川上に叱咤されて出場したオールスター戦で、飛雄馬は大リーグボール1号、2号ともかつての輝きを失い、醜態をさらす結果となった。自分の情けなさを左門に、吐露したところ、左門からは意外な言葉が返ってきた。左門は例のヤクザ事件以来、不良番長 京子に恋心を抱いてしまったのだ。その思いで胸がいっぱいで野球に集中できなくなっていた。飛雄馬は、あの事件後、京子を病院に入院させた。しかし、入院先の病院でさんざんな悪態をさらしたのだ。京子と縁をきるつもりで、自分のマンションから全財産をもっていけと言い放った。そのやりとりを左門はしらない。

飛雄馬は左門の目を覚まさせようと、マンションに連れて行く。マンションの中は荒らされているはずだった・・・。しかし、飛雄馬と左門がみたのは、整然としたマンションだった。そこに一通の手紙があった。

「星さん

京子は失敗しました。星さんの全財産をいただき、せいぜいワルぶることで・・・いいえ、事実、京子のもつワルの面を強調することで、すっぱり星さんに見捨てられ、身の程知らずの恋をあきらめようとしたのです。

でも

やっぱりいいコぶっちゃう・・・・せめていいコぶったまま、星さんの前から消えることを、悪名高いズベ公の初恋のエンド・マークにさせて・・・・

そして、どんなに京子が堕落してしまっても、こんなすばらしい男性を、一度は愛したのだと誇れるような「巨人の星」星飛雄馬であってください

オネガイ!                  京子」

 

ガーン、ガーン、ガーン 決定的だ これは!

川上監督が、花形が、左門が、俺にもう一度 おれに立てという!

・・・・・そして、このオネガイの四字は決定的・・・・・・

まがらなくなった小指だけを形見に去っていった不良少女のオネガイの四字に報いねばならん、おれは!

か・・・完全にとどめをさされた感じだっ 京子さんに・・・・・

もう一度 立てと うながす とどめのムチ!

 

熱血野球漫画、父子の葛藤、などなど少年の成長漫画で、教訓的な、説教くさい言い回しから、ヤクザとのやりとりと越えて、任侠漫画のようになり、それを越えて一皮むけていく飛雄馬。意図的に構成したのか、梶原一騎が勢いで書いている内にそうなっていってしまったのか・・

おそらく、何年も先の先まで、細かい部分まで構想をねって書くことはできないであろうから、読者の反応を見ながら、書いていったのだろう。キャラクターに命が吹き込まれ、勝手にセリフを言い始めるというやつだろうな。梶原一騎の着想、そして読者のイメージ、思い入れが星飛雄馬というキャラクターに命を吹き込み、飛雄馬ならこの場合こういうだろう、こうするだろう。一徹は、花形は、左門は、伴は、明子は・・・・

昔は、今ほど漫画が多様ではなかったし、少年漫画は、マガジン、サンデー、キング。ぼくら、冒険王、ぼくらマガジンは子供向けなので、マガジン>サンデー>キングの順だった気がするな。ある時期、巨人の星とあしたのジョーが一緒にマガジンに連載されていたんだ。すごいでしょ。原作者は梶原一騎なのに、梶原は、あしたのジョーでは高森朝雄という別のペンネームで書いていたわけだ。この頃のスポーツ漫画の多くは梶原一騎原作だよ、すごいね。話がそれたが、ほとんどの少年が同じ漫画を読んで、文化を共有していたということが言いたいわけ。漫画だけじゃない、歌謡曲も、テレビ番組も、ラジオも、共有する部分が多かった。一緒に文化を創っていたんだな。書き手と読み手、与える側と受け取る側が。

巨人の星の主題歌が流れると、わしらくらいの世代のおっさんたちは、胸がきゅんとなるんだよ。涙がでそうになる。頑張ろうという気持ちになる。そして、漫画のある場面が今の自分の状況とダブって、歯を食いしばって頑張ろうと思える。いい年して馬鹿じゃないかと思うだろう。そう、馬鹿だな。でも、馬鹿だから頑張れるんだぞ。