カーロスリベラは、世界ランキング上位にはいっているが、看板倒れのだめボクサーとして世間に披露した、全く作戦通りに。そして、まんまと日本チャンピオン、タイガー尾崎との対戦まで到達した。さらに、右指をたてて天にかざし「1分以内にKOしま~す」と宣言した。その姿に、かつて少年院での力石の姿が重なったのだ。ジョーの魂に火がついた。久しぶりに生き生きとした姿を見せるジョー。
しかし、丹下拳闘クラブにもどった時には、段平は酒浸りの自堕落な生活をしていた。カーロスリベラに興味をしめすジョーの話をちゃかし、カーロスのことをだめボクサーと決めつける。
ジョーは、段平がわざと関心のないふりをしていることに気づいていた。白木ジムで、ジョーとスパーリングをしたときにあわてふためいたことから明らかだ。
ジョーは段平に訴える
「おれが燃えるのがなぜ怖いんだ!何をおびえてやがるんだ!どうしたい 返事をしろよ返事をっ」
段平はいう
「け・・拳闘の・・拳闘の魔力ってやつは、つくづくおっかねえ・・・。
いってみりゃ・・・一度、拳闘にとりつかれると、どんな、うつくしい悪女の魅力よりも、とことん男を血迷わせ・・・狂わせ、若さにたぎる血の最後のひとしずくまで、すいつくしたあげくのはてに・・・・・ボロボロにされてポイ・・・・さ」
「去る者は追わず・・・おめえもいい加減に拳闘を見放すんだ。足をあらうんだ。これ以上のめりこんじゃいけねえ!聞いてるのか、おいっ」
ジョーはいう
「ボクシングジムの会長が親心を出すようになっちゃおしまいだな。まっ上の看板、書きかえて、駄菓子屋でもはじめるんだな」
「今後はいっさいおれのまわりをうろちょろするのはやめてもらう!おれはおれの歩きたい道を一人だけで歩くっ」
自らも拳闘に人生をだめにされた段平。ジョーの快進撃の間は夢をみることができた。ともに心地よい夢をみていた。そして、自分をだめにした拳闘界に復讐を果たすようで気分がよかっただろう。
しかし、現実は重かった。一夜の夢が覚めてみれば、自分の秘蔵っ子が、命より大事なジョーが、自分と同じようにボロボロになっていく、拳闘地獄の中で人生を狂わせれていく。そんな姿に耐えられなかった。
はじめは何とか復活してほしいと願った。しかし、惨めに壊れていくジョーの姿に、厳しい現実を突きつけられ、正気にもどった。正気にもどれば、また酒浸りの生活だ。
問題はここからだ。それでもジョーは拳闘を続けるという。協力してくれないなら、せめて足を引っ張らないでくれという。そして、自分でやるから、もう放っておいてくれと。
これは親子の物語でもある。親は子に期待し、前に前に引っ張ろうとする。しかし、どうしようもない現実に直面するとうろたえだし、今度は安全なところに引き留めようとする。そんな親を振り切って、自分の足で歩き始めるところから、本当の人生が始まる。そして本当の親子関係が始まる。
ジョーは蘇り、拳闘の世界に戻るだろう。その背景で動いていたのは、ジョーと段平の関係なのである。こうなれば、親は子を先回りすることはできない、後ろから黙って見守るしかない。その先に、どれほどの苦難が待ち受けていようが、もはや親には何もしてやることはできないのだ。