新魔球のヒントをつかみながら、実現にはほど遠い絶望的な状況が続いた。「絶望なんて、おれに言わせりゃ、まだ余裕のあるやつのいうこと。投手星は、この夢にすがるしかないっ」そこまで追い詰められた飛雄馬。

ある日、テレビでボクシング中継を見て何かがひらめき、ボクシングジムに練習を申し込んだ。ボクサーにめった打ちにされながらもヒントをつかみ、新魔球の手応えを確実につかんでいく。飛雄馬の真意をしらず、野球で通用しなくなってボクシング転向をかなどと書きつづる新聞各社。

新聞を読んだ長屋の住人たちは一徹の元に駆けつける。ボクシング転向は本当なのかと。

一徹はいう

「わしは、信じとる・・・飛雄馬は思いこんだら、いかに試練が厳しかろうと、脇道へそれるような男ではない!」そういいつつも、一徹自身、飛雄馬の真意を計りかねる

 

「わからん、皆目わけがわからんが、しかし、信じとれば・・・

我が子が成長して親の古い頭では理解できんことをやるだすというのも、また、親にとっては頼もしくうれしいものよ。いささか、寂しくもあるがな、ふふふ・・・」

 

子が思い通りになってくれることを願い、親の価値観から外れると、脅したり嘆いたり、あらゆる手段を使って、自分の価値観の中に引き戻そうとする親がいかに多いことか。

幼少期から、自分の夢を託し、自由を奪い、がんじがらめの野球地獄を体験させてきた一徹。しかし、自分の考えが及ばない所に息子が入ってしまったことを理解するや、距離をもち、信じて見守る態度に徹する姿。息子は息子で、なんでもかんでも父ちゃん便りだったのが、父の力の及ばぬを理解するや、絶望のどん底に陥っても自分の力ではい上がろうとする姿。離れてはいるが、深い信頼で結びついている親子。誠、自ら肝に銘じ、手本としたいものである。