博士と狂人 | 沸点36℃

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他愛のない日常と歴史散策、主観

2021年3月20日「博士と狂人」鑑賞



世界最大の英語辞典「オックスフォード英語辞典」誕生に隠された真実の物語を描く
全米で大反響を呼んだサイモン・ウィンチェスター原作のノンフィクション「博士と狂人ー世界最高の辞書OEDの誕生秘話」の映画化


原作は孤高の学者と殺人犯をめぐる実話をベースにしたノンフィクションベストセラーで、初版発行までに70年以上の歳月を費やした世界最高峰と称されるオックスフォード英語辞典(OED)の礎を築いたのは学者と殺人犯だったという内容 


大英帝国の威信をかけた辞書編纂に、途方もなく時間がかかるその事業には、博士号はないけれど独学の知識を武器に挑んだスコットランド人マレー博士(メル・ギブソン)


エール大学医学部卒の軍医が南北戦争で精神を病み、殺人者となったアメリカ人マイナー(ショーン・ペン)


上流階級生まれで知識人のマイナーが戦争で精神を病んでいくんだけど、普通の常識ある人間がここまで壊れてしまう戦争の悲惨さに考えさせられてしまいました

とにかくショーン・ペンの演技が凄まじく、同時に砕けていく繊細な心を美しいとさえ思わせるような渾身の演技で、逆に観ていて胸やけしそうなくらいの熱演、まさに怪演でした


辞書編纂を通じ、立場を超えて取り組んでいく二人の交流と功績が描かれていて、その過程にロマンスも絡められ、見応えがありました

狂人の罪と赦し、未亡人との愛と葛藤、博士との友情、保護施設の陰謀、博士の家族との物語に学派争い…

また、偉大な辞書の編纂は格調高く、当時のイギリスが大国だった証しとプライドを感じました


そして名脇役
スティーヴ・クーガンやエディ・マーサンにホッとします


マーサンは戦火の馬やバイスにも出てたんですね


権威により排除されそうになる異能の二人を繋ぐ「言葉」
言葉が人の心を救い、人と人を繋ぐんだなと改めて思いました

静かな演技のメル・ギブソンと、正気と狂気を見事使い分け演じたショーン・ペンのがっぷり四つの演技、ぶつけ合う熱演はまさに圧巻です


エリートという点では二人とも博士であり、何かに執着する点では二人とも狂人ですが、異次元の二人が共鳴していく世界観は現実離れしていて神秘的で、二人の友情とこの物語のもうひとつのテーマ「赦し」にも心揺さぶられました

時の内務大臣ウィストン・チャーチルの采配がよかったです


2020年10月16日日本公開

映画「博士と狂人」

監督/ファラド・サフィニア(P.B.シェムラン名義)

脚本/ドット・コマーニキ、P.B.シェムラン

原作/サイモン・ウィンチェスター(博士と狂人ー世界最高の辞書OEDの誕生秘話)

出演/メル・ギブソン、ショーン・ペン、他

上映時間/124分




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