イシャシャキの思い出 | すた・ばにら

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2019/11/29にYahoo!ブログ「すた・ばにら」より移植処理しました。

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この記事タイトルを見て何のことかすぐ分かるって人は、県内の一部の方くらいのものかなぁ。県内でも
知らない、聞いたことがないって人の方が多いって思うし。

3月の中旬から下旬にかけて暖かくなってくると、山のどこからともなく異様な匂いが漂ってきます。
形容のしようがないけど、一風変わった匂いで、子供の頃から正体が何かとても気になっていました。


去年か一昨年、永年温めてきた疑問を問うたら母がこう答えました。

「それは『イシャシャキ』の花の匂いやね。」

何でも山に自生する低木らしく、春先に小さな花をつけてそれが匂うらしいのです。花が匂うと言っても
花が咲き乱れる春にはまだ少し早い時期、遠目には山にそれらしき花を見つけることはできません。

それにも増して不思議に思うのは、この「イシャシャキ」という聞き慣れない名称です。どう思っても
標準語とは思えず、地元の言葉らしい気がします。やはり去年のこと、ネットで検索して調べた結果、
「ヒサカキ」の山口方言であるらしいことが判明しました。

「Wikipedia - ヒサカキ」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B5%E3%82%AB%E3%82%AD

これは冒頭に貼っている写真と一致するのですが、ホントに小さい花です。また、ヒサカキの木自体は
とっても地味で、見たところ何処にでもありそうな感じです。気をつけて見なければ、花があることも
見逃してしまいそうです。

何度も「異様な匂い」と書きましたが、実際、私はこの匂いを形容する的確な言葉を思いつきません。
Wikipedia には「都市ガス」や「タクワン」に似ていると書いてありますが、まあ確かに近い感じは
あるにしろ、どうにも「イシャシャキの匂い」としか言いようがないのが本当のところです。


今日はお彼岸。我が家でも家から少し離れたところにあるお墓へ参りに行きました。そして私の中では
お彼岸の墓参とイシャシャキの花の香りは、とっても密接な関係にある
んです。

子供の頃、まだ私が幼稚園くらいでしょうか。よく母方の家に遊びに行っていました。お彼岸の墓参も
必ず同行していました。暫く山道を歩くのですが、そのとき必ずあの正体不明な匂いがしていました。
花が咲くのは春の彼岸頃で、ちょうど墓参のときと重なります。私はあの匂いの正体が分からず、また
誰かに尋ねるということもしませんでした。山ってこんな匂いなんだろう位に思っていたのです。


今日墓参から戻り、イシャシャキの正体をぜひ確認したいと思ってデジカメ持参で裏山に入りました。
じっくり探そうとすると、なかなか見つかりませんね。送鉄塔のある索道を伝ってどんどん奧に入り、
割と日のよく当たる場所で遂に見つけることができました。

高さは1~2m程度の低木で、淡い白~薄緑色で1センチにも満たない小さな花を沢山つけています。
葉と似た色をしているので、遠くから見ると花が咲いていることに気付きません。

鼻を近づけると、確かに弱い香りがしてきました。そして今日みたいに天気がよく風も穏やかな日には
花が大きく開くせいか、かなり遠くまで独特な芳香を発散させるようです。夕方帰宅し、車から降りて
山際にある家に向かって歩くとき、フワッと香って来るのです。風の弱い日は匂いも強烈です。


イシャシャキの花の香りを嗅ぐと、春のお彼岸に墓参りしていた子供の頃が思い出されます。今よりも
ずっとのどかで、時間がゆっくり流れていた古き良き時代が頭を巡ります。その香りは決して上品とは
言えず、長く嗅いでいると頭が痛くなると言う人もありそうな、とにかく一種独特な香りです。

環境が変わり、時代は流れ、自分も大きくなってしまった中で、昔と変わらず独特な芳香を放ち続ける
イシャシャキの木に、何とも言えない懐かしさを感じてしまう
のでした。


皆さんのお住まいの近くにも、ヒサカキの木ってあるのでしょうか?
そして風の弱い今頃の時期には、周囲にあの独特な芳香を放ち続けているのでしょうか?