ここでは、日銀が利上げできない真の理由について解説する。

  長々とした説明で飽きてしまうかも知れない。本当のことを知りたい人だけが読みこなせるだろう。



  世の中に出回っているお金を発行(信用創造)しているのは政府や中央銀行ではなく民間銀行である。
  普通の人や企業がお金を借りる相手は民間銀行であり、誰かが借金するときに銀行はお金を貸すワケであるが、このときに貸すお金が信用創造で創られる貨幣なのである。

  つまり 信用創造は借金によってなされる
  だから 誰も借金しないとお金は生まれない
  そして 皆んなが 借金を返してしまうとお金は世の中から消えてなくなってしまう
  銀行からの借金と信用創造はイコールなのだ

  このお金は 銀行が自分で持っているお金ではなく、ゴールドスミスが発行した手元にない 9割の(幻の)ゴールドの預り証に相当するものである。
  誰かが借金した瞬間に、銀行は無からお金を創って それを借金した人(企業)の口座に書き込むだけである。
  まさに 口座に書き込むだけなので、このお金(信用創造)は 万年筆マネーとも呼ばれる。

  借りた人は借用書を差しだし、その借用書に書かれた契約に従って一定の利子をつけて返さなくてはならない
  この借用書(契約が 信用創造の信用の役目を果たしている。借りた人が必ずちゃんと返してくれるハズだと信じれることが信用となっているのである。


  信用創造は借金であり、借金には かならず利子がついている

  つまり「お金が生まれるときには かならず利子がついている

  このことが超々重要であり、これこそが近代資本主義経済の基本原理 なのだ

  約束を守るハズだと考えることが信用することであり、そして本当に返してくれるのか その能力があるのか 信用していいのか、それを判定するために銀行が行うのが信用調査であり、お金を貸すための前提となる信用を与える(信用することを与信という


  ゴールドスミスは 1割の実物ゴールドを元手に 9割の信用創造を勝手に行っていたが、では 現代の銀行で実物ゴールドに相当するものは何なのか

  それは法定準備金と言われるもので、各銀行が中央銀行の当座預金口座に預けてあるお金のことである。


  中央銀行は(民間)銀行の銀行なのだから、企業や個人が銀行に口座を持っているのと同じように 民間銀行は中央銀行に口座を持っていて、これが当座預金口座と呼ばれるものである。


  取り付け騒ぎのように 突然たくさんの引き出し要求があるときには、このお金を担保にして日銀が助けてくれる。というか いざというときに日銀に助けてもらうために、各銀行は法定準備金を預けておかなくてはならない

  その準備率は変動するものの だいたいは1%なので、民間銀行は その100倍のお金を貸す(創る)ことができる


  したがって原理的には この準備率を変えることでも世の中のお金の流通量をコントロールすることができるが、これでは世の中の利子は変わらない。

「資本主義経済の基本である利子をコントロールすることの方が より本質的なので、中央銀行の金融政策は もっぱら政策金利の調節によってなされる


  では その法定準備金を銀行はどうやって集めたのか?  その元になるのが、一般国民が銀行に預けた預金だったのである。

  民間銀行はその預金を中央銀行の当座預金口座に預けて、これを担保としてその100倍までのお金を貸して(創って)よいと許可されている


  だから 国民から預かった預金をそのまま企業に貸して、その利息差で儲けていたワケでなく、その100倍ものお金を貸せた(創っていた)のである。

  そして 貸出したお金の99%の元手はかかっていないの(無から生みだしたのでゼロ)だから金利が上がると銀行はとても儲かることがよく分かるだろう。


  これが、現代の 中央銀行を司令塔とする銀行システムである。

  かつては 中央銀行が存在していない時代もあったのだが、DSが中央銀行制度を強力に推進し 世界中の中央銀行を支配下に置くことで 世界中の金融の在り方をコントロールできるようになった


