J&F 【ジェントルマンへの道のり】1880年2月の始まり | Palace St. Grails

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ようこそ、「パレス サン・グレイル」へ。
19世紀ロンドン、二人の鍊金術師ジョンとフレデリックが生み出した「香り」が、時間と空間を超えて、数々の物語とともに蘇ります。
「世界基準で美しさと豊かさの循環を目指す」という当時から持ち続ける信念とともに・・・

1880年2月7日

 

香水の注文分が全部できた。

 

2月からは大学の勉強にもやっと集中できると思ってて

なんとか薬学の教授に個人的に約束を取り付けて

溜まりに溜まっていた質問をしようと思っていたら

 

「ジョン、明日から昼食会だ。二日間続くぞ。」

 

とまたいつものように突然フレデリックが言い出した。

夕食前の穏やか、なはずのひととき。

 

 

 

 

「やだよ。なんで僕が行かなきゃいけないんだよ。なんの会だよ!」

「グランノエルの決済の話と、今後のサロンの経営の話だ。婦人会と、協力を頼んだレディたちが来る」

「僕やっと、薬学の教授に個人面談取り付けたのに!」

「だめだ、サロンが先だ。グランノエルで手に入れた情報もあとで話し合うことになってる。シガールームも絡むんだぞ」

「でも、僕1月はまともに勉強できなかったから、今月は外せないんだよ!」

 

温厚な僕も、今回は1月に実験室に缶詰だったイライラが爆発した。
 

 

 

「ノー!行かない!」

リビングのテーブルに植物図鑑を叩きつけて、部屋を出ようとした

 

 

 

「なんだ、その態度は」

「そっちこそなんでいつも突然なんだよ!」

「経営の方が大事だ。今年一年の方針が決まるんだぞ」

「知るかよ!香水の件だって突然で、僕の1月が全部潰れたじゃないか!フレッドこそどこ行ってたんだよ!居なくなったじゃんか!」

 

 

それから30分。

僕らは少し息切れが続いて

リビングの机と椅子の位置が大幅に変わった。

 

 

その夜は、フレッドと一切口を聞かないことにして

植物図鑑を見ながら気分を落ち着かせることにした。

 

 

翌日、結局僕は大学を早退して

昼には仏頂面で馬車に揺られてサロンに向かうことになる。

 

そうそう。

植物図鑑に挟んだはずの僕の手紙が消えていた。

ありえない。

 

 

そして僕は食事会はキライなんだ。

理由は今はいわないでおく。