
二軍宿舎から姿を消した飛雄馬。厳しい父一徹さえも、もはやかける言葉もない。その時、伴は「いくじなし、ひょうろく玉」とののしる。飛雄馬を信じているがゆえの罵倒だ。沈み込む一徹と明子を、そこらのマイホーム家族に成り下がったかと恫喝する。
そこに牧場が現れる。牧場は、自分が左門にスコアブックのことを気づかせてしまったと強い自責の念を感じていた。結果として、左門に打ちのめされ、さらに自分を責めていた。飛雄馬には青雲高校を身代わり退学してもらい、それだけでも一生の恩があるのに、さらにこの有様だ。牧場はほんとうに自殺したい気持ちだった。その時、牧場のもとに飛雄馬から速達が来たのだ。「牧場さんのせいじゃない。口をすべらせなくても、時間の問題でこの日はきた。気にせんでほしい」と。
自分も絶望のどん底にありながら、どん底から他人を思いやる心・・・その心に皆が心を打たれる。その行動に対して一徹は「飛雄馬のやつも大丈夫じゃよ、どうやら」という。
そして、一徹は漫画家を目指して修行中の牧場に言う
「いつの日か、きっと君は作品の中に「強さ」というものを描くときがあるじゃろう。真の強さとは・・・」
「ほんとうの強さとは、いかにも強そうにはりきった見せかけよりも、一見やさしげなものの中に秘められとる場合が多い・・・」
明子は言う「だ だから、絶望のどん底から牧場さんを思いやることのできた飛雄馬は大丈夫だというのね、おとうさん・・・」
強さとは強さをひけらかすことではない、負けないことでもない。真の強さとは、己の弱さを恐れぬことである。弱さを知りたくない、弱さから逃げ出したい、人と同じかそれ以上に強くありたい、それが人情だろう。しかし弱さから逃げようとすればするほど、強さは遠ざかっていくものだ。負けを恐れず、弱さを認め、絶望は絶望として一度は引き受け、その絶望の淵から、蘇るチャンスを待つ心。絶望はしても、決して自分を投げ捨てない心。それこそが、本当の強さなのだ。