  これが DSの圧倒的なパワーの源泉であり、経済の血液とも称される金融を支配することで 資本主義経済全体を意のままにコントロールすることが可能になった


  だから 彼らの力を持ってすれば、巨大なバブルを創って破裂させることも インフレを起こすことも 簡単にできるというワケだ。

  ただし、それを大衆に悟られずに 自然に起きた様に装うことの方が はるかに難しい


  アメリカの歴史は この中央銀行の設立をめぐる DSとナショナリストたちの闘いの歴史でもあったのだが、1913年にFRBができたことで その闘いはDSの勝利に終わった


  FRB理事は 大統領によって指名され 上院で承認されて決まるのだが、FRBは 政府の子会社ではなく FRBの株主は DSであり、実質的には DSの完全な支配下にある


  これによって アメリカの支配者が多数派のWASP(イギリスから移民したキリスト教徒の白人)から少数派のユダヤ人(国際金融資本家)に変わり、このときが DSが世界の支配者になった瞬間であった。


  銀行とは 自己資金だけで高利貸しを営むサラ金とは根本的に違い、安い金利で集めた手持ちの資金をより高い金利で貸してその利ザヤを取るというような 単純なビジネスモデルではない


  銀行(バンク)とは、このようにして無からお金を生みだせる 非常に特別な存在なのだ

  これは サラ金よりも詐欺的ではないか。 いや サラ金は詐欺ではないので、これはサラ金に失礼な言い方だった。

  バンクとノンバンクの違いは信用創造できるかどうかなのである。



  戦後間もない頃は 企業の資金需要に対してこの準備金が不十分だったため、中央銀行からお金を借りてそれを貸出していた

  どれだけ借りれるかは おそらく預金量に比例していて、そのために預金集め競争をしていたのだろう。


  このお金を貸すときの金利が 公定歩合と呼ばれていたものである。

  民間銀行は 当然この公定歩合より高い金利で企業に貸出すことになるため、日銀はこの利率を変更することで銀行の貸出し金利を調節することができた。


  この公定歩合が当時の政策金利であり、政策金利が各銀行の貸出し金利の基準になるので、これによって国内に流通する貨幣の量をコントロールしていた

  この時代は預金金利も公定歩合に連動していたので、預金の金利はどの銀行に預けてもまったく同じであった。


  そして一般国民からの預金が増え、つまり国民が豊かになり、日銀からお金を借りなくてもよくなった


  この場合 日銀からお金を借りるよりも預金の金利の方が安いので、民間銀行は預金による準備金の(100倍までの)範囲内で許されるギリギリの量まで貸し出そうとする

  しかし毎日決められた時間に 貸出し量が準備金の範囲内に収まっているかどうかチェックされるので、この時間までに準備金を法定内に収まるように戻せない場合 お金が余った他の銀行から1日だけ借りて戻していた。


  これをサポートする市場が その1で言及した短期インターバンキング市場であり、そのときの金利を無担保コール翌日物レートと呼ぶ。

  そして どうしても他行から借りれない場合は 日銀から公定歩合で借りることになる。

  このとき借りるお金の量は、かつての貸出し資金のときと比べれば はるかに少ない。


  公定歩合がコールレートの上限となるため、無担保コールレートは公定歩合より若干低い値になる。

  したがって 日銀は公定歩合を変化させることで無担保コールレートの値を間接的にコントロールすることができる

  この時代の政策金利は、このようにして誘導された無担保コール翌日物レートのことを指していた。


  日銀法によって決められた日銀の役割は、国内に流通する通貨の量をコントロールすることによってインフレ率を(2%くらいの)適正な水準に保つことであり、これを行うもっとも効果的な方法 今まで述べてきた 「政策金利による市場金利の調節である



  そして、この金利調節が上手く機能しないときに限って 一時的に少量の国債を売り買いして通貨流通量を調整するのが公開市場操作(オペレーション)と言われるものであり、これは あくまでも補助的なものに位置づけられていた。


