【ファストライド研究2015】 その2 ~今すぐできる時間短縮~ | 桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

北海道のサイクリング好きのブログ。

長距離を走る上で時間短縮がしたい場合、今すぐ出来ることと出来ない事がある。
まず前者から考える。

手っ取り早いものとして、
①補給・休憩を短くする
②空力を改善する
というのがある。
極端な内容もあるかもしれないが、特別なトレーニング無く、今の身体能力でできる、ということで、「今すぐできる」とした。



①補給・休憩を短くする
ファストライドで時間短縮を狙う場合、停車時間を少なくするのが非常に重要になる。
そのためフィジカルを鍛える以外に出来ることは、補給の工夫と休憩の工夫だ。

[車上で補給する]
まず補給について。自分に必要な補給のタイミングを理解した上で、停車時間を短くする事を考えるべきだ。そう考えると、走り始める時に途中で摂るエネルギーを持っておいて車上で食べるのがベストだ。自分はあまりやらないが、車上で食べるのに適している補給食としては下の様なものがある。

・ゼリー
エネルギー補給用のゼリーは飲み込みやすく消化が良いのでファストライドにも非常に向いている。体積に対してエネルギー量が多いものが良いので、その点で言うと最高は1mlあたり2.5~3kcalほどある自転車専用のものだ。
ただしこれは非常に値が張る。また、粘度が非常に高いので自転車用のボトルではなくソフトフラスクに入れて絞りだすのが良い。蜂蜜もカロリーとしては同じ程度だ。練乳派の人もいる。
次に優れているのは1mlあたり1.5kcalほどのもので、薬局で130ml入りくらいのものが売られている。
イメージ 1

自分は北海道1200でこれを1ℓのボトルに満載し、1500kcalほどを持って走った。
コンビニなどで良く売っているタイプは1mlあたり1kcalほどで、上の二つに比べるとエネルギー量は少ないが、入手しやすい。

恐らく、単にエネルギーを摂るだけなら蜂蜜や練乳でも問題ないのだと思うが、塩分なども併せてバランスよくということを考えるとスポーツ用のものがいいのだと思う。

・アンパン、大福、羊羹など
これらはゼリーほどではないが消化が良く、容器無しで持ち運ぶことができて便利だ。手が汚れない点も自転車乗りにとっては嬉しい。
定番は4つ入りの小さいアンパンだが、買った時に入っている透明なトレーは車上で食べるには邪魔なので捨た方が良い。

他にはカロリーメイト等も持ち運びやすいが、脂質が多く消化に良くなさそうな点と、口の中がパサツキやすい点を考えて自分は使ったことが無い。
チョコレートバーはカロリーは高いが、これも脂質が多く、また夏場は溶けてドロドロになるので、自転車には向いていないと思う。


上では甘いものを中心に挙げたが、多量の発汗が予想される場合は、塩分や電解質のタブレットを携帯するべきだし、体調を崩さないためにも、停車時等に塩分をしっかり摂っておくのが良い。


[素早く補給する]
停車して補給する場合にも、短時間でカロリーを摂ってしまうことが大切で、その用途に向いていて最も安く済むのはプリンだ。
バナナ派の人もいるが、自分はバナナよりもプリンの方が一気にたくさん食べやすいのでプリンを選んでいる。
おにぎり等で塩分を摂るのも大切だが、3つくらい食べようとするとすぐに10分くらい経ってしまうのが悩ましい。


[カフェインは緊急時のみ]
カフェインは必要な時以外は摂るべきではない。利尿作用があってトイレが近くなるので、本来不必要なタイミングでのトイレ停止をもたらす可能性があるからだ。
カフェインは錠剤で持ち歩き、眠くなりそうな時間帯を予想しておいてピンポイントで使うのが良い。
眠気防止としては、ガムを噛み続けるというのも良い。


なお、カフェイン以外の補給についても、トイレが近くならない、お腹の具合が悪くならないということには細心の注意を払いたい。上で述べたゼリーについても、カロリーの高いもの等は一気に大量摂取する様な使い方を想定していない気がする。そういったものを使うのなら、ぶっつけ本番ではなく必ず事前に似たような状況を作って試しておくべきだ。
自分はこれで失敗したことがある。


[休憩は必要最小限]
休憩は必要な場面以外はとらない。
そのためには、走行ペースと補給の管理、そして眠気への対応が重要だ。
これについては前の記事とこの記事の上の部分で書いた通りだ。

それと、自分はあまり研究したことが無いが、コンビニでの買い物時間を減らすために、決済をカードで行ったり、どこに何が売っているかを把握しておく、という事も言われている。


補給・休憩を短くしようとすると、セルフマネジメントが問われる。
足が動かなくなった時の対応、ハンガーノックになった時の対応、眠くなった時の対応、それぞれ必要ではあるが、それらは全て問題発生後のクライシスマネジメントだ。
そうなってしまった時点でリスクマネジメントが適切に行えていなかったということであり、失敗だ。自分のフィジカルや経験、コースの分析などを通して、問題が発生する前にそれを回避する手をうつ周到さと、問題が発生してからではなく予兆のうちにそれを感じ取る繊細さを持つことが大切だと思う。





