飛雄馬の初恋は、美奈の死をもって終わった。飛雄馬は、「見れば認めなくてはならん」と言って、美奈の死に顔を見ることを拒み、山の中で七転八倒する。もはや自分は立ち上がることはできない、すべては終わったのだ・・・その時、宮崎の自然の中に沈みゆく月、登りくる太陽をみるのだった。

「東に日がのぼりつつあるっ 西に月がしずみつつあるっ は・・はじめて見た、のぼりくる日、しずみゆく月・・・ 日と月が同じ天にあるのを。(がーん がーん がーん がーん がーん)」有名な感動的なシーンである。

「ああ、こうして このように・・・日は昇り 月はしずみ 限りない果てしない繰り返しで 地球誕生以来、地上のいとなみ、人類の前進があったっ」

 

「しずみゆく月を悲しみ いつまでも それを 追おうとしても・・・ 日はまたのぼる!」

「そこに進歩が 前進があった! 美奈さんを月にしよう!おれは日になろう!大自然の夜明けがおれに教えた!」

「今こそ このなを口にするのも、これっきり。美奈さん、君に言う・・・さようなら・・・・」

 

激しい、取り乱し方が激しい。ものすごい感情表現だ。原作では控えめだが、アニメではよく「ギャグ」として登場する、飛雄馬の七転八倒取り乱しシーンだ。アニメでは崖からかなりの距離を転落していくが、それはやり過ぎだろう。あれではとても無事では済まない。

まあ、その位、すごい感情だというわけだ。ものすごい割には切り替えも早い!そして、飛雄馬は、その後の人生でもはや誰も愛さないと誓うのだ。その名を口にしたり、思い出すこともひかえようとする。ものすごい愛だろう。ダラダラ未練がましくしがみつくのが深い愛ではない。愛深き故に、もう二度とその名を口にしないというのだ。それが美奈との間で愛は完結したという証なのだ。未練がましく、他者にその名を語れば、美奈との間ではぐくみ燃えさかった愛はさめてしまう、そしていずれは昔話になってしまう。飛雄馬はその名を封印することで、永遠に美奈との愛を胸に秘め生きることを選択したのだ。

そんなアホなとわらわば笑え。そういう愛の形があってもよい。そういう愛の形があった。そういう愛を貫いた古くさいバカな男がいた、それだけのことだ。誰かに認められようとか、ほめられようとか、慰められようとかの気持など微塵もない立派な覚悟だとおもわんかい。