  金融緩和とか金融引き締めと言われるのが このことであり、これは国債を売り買いすることで 民間銀行の当座預金量(法定準備金)を変化させて貸出し可能量を増減させ それによって市場の貨幣量を調節する仕組みである。


(国債を日銀が買い入れる)書いオペ国債を買って その代金を売ってくれた銀行の当座預金に入れて法定準備金を増やすことで 銀行の貸出し可能額が増えて、その結果 企業が借りてくれれば通貨の流通量が増える金融緩和)という仕組みである。

  売りオペレーション、この逆(金融引き締め)である。


  これは 前述した通り 非主流非伝統的な方法であり本来は あくまでも緊急時に一時的に少量の国債を売り買いすることしか想定されていなかった

  それは元々、国債の発行が少額に留まるように設計されていたことの裏返しでもある。


  ところが 日本では2001年から欧米ではリーマンショック以降、この手法の方がメインに使われるようになってしまった。


  本来「金融政策のメインは政策金利調節」 であり サブが公開市場操作なのだが、これが逆転して金融緩和がメインになったものを 量的緩和政策と呼ぶ

  これは、各国で国債が大量に発行されるようになったため、それに対応して取られるようになった金融政策と言える。


  日銀が各銀行から国債を買い上げるときの資金無から生みだしたもので、銀行の当座預金口座にただ書き込むだけである。

  公定歩合で銀行に元手資金を貸していたときも 同じように信用創造を利用して無から生みだしていた


  つまり、日銀は 民間銀行に対して信用創造を行い民間銀行は 企業と国民と政府に対して信用創造を行っているという構図である。

  しかも中央銀行が行う信用創造に民間銀行の法定準備金に相当するものがないので、「完全に」 無からお金を生みだすことができ、だから それは無制限なのだ。

  経済の実務上では無理であっても、原理上はいくらでも 「無限に国債を買い続けることができるということだ。



  景気が悪くなると 民間の(投資のための)資金需要が減り、さらに経済活動を抑制してしまうという悪循環ができてしまう

  それに対して中央銀行は まず政策金利を下げて対応するのだが、金利下限があり 原則として 0%未満には下げられない

  0%に下げても景気が回復しない場合は、次の手法として 政府が国債を発行し、中央銀行が買いオペを行うことになる。


  政府が国債を発行するのは、悪循環を断つために 一時的に政府が民間の代わりに需要を創りだして景気を改善させ、その後に民間需要が増大して経済が回復する(好景気になる)のを待つためである。


  世の中のお金を創りだすためには 企業が投資のために借金するのが資本主義経済の本来の仕組みであり、企業は(借金による)投資で 「技術革新を起こして剰余価値を生みだし それで借金したときの利子を返す ことができる

  これが 経済成長するということである。


  その代わりに政府が一時的に借金してお金を創りだすのが 国債発行という方法である。


  建設国債の場合はインフラ整備に使われ、それは税収の増加に結びつくの、それで借金の利子を返すことができる

  しかし ただ単に国民にお金を配るだけの赤字国債では税収を増大させることは難しく、利子を払うためには増税するしかないのだが、赤字国債を発行するときは景気が悪いときなので、結局増税もできず 利子を返すことができなくなる


  つまり、

  企業は利子を返せるアテのあるときにしか借金しないのに対し、

  政府は利子を返せるアテがなくとも借金してしまう


  だから 赤字国債の発行は原則として禁じられているのであり、例外的に発行するとしても緊急時に少量だけと限定し、それが上手くいけば すぐに国債発行を止めなくてはならないのだ。


