサイドに陣取っていた。所英男、野沢洋之、山澤勇紀、そしてセコンドを務めた大城トレーナー。客席にはヤンチャ時代からの友たち。
みんな、みんな、満面の笑顔だった。
「35歳でチャンピオンになって同世代の人たちに夢を与えましょうよ!」と所英男は興奮気味に珍しく(?)饒舌に語るほど。
久々の勝利に、勝ち名乗り姿もリング上でのファイティングポーズ撮影もどことなくおぼつかなかった様子の梁だったが、試合後は他の試合を見ずに速攻で会場を後に祝勝会へ。
ノーダメージの梁は勝利の美酒をあおり、宴は店を変えて夜な夜な続いていた・・・。
こんな男、梁正基は現在パンクラスウェルター級5位にランクイン。
2011年はタイトル戦線に絡んでいることを期待しながら、梁正基というマイペースファイターを気にしてみてほしい。

