生産技術エンジニアをやっていると設備投資をすることが多いのですが、たいした設備でもないのに大金を投資しようとする人が大勢いました。自分が関わっていた案件であれば、価格や仕様を抑制していました。自分が担当していない案件では、出来上がった設備を見て無駄だなと思っていました。

何本も生産ラインを導入すると徐々に要領がわかってきます。その当時の私の考え方をいくつか紹介します。


設備価格を抑えることができないのはエンジニアとして2流
設備の価格は上げようと思えば青天井です。精度の良い機器を採用したり、自動化率を増やせば価格はどんどん高くなります。ところが、高い設備が必ずしも良い設備とは限りません。 どこの生産ラインでも世の中に1台しかない特注品の設備となります。仕様検討の甘い設備であれば、使い勝手が悪かったり、他設備との統一感がなかったり、稼働率が期待した通りにならなかったりします。

いかに不要な仕様を落として、必要最低限の仕様で価格を抑えた設備にするかという点がエンジニアの技術力の試される部分です。設備価格が安くて、安定稼働して、メンテナンス費用・手間がかからない設備が理想です 。言うまでもありませんが、これを実現するためには高い技術力が必要となります。設備の構成部品の価格を把握し、その設備へ要求される精度と選定する機器の精度をよく理解し、設備動作全体での動作フローや発生しうる問題を想定しなくてはなりません。また、運用面を考慮すると、他設備と使用する機器やソフト仕様もある程度統一しておく必要があります。つまり、ライン全体を俯瞰しながら、各設備の詳細を詰めるというマクロとミクロの面で検討しなくてはなりません。


決められた予算内で投資を行い、余った予算を別の改善活動に回す
どこの会社でも新規生産ラインの設備投資予算は決まっています。優秀なエンジニアであれば予算内に全て納めることができます。ところが、そうでないエンジニアの場合は予算を食いつぶして追加予算を申請することになります。また、予算をオーバーしないまでも終盤で残り予算に余裕がなくなると、お金に縛られて仕事がやりにくくなります。こうならないためにも、予算申請時に精度の高い価格想定を行うこと、想定外の支出に備えてどこかに予備予算を設けておくことです。


役職が上がるにつれ、こういったマネージメントの仕事が増えてきます。生産技術エンジニアの本来の仕事は技術案件です。うまくこなせる人はよいのですが、そうでない人はお金のやり取りや追加予算の申請などに時間を奪われることで、本来の生産技術の仕事が進まなくなります。負のスパイラルです。


こうならないためにも設備投資を可能な限り抑えて予算に余裕を持たせます。2000万円の設備予算であれば、1700万円程度で購入できるように設備仕様を最適化します。ライン全体で投資予算を大きく下回ることができれば、それらを別の改善活動に投資することができます。

例えば、人がやっていた作業をロボットに置き換えたり、改善したい設備の部分的な改造をしたりといった具合です。こういう改善活動にお金を回すことができるようになると正のスパイラルが生まれます。


可能な限りシンプルな構造でリスクを減らす(※高い技術力必要)
複雑な構造はメカ的な調整や制御が煩雑になります。位置決めの基準面がない場合や他人が見てもわかりにくいプログラムなどは運用面で大きなリスクになります。特に近年は自動化が進んでいて、搬送部は多軸ロボットや3軸アクチュエータなどがよくみられます。使い勝手は良いのですが、制御は複雑になり、価格も決して安くはなりません。取引先もそういった自動化構造にはリスクをとって、多少高めの見積もりを提示してきます。

どうしても必要な部分はそういった構造を採用すればよいと思いますが、必要でない部分は安価な代替方法を利用するべきです。「構造が複雑=技術力が高い」と考えがちですが、そうではなく「技術力が高いからこそ、シンプルな構造を採用できる」のです。

 

 

よかったら以下リンクも参照ください。

https://estacionsuzuki.com/

英語版) https://techfromjapan.estacionsuzuki.com/