②空力を改善する
空力を改善すると、同じ出力でも速度が上がる。
この差は他のどんな手段によっても絶対に覆らないので、ファストライドをとことんやるのなら空力の改善は必要不可欠だ。

空力の改善には、エアロ装備の導入、装備の絞り込み、取り付け位置という側面がある。
また空力の改善とは少し違うが、空気抵抗と出力の関係に付いても考えるべきである。

[エアロ装備の導入]
エアロ装備の導入を検討するにあたって、小笠原崇裕さんの下記記事が非常に参考になった。

自分の経験も合わせ考えると、ファストライドで想定される速度域で効果が体感できる装備は、影響の大きい順に、エアロバー、スキンスーツ、エアロヘルメットの3つだ。
これら全てを使用した場合、そうでない場合に比べて5wや10w分を大きく上回る速度を得ることができる。

・エアロバー
エアロバーは効果が顕著なので状況が許すのならば導入すべきだ。
ただし、独特な姿勢をとることになるので、その姿勢で漕ぐのに慣れるまでは漕ぎにくい思いをすることになる。バランスもハンドルを握った状態よりは若干崩しやすいし、ブレーキレバーを握ることもできない。
実戦投入する前にローラー台や信号も人通りもない平坦路で試してみるのが良い。実戦でも、路面状況が確認しにくい雨天時や夜間は使わない方が良い。

エアロバーはギアが1枚軽くなった気がするくらいの空力効果があるが、それ以外にもメリットがいくつかある。
まず、腕をがっちり載せることができるので、サドルへの荷重が減り、お尻の痛みが出るのを遅らせることができる。
また、ライトを同軸で取り付ける優れた台座となる。
イメージ 2

デメリットとしてはハンドルバーのスペースをほぼ独占してしまう点と、(単純に重量と言う意味だけでなく操作感が)重くなってしまう点が挙げられる。
前者はハンドルバーに取り付けるものを絞り込むことで受容することができるし、後者も平坦が多いコースではあまりマイナスにならない。

・スキンスーツ
スキンスーツはピチピチで動きにくそうなイメージがあるが、伸縮性に優れた素材でできているので、乗車姿勢での着心地は悪くない。
デメリットはあまり無いが、長距離を走るにはポケットなしのものは相当不便なので、ポケット付きのものを選ぶこととなり、そうなるとラインナップが限られる面がある。
ファストライドに一番向いているのは、白ベースの長袖でパッドが厚くてポケットが付いたもの、ということになる。

・エアロヘルメット
エアロヘルメットには空力が改善される副次的な効果として、耳に入る音がかなり静かになるので、走行時の快適さが増すという一面もある。
自分はGIROのAIR ATTACK SHIELDを使っているが、これはバイザー付きなのでアイウェアを別に用意しなくて良くて便利だ。
ただしこのバイザーは基本的にスモーク色のものしか無いので、夜間には使用しない方がいい。海外通販の一部店舗でクリアのものを入手することができるが、それでも少し視界が悪くなるので夜間の特に下りでは使用しない方が良い。
デメリットとしては重くなる点とやや暑い点が挙げられるが、前者は空力が改善されて首にかかる抵抗が減ることもあってか余り気にならない。後者は少なくとも北海道では夏場でも全く問題ない。

エアロヘルメットの効果を追加費用ゼロで体感するには、ラップでくるんで穴を全てふさいでしまうと良い。AIR ATTACK SHIELDを買う前に400kmのブルベで試したことがあるが、効果は体感でき、その時は自分の中での最速ライドの一つとなった。


これら以外にも、シューズカバーやグローブを工夫することで更なるエアロ化をもくろむことができるが、影響の大きさということで言うと上記の3つが抜きんでているように思う。
40km/hや50km/h出すのならディープリムホイールやエアロフレームも影響があると思うが、ファストライドで半日~1日出し続けられる速度は最大でも40km/h以下になるだろうし、効果がどれほどあるのかは自分は解らない。
共に非常に値が張るものであるし、ディープリムには登りや横風に向かないというデメリットがある。フレームは物によってはブレーキ回りのトラブル対応が難しいし、荷物の取り付けがしにくい可能性もある。


[装備の絞り込み]
エアロ装備を整えたとしても、装備を大がかりにしてしまうとそこで生まれる抵抗でエアロの意味が無くなってしまう。
エアロ装備を活かすためには、シビアに装備の絞り込むこと求められる。