  一方で 中央銀行は、投資(需要)のために企業が銀行からお金を借りやすくするために 国債を買い入れて民間銀行からの貸出しを促す


  これも上手くいけばすぐに国債を売って 金融引き締めをしておかなくてはならない

  ずるずると持ち続けると、後で述べるように 金利の調節機能が働かなくなってしまうからだ。


  そして これでも上手くいかなければ 甘んじて不況を受け入れるしかないのだが、

  受け入れたくない国民は 政治家に圧力をかけ国債を発行し続けさせ、

  その政治家は 中央銀行に圧力をかけ国債を買い続け(お金を増やし続け)させることになる。


  国債をどんどん発行し続ければ 債券市場はこれを受け入れにくくなるので国債の金利を高くしなくてはならないのだが、その国債を中央銀行に買い取って(間接的に引き受けて)もらえば 金利を安いままで維持できる


  これが量的緩和政策であり、この政策を採用している間は 政策金利を上げるために当座預金残高の利率を上げるしかないという異常な事態になっている(後述)


  金融政策も財政政策も上手くいかなかったからそれが積み上がった結果が今の状況であり、これが民主主義国家の実状なのである。

  中央銀行が政府から独立しているの本来このようなことを避けるためなのだが、結局は 政府(=大多数の国民)の言いなりになるしかないのだ。



  以上のことを踏まえれば、ここまで赤字国債を発行し続けてきたことが どれほど異常なことなのか理解できるだろう。

  国債を発行するのが当たり前と思っている政治家や国民(自分)が どれほど愚かなのか理解できただろうか?


  不況になったときに一時的に政府が支出を増やし(財政出動し)有効需要を創りだすというのは ケインズ経済学の考え方であり、それを基礎にしたMMT(現代貨幣理論)、財政赤字の場合でもインフレにならない範囲であれば政府は国債を発行して積極的に支出すべきと説明する。


  この理論を持ちだして、日本ではデフレが続きインフレになっていないので もっとどんどん国債を発行すべきだと主張する人たちがいる。

  しかし、過剰な国債発行とインフレは同時に起きるワケではなく、過剰な国債発行の歪みが溜まって限界に達した後に」 インフレが起こると考えるベキだろう。


  それは、中央銀行の量的緩和政策が市場金利の低下を引き起こして、インフレの発生を無理ヤリ抑え込んで 延命させているからだ。

  

  そう考えれば、2年間で2%(のインフレ)を実現するという公約が果たせなかった黒田異次元緩和政策は その時点で止めなければならなかったのであり、それを10年間も続けてしまった異常さが分かるだろう。

 

  この量的緩和を10年も続けた結果、民間銀行の当座預金口座の残高はとんでもない額に膨らんでしまった

  この当座預金口座にあるお金は 民間銀行が貸出す(信用創造する)ための法定準備金であるから、銀行は超莫大な貨幣創造能力を手にしたことになる。


  しかし その100倍ものお金を貸出せる相手がいるワケはなく、現在は 集めた預金分の金額さえも貸出せていない。

  つまり 潜在的な貸出し能力の100分の1以下の量しか貸出せていない

  これは、国債として発行したお金国民の資産となって、この預金量を押し上げているためでもある。


  日銀の買いオペによる 節操のない量的金融緩和政策は、民間銀行の能力を超える準備金の増加を引き起こすと共に、債券市場から莫大な量の国債を買い上げる(吸い上げる)ことで 本来自由であるベき債券市場の姿を歪めた

  これではとても 健全な資本主義とは呼べず、大きな問題を孕はらんだものとなり果ててしまった


  民間銀行のビジネスモデルはお金を貸して利子を得ることであるから、無理やりにでも誰かにお金を貸そうとする

  そのお金は モノやサービスを生産する実体経済に収まり切らず、溢れた分は(虚構の)金融市場に向かうことになる。


  そのために今、史上最大の株バブル不動産バブルが発生している。これは、1991年に日本のバブルが弾ける直前とまったく同じ状況ではないか。


  あのときは 経済成長がピークに達したときのバブルであり、今は 経済が衰退し続けている最中のバブルなので、世間の雰囲気はずいぶん違うようだが、起きていることは 金あまりというまったく同じ現象である


  あのときは バブルが弾けてあんなにも後悔したのに、30年も経てば 皆んなすっかり忘れてしまっている

  今度のバブルは弾けないとでも言うのか? 

