段平は、少年院にいるジョーに会うために、慰問団に加わった。白木ジムのお嬢様、白木葉子が中心となり、演劇のボランティアを行うわけで。ジョーの少年審判の際も、法廷に葉子は現れた。何故に・・。それは、ジョーが逮捕されるきっかけとなった、詐欺事件(募金を装い自分の金にした)に10万円募金したのが葉子だったのだ。

慰問の演劇で、段平はムチにうたれるせむし男を演じる。演技どころか、本気でむち打つという劇にジョーは切れた。ボクサーだから頑丈だから本気でむち打ってもよいという神経に。そして、むち打たれたせむし男を解放する心優しき娘を演じる葉子の偽善に切れたのだ。

貧しき者たちを高見の見物のように見下し、お恵みをし、それに感謝という見返りを求めている葉子の無意識を、ジョーは徹底的に批判した。

教官たちが、ジョーのペテンと知らず、同情して10万円の大金を寄付されたのに、それを踏みにじった人間が、さげすまれたとしても自業自得だとジョーを非難する。

 

ジョーはいう

「たかだか十万円ぽっちのことで裏切られたからって腹を立てるくらいなら少年院を慰問して愛を説くなんて おこがましいまねをするなってんだ!」

「万事が恩着せがましいんだよ。はるか雲の上から優越感でやっていることなんだ。うわべだけの愛、かたちだけの親切。いわばすべて偽物なんだな!」

「お黙りなさいっ」

「そーら、それが正体さ。おれは理屈なんてえのは苦手だが、もしかすると葉子おじょうさまよ・・・あんた、おれやここにいるあわれな連中のためじゃなく

自分のために、こんな慈善事業をやる必要があるんじゃないかね え?自分のためによ」

 

痛いところを突かれた葉子は言葉を失う。

 ボランティア、慈善事業、真実はどこにある。本当の愛なら、本当の気持ちなら、目立たず、誰にも評価されず、一見他愛のないことに本気で取り組む、それが本当じゃないのか?そもそも、大上段に構えて、見ず知らずの人々に愛を振りまかなくても、本当に愛を振りまく相手は、目の前にいるのではないのか?身近にいるのではないのか?隣にいるのではないのか?誰にも知られず、相手にすら認められず、それでも一方通行に、ただただ、自分の思いだけで、捧げることが本当の愛なのだろう。見返りを期待した瞬間に、すべてがパーになる。そういやー、同じような話が、巨人の星の時にもあったな。真の友情は・・と一徹が説いていたな。

何もかもが派手になり、大がかりになり、与える側も受ける側も、ささやかなる真心というものに鈍感になってしまっているのではないかな。といいつつ、その言葉はそのまま自分に返ってくるものだな、反省しよう。