飛雄馬と一緒に入団テストに合格して入団した、オリンピック陸上選手、速水。彼は飛雄馬に対してむき出しのライバル意識を向けてくる。それに触発され、飛雄馬も彼にだけは出し抜かれまいと必死になった。

二軍紅白戦で対戦する二人。俊足を生かしてホームまでつっこむ速水、ホームでボールを待つ飛雄馬。そして、クロスプレー、審判のジャッジはアウト。しかし、飛雄馬はボールを落球していた。とっさにそれを隠した飛雄馬だが、馬鹿正直があだとなり、それを告白してしまう。結局、その一点が勝敗を決めることになり、速水は殊勲を受け一軍昇格となり、自分は取り残された。しかも、チームメイトからは罵詈雑言を浴びせられる。

「おれは プロの生存競争よりも、人間として正しい道を選んだ・・・しかし、それに何の意味があったか?試合には負け、誤審を暴いて主審の心を傷つけ、ライバル速水の一軍昇格を手伝ってしまっただけだ・・・」

飛雄馬の初めてのファン、ター坊は「人間は正直じゃなきゃいけないんだよね」と飛雄馬の態度に感動する。しかし、当の飛雄馬は迷う

 

「人生には正直をつらぬくことが、むしろこっけいで、敵をつくり孤独になる場合が多いんだ、ばか正直ってやつだ!」

「ああ とうちゃん・・教えてくれっ。おれのやったことを、どう思うかい? 伴よ・・きみなら、あの場合どうしたか?」

 

今の世なら、ばか正直は、間違いなく滑稽だろう。ばれなきゃ何をしてもいいという文化が完全に定着してしまった。梶原一騎が「ばか正直」への葛藤を、しつこく描いたのは、現実にはばか正直は無意味な、愚かなことだという風潮が当時からあったからだ。子供たちにはそう思ってほしくない。やはり、それでも正直は尊いのだと言いたかったのだろう。子供たちだって、実際にはそうではなかったが、こういう教えの影響を受けて、人として本当はその方が正しいのだという思いを心に刻んでいった。