(※2023 Apr初出、2025 Mar.最新update。グラベルハンドル新情報随時更新)
ロードバイクに乗り出し、結構な数のライダーが直面する「サドル問題」。
個人的には余程相性の悪いサドルで無い限り、「大抵のサドルは乗ってりゃ慣れるゼ」の「ズボラ」イダー。
で、このサドルと同じくらい一度気になり出すとキリが無いのがグラベルライダーにおける、「グラベルハンドル問題」である(※個人の感想ヨ?)。
そこへ意識(or興味)が向かないライダーであれば、買ったまま生涯乗り続ければ済む話なのだが、グラベルロード界には一風変わった形状のハンドルも多く、物好きな質の人間としては、「こんな奇妙なカタチでキミは一体どんな乗り味なんだい?」と、どうしても試したい衝動に駆られてしまうから困ってSHIMANO(質の低い自転車ギャグ)。
例えば業界大手、アメリカのRITCHEY(リッチー)。
グラベルハンドルだけでも性質の違うものを多数揃えているのはさすがの大手。そのラインナップに、「BeaconとVentureMax」がある。まずはそれぞれの形&スペックをご覧いただきたい。
WCS Beacon
材質:トリプルバテッド 7050 アロイ
クランプ径:31.8mm サイズ:400、420、440、460mm(芯-芯)
カラー:Blatte
ドロップ:80mm
ドロップフレア:36°
バックスウィープ:4.5°
重量:270g(420mm)
リーチ:65mm
フレアアウト:6°
COMP Becon
材質:ダブルバテッド 6061 アロイ
クランプ径:31.8mm
サイズ:400、420、440、460mm(芯-芯)
カラー:Blatte
ドロップ:80mm
ドロップフレア:36°
バックスウィープ:4.5°
重量:300g(420mm)
リーチ:65mm
フレアアウト:6°
WCS VentureMax
材質:トリプルバテッド 7050 アロイ
クランプ径:31.8mm
サイズ:400、420、440、460mm(芯-芯)
カラー:Blatte
ドロップ:102mm
ドロップフレア:24°
バックスウィープ:4.6°
重量:270g(420mm)
リーチ:75mm
フレアアウト:6°
COMP Venturemax
クランプ径:31.8mm
サイズ:400、420、440、460mm、
カラー:Blatte
重量:320g(420mm)
ドロップ:102mm
リーチ:75mm
フレア:24°
フレアアウト:6°
バックスウィープ:4.6°
※「アロイ」は合金のこと。自転車の場合は主に、「アルミニウム+α」を指す
今回、両モデルとも2種ずつ「WCS、COMP」を載せた。その違いは、使用されている合金(WCSが上位で軽い)のみ。重量の違い以外はスペック共通だ。だがその軽さはまるで、「カーボン?」と思ってしまうほど(大袈裟?)。
各表記の意味としては、ドロップ(上下差)、リーチ(中心から前への張出)、ドロップフレア(下ハンドル広がり角度)、 バックスウィープ(センターから外迄の折角)
その中でも注目いただきたいのは両者のフレア角とドロップの2点。互いにグラベルハンドルでありながら、結構な差異が見られるのがおわかりいただけるであろうか。
2つの端的な違いを言うと、「BeaconはVenturemaxに比べ、浅くて広い」。そして上下差&奥行きも少ない。つまりBeaconの方が、ライド時に上下ハンドルの持ち替え移動距離が少ない。
グラベルハンドルはロードハンドルに比べ、総じてポジションがワイドかつ上下差が少ないものが多い。それは不整地を走る際、安定性を考慮した設計に他ならないからだと言える(昨今はロードでもグラベルに寄せたようなフレア気味なハンドルが登場している)。
そういった独特な形状のためたまにロードバイクを引っ張り出して乗ると、「アレ?こんなに幅狭かったっけ!?(極端にハンドル幅の狭い車体操作の不安感を想像してみてね!)」と、ちょっと怖く感じてしまうこともあるのが、「グラベル過剰摂取(勝手に命名)」特有の症状。
そのフォルムこそ奇異に映るグラベルハンドルだが、ライドポジションはロードのそれに比べ、ずっと自然な姿勢で乗れるものが多い。そういう訳でこれからドロップハンドルデビューという方にとっても、比較的敷居も低いのではと思う。
タイヤの太さばかりがクローズアップされるグラベルロードだが、このハンドル形状にこそ「らしさ」が凝縮されてるのではと個人的には思っている。
私がまず手初めに導入したのはVenturemax(460mm)。
ワイド幅なのは当然なことながら上面が扁平で若干エアロ形状なこともあり、以前に使っていたハンドルに比べ非常に乗りやすかった。それに加え、デフォルトで付いていたハンドルに比べると、グッと「らしさ」が出て、カタチから入る人間としては大いにテンションも上がった。
ところが、頭の中にはさらに異形なBeaconの存在が常にあり、もう寝ても覚めてもビーコンビーコンビーコンと気になって仕方なかくなる・・・
そして!