  人間はいつも同じことを繰り返してしまう存在なのだ。


  バブルその崩壊、そして 大インフレ

  これらは すべて不健全な資本主義の歪みが溜まった後に 時間差を持って引き起こされる異常事態である。

  日本のバブル崩壊やリーマンショックで起きたことは バブルの発生と崩壊だけだったが、今回はそれに大インフレまで加わることになる。


  資本主義は、いつもこのように不健全なものだったのだろうか? 

  それとも資本主義とはこの不健全さも包含するものなのか

  この不健全さは 資本主義のせいでなく、それを操る人間のせいなのか

  


  銀行の当座預金口座残高が有り余っているのだから、インターバンク市場も無担保コールレートも不要になる。

  そうなると市場金利を操作する手段としては、この当座預金(の一部)に金利をつけることしかなくなる


  そうなれば 日銀が金利を払ってくれるので、企業に貸出すときの金利は これ以上のものになる

  これが、過去の公定歩合に代わって 現在の政策金利を決めている方法である。

  

  ついこの間まで 日本の政策金利はマイナス0.1%であると言われていたが、これはゴマカシである。

  法定準備金としての当座預金には 元々金利がついていなかったが、量的緩和により当座預金が溢れるほどになってからは マイナス金利の部分と金利の部分とプラス金利の部分の三つに分かれることになった。


  マイナス金利というのは、このマイナスの部分だけを取り上げたものである。

  そして 買いオペで増えた余分な当座預金には金利がついていて、それは 0.1%であり、こちらの方が マイナス部分よりはるかに多いハズだ。

  7月31日の政策決定会合で政策金利が 0.1%から0.25%に引き上げられたのは、この有ゆう金利部分の当座預金金利を引き上げたということなのである。


  政策金利がこのようになってしまうと、金利を上げるためには 民間銀行により多くのお金を払わなくてはならなくなる

  このお金は信用創造によっていくらでも生みだせるとはいえ、会計上ではどんどん日銀の出費が増えて、日銀の財務状況が悪くなっていく


  日銀の場合 国債を600兆円近く抱えているので、それを買った分の当座預金に金利をつけざるを得なく、政策金利を1%にするためには 1年間で6兆円の支払いが必要になる

  そのために 1%にまで金利を上げてしまえば、1年で債務超過に陥ると言われている。

  だから 金利を上げるとしても、債務超過にならないように、せいぜい 0.50.75%まで上げるのがやっとだろう(*)


  これは書いオペによって銀行の法定準備金が増えて貸出し余力も増えたにも関わらず、実際の貸出しはそこまで増やせないために 準備金がダブついてしまったためである。

  準備金がダブつけば、もう公定歩合ではどうにもできない

  だから 市場公開操作は、準備金がダブつかないように あくまでも緊急時に一時的に少量だけ 行うものだったのである。


  モノやサービスを生みだす実体経済での貸出し量が増えないなら 買いオペをしても何の意味もない(実体経済が良くならない)こと、つまり 今までやってきたことには意味がなかったことが、理解できただろうか?


  そして、実体経済ではなく金融経済市場に過剰なお金が流れ込むことでバブルを発生させてしまったことが、理解できただろうか?

  

