1880年2月7日
香水の注文分が全部できた。
2月からは大学の勉強にもやっと集中できると思ってて
なんとか薬学の教授に個人的に約束を取り付けて
溜まりに溜まっていた質問をしようと思っていたら
「ジョン、明日から昼食会だ。二日間続くぞ。」
とまたいつものように突然フレデリックが言い出した。
夕食前の穏やか、なはずのひととき。
「やだよ。なんで僕が行かなきゃいけないんだよ。なんの会だよ!」
「グランノエルの決済の話と、今後のサロンの経営の話だ。婦人会と、協力を頼んだレディたちが来る」
「僕やっと、薬学の教授に個人面談取り付けたのに!」
「だめだ、サロンが先だ。グランノエルで手に入れた情報もあとで話し合うことになってる。シガールームも絡むんだぞ」
「でも、僕1月はまともに勉強できなかったから、今月は外せないんだよ!」
温厚な僕も、今回は1月に実験室に缶詰だったイライラが爆発した。
「ノー!行かない!」
リビングのテーブルに植物図鑑を叩きつけて、部屋を出ようとした
「なんだ、その態度は」
「そっちこそなんでいつも突然なんだよ!」
「経営の方が大事だ。今年一年の方針が決まるんだぞ」
「知るかよ!香水の件だって突然で、僕の1月が全部潰れたじゃないか!フレッドこそどこ行ってたんだよ!居なくなったじゃんか!」
それから30分。
僕らは少し息切れが続いて
リビングの机と椅子の位置が大幅に変わった。
その夜は、フレッドと一切口を聞かないことにして
植物図鑑を見ながら気分を落ち着かせることにした。
翌日、結局僕は大学を早退して
昼には仏頂面で馬車に揺られてサロンに向かうことになる。
そうそう。
植物図鑑に挟んだはずの僕の手紙が消えていた。
ありえない。
そして僕は食事会はキライなんだ。
理由は今はいわないでおく。