Venturemax導入からほんの3か月弱の後・・・遂に念願のBeacon(400mm)にチェンジを果たす。ついでにステムもRENTHALから、RACEFACE ATLASへチェンジ!
「ステムは常にMTB用ショートタイプ」と言う妙なこだわりがあり、(当時はショップなどでステムが短いと前に転びやすく危ないと言われたが、気付けばここ数年でリリースされるモデルの大半はショートステム・・・)グラベルバイクはロードに比べトップチューブが長いものが多いため、その分ステム長でバランスを取るものが年々増加傾向にある。
グラベル完成車に付いてるステムは50mm〜の比較的短いものが多い(海外の大柄なライダーは普通に100mm以上を付けているけども)。
トップチューブのスローピングのような、見た目の分かりやすさ以外にもこういった細かな差異があるのもグラベルバイクならでは。他にも両者の違いを挙げると、リム幅、タイヤ幅&ノブ高。フレームの太さやダボ穴の数、不整地を走る際のトップチューブ裏の処理など多々ある。
しかしグラベルレース界では近年、バイクの高速仕様化に拍車がかかり、よりエアロ形状に寄せたフレームが出て来た。
そうかと思えば、もう一方ではMTBとの境界線が曖昧になって来ており(おもに平地のXC「クロスカントリー」系)、昨今はXCバイクにドロップバーを付けたものまで登場して来ている(2025現在の形)。
(「お前は一体マウンテンとグラベルどっちなんだい?」的モデルも各社から出て来ている)
今後、もしこの二極化が進むとしたら「エアロロードっぽい高速巡行型グラベル」と「XC系mixグラベル」にそれぞれ進化していくのかなあと、素人考えで無責任に予想してみたり・・・
さてさてBeaconに話を戻そう。
Venturemaxに比べ、ドロップが2センチ以上浅くなったことでポジショニングも楽になり、腹の出たオッサンライダーにとってはなんともありがたい親切ハンドル!
しかし!
Beaconはハンドルの構造上、STI(シマノの変速&ブレーキレバーの名称)の角度がかなり寝てしまう(=外に広がる)ため、これを呑めるか否かがBeaconを受け入れる一つの判断基準になるだろう。実際問題として、以前まで楽に通れていた狭い場所がちょっとだけ気になるようになってしまったのは事実としてお伝えしておきたい。
他にも様々な形状のグラベルバーが各社より出ているので、導入の際はきちんと数値をチェックした上で、自身の体型や目指すライドポジションと相談し、「自分は手が長いのか短いのか」「姿勢は空力重視の前傾になるのが良いか、ラクなアップ気味でいくのか」、「ワイドが良いかナローなのか」など、あれこれ吟味した上で自分にとって最上の一本を見つけて欲しい。
実はサドル以上に深いのが、この「ハンドル沼」だったりするので、気付けば家中ハンドルバーだらけでなんてこともあったりなかったり・・・。残るステップはいよいよカーボンしかないかなぁ。
最後に。
後々振り返ってみると、実はNITTOのグラベルハンドル(M137)、形も一番オーソドックスながら、ロングライドでも乗りやすかったなと(ここまで書いた意味って・・・)。