さて、前回に引き続いて豪州レポートです。

 メルボルンの次に訪れたのはNSW州のシドニーです。シドニーは言うまでもな く豪州最大の都市で、またオペラハウスなどの有名な施設があるため世界中から観光客が訪れる観光都市でもあります。街の中はとても明 るく陽気で、メルボルンが欧州のような雰囲気であるのに対し、シドニーはアメリカのような雰囲気でした。

 メルボルンでは数多くの場所を訪れたのに対し、シドニーではリーガルエイドNSWシドニー中央事務所 と「福祉権利センター」(Welfare Rights Centre)の二か所のみでしたが、その分、豪州の扶助制度をじっ くりと学ぶことができました。

 NSW州には22か所の地域事務所があり、シドニー中央事務所はその中央オフィスですが、民事法プロ グラムが一番小さく刑事が最大のプログラムになっています。ただ、小さいとはいえ民事法プログラムだけで90人のスタッフ 弁護士がおり、改めて法律扶助やスタッフ弁護士の規模の大きさを感じさせられました。民事法プログラムの中でも精神保健、高齢者・ ホームレス、受刑者などに対してはスペシャルユニットが組まれており、それぞれ専門のスタッフ弁護士がいるほか、パラリー ガルやソーシャルワーカーなどが組み、組織的な支援を行っています。またメルボルンでも感じたことですが、スタッフ弁護士 は法教育活動にとても熱心に取り組んでいます。日本ではどちらかというと法教育は付随的な業務ととらえられがちなので、なぜ熱心に取 り組むのかと尋ねたところ、「専門家である弁護士が法教育を行うことによって、紛争を防止できるという高い効果があります。ま た採算性が全くないので、スタッフ以外の開業弁護士ではほとんど行えないのです」という回答でした。紛争を防止するという 法教育の予防法務効果と、それにスタッフ弁護士が取り組む意義を改めて考えさせられました

 また、「福祉権利センター」(Welfare Rights Centre)は、生活保護などの社会保障に対する問題を支援する専門機関です。行政機関の硬直的な対応によって社会保障が受 けられない人々に対し、法的支援を行っており、行政機関が硬直的なのは、日本でも豪州でも変わらないという意味で苦笑いしたくなるよ うな気持ちでした。

 さて、シドニーでは毎朝早起きして、シドニー湾をジョギングしていました。 そして、朝日に輝くオペラハウスを見たとき、坂本龍馬ではないですが、「やっぱり世界は広い」ということを強く感じました。観 光目的ではなかったので、コアラにもカンガルーにも会えませんでしたが、その分多くの情熱ある異国の仲間たちに会うことができたのが 何よりの財産・経験になったと思います。

 最後に、法科大学院時代から私を支え、応援し、今回豪州にも誘って下さった 大阪大学の福井康太先生に、心から感謝申し上げたいと思います。

以 上