ある駅の改札へ向う途中。

一人の若い女性がエスカレーターで俺の前に立った。

ミニスカートに高いヒール。

エスカレーターを降りたところで前に出た。

次の瞬間。

『カツカツカツっ!』

高いヒールで見事に地面を捉え
右肩を入れられる形で抜き返された。

『抜き返されたっ⁈』

ミニスカートに高いヒール。

見くびった。完全に俺のミスだ。
見た目につまらない偏見をもち
抜いたというだけで安心をしてしまったのだ。

『でもまだ間に合う。』

俺は自分の心と足に喝を入れ直し速度をあげた。

肩が並んだ。

その間、わすがコンマ数秒。

並んだ瞬間に二人の間になんとも言えない緊張感が走る。

二人の間に改めてゴングがならされた。

改札までおよそ20m。

お互いつかず離れず、確実にバトルをしているのだが、回りの人々には
『いや、別に争ってなんかいませんよ。』的な雰囲気を出しつつ攻防は続く。

改札まであと10m。

若干だが、やはり男である俺の方が有利か、拮抗が少しずつだが崩れはじめた。

改札まであと5m。

リードはしているものの、あの出足を見せつけた脚力だ。
もう俺に油断はない。
一気にケリをつけるつもりでラストスパートをかけようとした、

次の瞬間‼

彼女はコースをカツンっと右斜め45°に変え、改札へのロードをそれ始めた。

『えっ?』

驚く俺を尻目に彼女は進む。


『ダメだ!そっちは改札じゃない!』

『諦めたのか⁈俺の脚力にはついていけないと諦めたのか⁈』

『君はそんなやわな奴だったのか?』

『エスカレーターで俺を抜き返したときのあの気持ちはどうしたっ⁈』

心の中で松岡修造ばりに魂の叫びを繰り返すも彼女の脚は微塵も緩まなかった。


『なぜだ!なぜなんだ⁈』


どうしても納得がいかず、改札を抜けたあと一度だけ振り返った。


そこには、



彼氏に可愛く謝りながら、遅刻を許してもらう彼女の姿があった…。





そっちかいっ‼



◇Sunny Side Walker
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