巨人の星は、現実の巨人軍とオーバーラップしながら話が進んでいた。登場する巨人軍の選手も実在の人々だ。その中でも、飛雄馬にとって重要な役割を果たしていたのが、野球史上に輝く400勝投手、金田正一だ。漫画の中で、金田の引退が取り上げられ、引退会見が取り上げられた。

金田の入団時の苦労話、その後、如何に自分を追い詰め鍛え上げてきたか、感心されられる話だ。本当にそういう話があったかどうかは不明であるが、漫画に書かれていたこととして理解していただきたい。

20年間、剛速球、変化球を投げ続けてきたことで、腕は曲がってしまった。

金田は言う、「かわいそうに、この左腕・・カーブを投げすぎると、こうまがってしまいよるんや。おまけに複雑骨折までおこしとる・・・ながかったもんなあ、おい 20年間のご奉公は・・・」といって、自分の左腕をいたわる。

そこで飛雄馬は心の中で叫ぶ

「黄金の左腕だ! 全盛期の投手の腕を黄金とよぶが、これぞ、このひび割れ、醜く曲がった腕こそ・・・真の底光りする黄金の腕だ!そ・・そして、男の腕だ!」と

そして、会見を終えて、金田が「ほ~っ」とため息をつく。

伴 「20年間の緊張とおのれを半死半生までしごいた・・・つかれの連続から、今、一時に解放されたんじゃのう・・・」

星 「20年目のためいき・・・か。あの人なら資格がある。怠け者のため息では、けちな敗北にすぎんが・・・」

 

伴 「うむ・・・男たるもの、やれやれとため息をつくには、命がけの20年が必要なんじゃとお互い覚えておこうぜ、星!」

 

石の上にも三年という言葉がある。何事もしんぼう強く努力すれば、かならずよい結果がえられるものだ、ということだ。三日三ヶ月三年という言い方もある。何か新しいことを始めると、そのくらいの時期に節目があり、それを越えると、やりやすくなるということだ。本当かどうかは別として、人の心は弱いので、すぐにくじけそうになる。そのくじけそうな心をどうやって持ちこたえるかが重要だ。

小さい頃から、そういうことわざとかたとえ話とか、先人の生き方を何度も何度も聞かせるのはそのためだ。知識を得るためではない。そうやって聞かされた言葉がいつの間にか自分の血肉となり、いつの間にか内なる声として、自分を支えてくれることがある。苦しいとき、「三日三ヶ月三年」と念仏のように言い聞かせて、一日一日を乗り切れることもある。

今やことわざは死語のように軽んじられ、こういった根性話はくだらないお節介話のようになり、聞きたがらない風潮がある。しかし、それを失ってしまった人々は、いったい何を支えに苦しみを乗り越えるのだろうか・・・

金田の20年間・・・ある職人が、テレビで話していた。何でもいいから、一生懸命20年やってみなさい。20年続ければ、きっと何がが分かってくるというような感じのことだった。わたしも今の職業について二十数年になる、少しは何かが見えてきただろうか。