
互いに一歩も引かない野性味を見せつけるカーロスとジョー。
ロープ際の攻防も、お互いに封じられた。ダメージも互角だ。
「これからは、ただひたすらけんかを仕掛けてやるぜ」
ジョーのその言葉は、なりふり構わず思い切ってぶつかっていくというような比喩的なものではなかった。
しかし、最初にケンカをふっかけたのは、なんとカーロスだった。上からたたきつけたり、ひじうちをかましたり・・。レフェリーはあわてて、減点するぞと注意する。しかし、それは序の口だった。先にお株を奪われたジョーも、ひじうち、頭突き、けりなどやりたい放題だ。お互いボクシングのルールなどお構いなしに、ぶつかり合う。ついにジョーは減点3をくらう。反省の色がないと注意され、まじめに試合をしろとレフェリーに言われる。ジョーは「だからまじめにやっているってのにさ」と。
二人の壮絶なケンカを見せられ、観客はブーイングをいうどころか、大盛り上がりをみせる。解説者までつぶやく
「ルールをまるで無視した 反則だらけの試合なのに、不思議にきたない感じを受けない・・・それどころか小気味よいさわやかな感じさえする・・・・いったいこれは・・・」
レフェリーを無視し、ゴングを無視してただひたすら野獣にかえってかみ合い続ける二人・・・
数分後、リング上には血に染まり汗にまみれた、二つの抜け殻が音もなくころがっていた。うろたえたのはロバートマネージャーや段平、西らセコンド陣のみ
三万七千の大観衆は、ボクシングというものの原点を見せつけられたような気がして実に満足だった
先日(平成19年10月11日)亀田大毅と世界チャンプ 内藤大助の試合が行われたばかりだ。この試合で、亀田はレフェリーに見えないように、反則をしまくり、実力ではとうてい勝てないチャンピオンに失礼極まりない暴挙を行った。さわやかどころか、反吐がでるような試合だった。
その試合で行われた反則行為と、ジョー対カーロスのリング上でのケンカボクシングは次元が違う。お互い、隠すこともなく、お互いが力を認め合い、自分の持ちうるありったけの力をぶつけ合ったのだ。ルールも判定も関係ない、勝ち負けも関係ない・・・お互いが自分の全身全霊、つまり魂をぶつけるに値する相手と認めたのだ。
この試合により、ジョーとカーロスには深い人間愛が芽生えるのだが、その後、カーロスはホセのコークスクリューパンチでパンチドランカー、廃人になる。
あしたのジョーは死んだのか・・この漫画の最後は、読む物の想像を駆り立てたまま想像の世界に昇華されていく。その続きを誰もが見たいと思っていたのだが・・
何かの本で、その後(梶原一騎が死んだので、本当はあり得ないが)の可能性を読んだ記憶がある。それは無限に考えつくストーリーの一つに過ぎないのだが、公園で廃人になったカーロスとパンチドランカーのジョーが遊んでいるシーンで終わったような記憶が・・
それほど、この漫画におけるカーロスの存在は大きいのだ。みんな茶目っ気のあるカーロスが好きだった。ベネズエラ、無冠の帝王、カーロス・リベラ・・どれをとってもいい響きだねー。