・衣類の絞り込み
最も大きいのは、換えの衣類の絞り込みだ。衣類は最もスペースをとる。
本格的な防寒具と雨具は寒さに強くなれば不要なので、ファストライドでは持ちたくないものだ。昼夜の気温差は仕方が無いので、それは昼間から暑く感じない程度のインナーを着て長袖で過ごすか、半袖で過ごしてアームウォーマーを背中のポケットに入れておくことでカバーしたい。
この点があることにより、ファストライドでは走力以外の体力が非常に大きなウェイトを占めることとなる。

・必要なもの以外は削る
衣類以外の絞り込みにおいては、「必要なもの以外は削る」というのが基本的なスタンスとなる。トラブル対応に必要なものは持ち、それ以外の快適さを増すためのもの等は持たないということだ。
前者としてスペースをとるのは輪行袋とチューブだ。自分は換えのタイヤまでは持っていない。それ以外は、パンク修理用のパッチ、痛み止めなど、あまり嵩張るものはない。
後者にはタオルやウェットティッシュ、洗顔などがあると思うが、気にしなければ要らない。

走行を楽にするために、ハンドル周りに付けるものは減らした方が良い。
ペース把握で最もあてになるのは体感なのでサイコンは必要ではないし、GPS無しで完走出来なかった事は無い(自分はそもそも使ったことがない)。ベルやライト類は当然要る。

どうしても問題になるのはボトルを何本持つかということだ。
ロードバイクには2つのボトルケージを取り付けることができるが、ボトルを2つ持つ必要があるのか、それともボトル1本ツール缶1本にするか、これは全く違う。
後者の方が圧倒的に望ましいが、水以外のボトル(カロリー補給用のゼリーを満載した物は便利)が必要な場合や、大型ボトル(自分は1ℓのものを使っている)1本を上回る水を持つ必要がある場合にはボトルを2本持つことになる。
自分は水を1ℓ持ち、それ以外の補給は1食分程度背中のポケットに持ち運ぶ形にしている。そのためにポケットはほぼ空にしておくのが望ましい。

--------------------------------------------------
自分が300km以上走る時は、大体以下の様なものを持つことにしている。

ツール缶
・六角レンチ
・チューブ×3
・バルブ外し工具
・痛み止め
・パンク修理パッチ7~8枚
・タイヤレバー
・輪行袋

自転車
・ベル
・空気入れ
・フロントライト×2
・リアライト
・ボトルケージ×2
・ボトル(1ℓ)
・ツール缶

ジャージ
・電話
・お金
・塩など

--------------------------------------------------


[取り付け位置]
絞り込んだ荷物をどこに収納するかというのも問題になる。ファストライドでは、空力以外に、車体の取り回しの軽さも優先されるべきだろう。
最も簡単確実に取り付けられるのはボトルケージだ。1つは必ずボトルに使うとして、もう1つが空くのならそこにツール缶を取り付ける。
しっかり装備を絞り込めば、これだけで長距離を走ることができる。
イメージ 3
↑600km含めここまで絞り込むことができた

ボトルケージ以外のところに取り付ける場合、空力の観点からはエアロバーの間が最も良いが、操作感が重くなると思われる。
サドルの後ろに付けるトライアスロン用のボトルケージ台座もあるが、サドルのレールを本来想定していない形で挟み込み、走行時もかなりの振動がおこるので、構造的に無理がかかっていると思われ、自分は今後利用したいとは思わない。
サドルの後ろには輪行袋を取り付けるようにしている。

ダウンチューブにボトルケージを増設するキットも売られているが、クランクやタイヤの近くに後付けでケージを増設するのに不安を感じるため、自分は使ったことが無い。

ハンドルの前にバッグを取り付けると非常に便利だと思うが、空力的にはマイナスになるので、ファストライドには向かないだろう。サドルの後ろに取り付ける大容量のサドルバッグもロングライダーにとって定番の品だが、車体の取り回しが重くなりそうなので自分は使用していない。空力的にはハンドル前よりも影響が少ないだろう。

細かい話だが、空気入れはシートチューブよりもダウンチューブに付けた方が良い。操作感を考えなければエアロバーに同軸で取り付けるのがベストだ。
基本的に、柱状のものが垂直に付いているのは良くない。


[空気抵抗と出力について]
自転車程度の速度では、空気抵抗は速度の二乗に比例すると考えてよいようだ。
速度を上げて走行する場合、出力の多くは空気抵抗に打ち消され、速度が上がれば上がるだけ必要な出力は加速度的に上がっていくことになる。
これが上記のように空力にこだわる理由なのだが、これを考えると、速度は対地速度ではなく対気速度で把握しなければならないということになる。

具体的な状況を考えると、向かい風の状況では風速分の速度は落ちて当然だし、追い風の状況では風速分速度が上がって当然ということになる。風の影響により、速度は無風の時の感覚で言うとちょっと信じられないような値になったりもするので、注意が必要だ。
速度計を付けているとこの変化が如実に表示されてしまうので、向かい風で必要以上にトルクをかけてしまったり、追い風で必要以上に低いペースで巡航してしまったりということにつながりやすいと思う。