  債務超過になってしまえば日銀の中央銀行としての信用は著しく低下するので、このため それ以上金利を上げることができない

  これが、(大予言シリーズの中で言っていた)日銀が利上げできない真の理由である。


  このために 日米の金利差が大きくなり、円安になりインフレになってしまったのだ。


  日銀が利上げできない(しない方がいい)のは、

  利上げすると やっとデフレを脱して成長過程に戻れそうになりつつある日本経済の逆風になるからだ、もしくは 

  利上げすると 長期金利も上がり、その結果 国債を発行する際の金利が上がってしまい 国債が発行しにくくなるからだ、と 説明されている。


  確かに そのような側面もあるが、もっとも大きく 決定的な 本当の理由は ここにあったのだ。


  これが、私が 大インフレが起こるが 日銀は何もできない と言っていたワケである。

  こんな酷いことになっていれば、大インフレが起こることは避けられないだろう。

  膨大に膨れ上がった国債残高を減らすにはこれしか方法がないのだ。


  そして、おそらく欧米でも(中央銀行の債務増加という)事情は同じだと思われる。

  欧米より日本の方が 中央銀行の国債保有量は圧倒的に多いが欧米の5%ほどの金利もまた 日本と比べれば圧倒的と言える

  その欧米では これだけ政策金利を上げているので、すでに債務超過になっていたとしても すぐに破綻するワケではないのだろう。


  とすれば、それを 一時的な問題としてこれから処理するということなのではないか?

  では、それは一体 どんな処理なのか?

  それが、大暴落と大インフレという処理なのではないか?


  日欧米の中央銀行の多くが すでに債務超過になっている なる直前にあるとすれば、それは 今まで経験したことのないとんでもない事態であり、それが どれだけ異常なことなのか理解できるだろう。

  これが「中央銀行バブル」 の正体である。


  さらに もう一つの理由として、日銀が利上げできないのは このバブルを膨らませるための資金源として DSに利用されていた(命じられている)ためであろう。

  今までも アメリカが株式市場に資金供給できないときは、いつも ヨーロッパか日本の低金利の資金が キャリートレードという形で利用されてきたようだ。



  大恐慌の後 欧米の金利は再び下がるだろうが、同時にインフレも再燃するので 政策金利は依然として日本よりは高いままであろう。

  こうしてある程度の金利差が継続するので日本は円安が続き、輸入物価の高騰によって欧米よりさらにインフレになりやすい状況が続く。

  この金利差は もはや金融政策の問題ではなく、日本経済のファンダメンタル(国力)によると言っていいだろう。


  日本の生産年齢人口が減りだしたのは1995年からであり、この年から需要減少によるデフレが始まっている

  1995年には8700万人だったものが 2023年には7400万人と なんと1300万人も減ってしまった

  これは 毎年50万人ずつ減少したということであり、これからしばらく先も 毎年50万人ずつ減っていくということである。


  生産年齢人口(15〜65才)の減少には、労働力の減少による生産の低下と 活発な購買者の減少による需要の低下という二つの側面があるが、需要減少の影響の方が大きい


  産業革命以後、経済成長の決め手は 生産でなく需要の大きさにシフトした。

  したがって 日本の需要減少は致命的なものなのだ。

  人口ボーナスがいかに経済を成長させ人口オーナスがいかに経済を停滞させるか。

  この要因は 経済にとってたまたまなどと言うものでなく、決定的なものである。


  いずれの国においても 著しい経済成長は、衣食住を満たそうとする若年者人口の増大(人口ボーナスによってなされた

  一方、高齢化を伴う少子化(人口オーナス)による需要減少の対策は とても難しい


  現在の日本の経済は 製造拠点の海外移転によって 外需(輸出)でなく内需が主たるものになっており、この内需の担い手である生産年齢人口が減っているのだから 経済成長できないのは当然なのだ。


  労働力の減少に対しては 高齢者や女性の労働参加率を高めたものの それでもまだまだ労働人口は足りないので、好むと好まざるに関わらず これから移民をもっと増やさなくてはならない

  2017年には 外国人労働者とその家族を合わせて250万人ほどの規模であったが、今後間違いなく この人数はどんどん増えていく


  毎年減っていく50万人の生産年齢人口を移民で補うためには、同じだけの人数の移民を招き入れなくてはならず、その家族も入れれば膨大な数になってしまう。

  現実的に そんなことは無理だと思われるので、人口問題の解決策はないということだ。


  つまり 今後 移民の数が増えて日本社会の単一性が損なわれ 大いに混乱するにも関わらず人口問題が完全に解決することはない

  一方ヨーロッパの国々やアメリカでは 莫大な数の移民により人口が増加しているが、社会の混乱は すでにはるかに酷いものである。

  一体 どっちの方がマシだと言えるのか?


