前の家 | .

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一昨年の12月に今のマンションに引っ越してきた。ここはもともと持ち家で、小さい時から小学校高学年まで住んでいた家なので思い出も多い。駅から徒歩数歩で着くし、利便性は文句無しと言っていい。
でも最近前住んでいたマンションが恋しくなる。周りには人工的ではあったけど自然が多かった。真横は原っぱで、でっかいハルニレの森もあった。冬の朝は自室の出窓から日の出が見えた。北向きだったので夕暮れは最高に綺麗な部屋だった。暇な時はカメラをかついでよく散歩した。多少は不便でも郊外のあの家は素晴らしかった。もう人に売ってしまったので、あの家から見える風景には二度と会えない。


特に秋から冬にかけて家の周りが荒涼とした風景になるのが好きだった。初雪の朝はその静けさで「あぁ降ったな」とわかった。大抵初雪の日は部屋中が冷え込んだ匂いがして、寝たまま見える窓の外はグレーみたいな、例えるのが難しい色になっている。
「音の真空状態」とはあの日の事を言うんだと思う。