  また 高齢者が労働力になっても、生産年齢の人たちと比べると 購買者としての需要はあまり増えない

  需要を増やす点では 移民労働者とその家族の寄与が大きいだろうが、そのための公共サービスや福祉の費用負担も大きくなるため、国全体の経済にとってどれだけ有用なのかを判定するのは難しい。


  そして 女性の労働参加率の上昇により 女性の権利意識が高まり、さらに少子化が進行するという循環も起きている。

  これは 日欧米韓国中国でも共通の現象であり、欧米で人口が増えているのは ひとえに移民の増加によるものである。

  人口ボーナスの果実をいつまでも味わい続けることはできないのだ。


  また 経済成長のためには国外の企業による(日本に対する)対内直接投資も必要なのだが、この労働力不足と日本人の英語力の弱さにより、これもなかなか難しい

  現在 日本に対する対内直接投資は ほぼ世界最下位である。

  国内企業による対内投資は海外に逃げて行ったにも関わらず、外国企業による対内投資は TSMCの熊本工場以外にはほとんど増えていない

  

  さらに 本来 不況のために倒産すべき企業を、低金利や補助金や不良債権に手ごころを加えたりすることで 無理ヤリ延命させてきたことも問題である。


  これらのゾンビ企業が 日本経済の足を引っ張っているのだ。

  ゾンビ企業などと酷い言葉を使ってしまったが、これらの企業の経営者には 人のよい優しい方もたくさんいるだろう。

  だがそれとこれとは別のことなのだ。


  これは日本人の優しさからでた政策であるが、それが資本主義経済システムに反することだと気づいていない。

  冷徹な経済の問題に 感情を持ち込んではいけないのだ。


資本主義経済を駆動するものは 利子の力による頑張り」 であり、「それが技術革新を生みだし 付加価値(剰余価値)を創りだしてきた

  この能力がなくなり頑張れなくなった企業は この経済システムから退場しなくてはならず、それを促すものが不況なのである。


  だから 不況によって競争力のなくなった企業が倒産するのは当たり前であって、このプロセスを阻害してはならないのだ。

  それを阻害してきたのが 共感性による感情に基づく日本の優しい政策であり、この間違い・この心性(日本人の共同体意識が 日本経済のファンダメンタルを低下させ続けてきた


  以上、日本が経済成長できない理由を説明してきた。

  もちろん、逆に経済成長の可能性を秘めた要因をいくつも上げることもできるだろう。

  しかし問題は どっちの数が多いかではなく、トータルとしてどちらの要因が強いのか ということである。

  私は、経済成長を阻害している要因の方が はるかに強く 優勢であると思っている。


  それを国債を大量に発行することでゴマカシ続けてきたのが この30年の本当の姿なのだ。

  つまり 借金で食いつないできただけなのだから、いつか破綻するのは当然のことである。


  国債を発行し それを中央銀行が買い入れる(中央銀行による国債の間接引き受け)ということ いかに麻薬的なやり方であるか、理解できただろうか?


  信用創造という打ち出の小槌システムが いかに危険と隣り合わせなものなのか、理解できただろうか?


  DS(ユダヤ人) いかに巧妙な経済システムを創り上げたのか、理解できただろうか?


  今までのやり方は延命効果しかない ただ嫌なことを先延ばししているだけのことであり、したがって いつか必ず破綻する

  それが 今まさに このときなのだ



  そもそも金融政策によってインフレ率をコントロールしようとするときの大前提は 経済が成長している ことであり、過熱した経済を冷やして インフレ率を2%ほどに下げるために政策金利を調整するのが中央銀行の仕事であった。


  原理的に、量的緩和政策をやって当座預金口座の準備金をジャブジャブにしているときに その準備金の金利を上げたところで、インフレを抑えることなどできやしないのだ。


  つまり、人口が減って 「経済が成長していないときに 中央銀行の政策によって(金融政策で)経済を成長させる(インフレ率を上げる)ことなど、はなっからできやしないのだ。

  そして同じく 人口減で 「経済が成長していないときに 政府がお金を使って(財政政策で)経済を成長させることもできないのだ。


  経済を成長させるエンジンは 唯一企業の力(革新力)だけであり、それは 国民の旺盛な需要によってのみ支えられる


  一時的に経済を成長させたように見えても それは幻であり、いつか必ず そのツケは払わさせられるのである。


  衣食住を満たすために頑張り その結果として成長するのが経済の正しい在り方であり、したがって人口ボーナスのときにだけ成長すべきなのだ。

  人口が減るときに経済成長しようとすれば、それは身の丈を超えた贅沢をするということであり、そんなことのために大事な地球資源を使うワケにはいかないだろう。


  衣食住を満たす以上の経済成長は不要であり害悪であるとさえ言えるだろう。

  人口が減りだしたときは 経済も縮小すべきであり、一人当たりのGDPが維持されれば十分なのだ。

  その認識を持てず それができなかったことが、ここ数十年の誤りだったのではないだろうか? そして それは国単位で経済を考えていたから起きたことだったのではないか?


  先進国と呼ばれている日欧米の国民たちは、贅沢に慣れきってしまい その贅沢を奪われることを恐れているだけではないのか?

  もちろん これは元々の国民の平均の話であり、元々の国民の中にも貧しい人たちはいるし、新たに移民してきた人たちの大半はそうではないだろう。


  人口構成が変わらずに人口が減るだけでも、国全体の経済は縮小していく。

  さらに 少子高齢化という人口構成の変化も伴っていれば、お世話される人が増えてお世話する人が減るということなので、一人当たりのGDPを維持することさえ難しいだろう。


  資本主義経済が適切に駆動されて皆んなが頑張り 技術革新を起こし続けることができれば、何とか一人当たりのGDPを維持できるというくらいのものではないだろうか?

  しかし 衣食住が足りてもなお 頑張り続ける意思の力は 一体どこから出てくるというのだろう?


  かつての私も そうだったのだが、皆んな 難しい経済のことは専門家に任せておけばいい、素人が口出しをしてはいけないと 考えているのではないか


  経済の実務は難しいだろうが、原理は限られていて、頑張れば何とかこんな具合に理解できる

  そして正しく理解できるなら、国民は政府(他者)に無理な要求をしなくなるだろう


  そうではないだろうか?  それは無理なことなんだろうか

  そんなことは無理に決まっているだろう、賢くて優越感に浸っているDSなら ニヤニヤしながら言いそうだが…


  世界全体で その中の一人ひとりの衣食住が足りていれば 経済の問題はもうそれでいいだろう。

  その上で 一人ひとりの個人が 自分らしい幸せを追求すればいいのではないか? 

  経済の問題としてではなく 個人の生き方の問題として、それ(幸せを目指すことのできる世界システムをどう構築していくのかという視点が大切だろう。



  今回は、バブル崩壊以降の日本 およびリーマンショック以降の欧米におけるお金の在り方(金融)が いかに異常なものだったのかについて説明した。

  当たり前だと思っていたことが 実はとんでもないことだったと 分かってくれただろうか


  これだけとんでもない状況なのだから大暴落が起きて、さらに大インフレが起きなければ 経済は正しい在り方に回復できず、回復できなければ 新たな発展も望めないのだ。




[2024年8月7日:追記]

* 日銀が 0.25%に利上げした数日後に、日経株価が大きく下落してしまったので、結局 しばらくの間はこれ以上の利上げはできないと思われる。




[最終改訂:2024年8月22日]