この記事はSSSRC Advent Calendar 2022 5日目の記事として書かれています。

 

こんにちは、修士一年のUKです。前回アメブロを書いたのが11月中旬なので、およそ半月ぶりのこんにちはです。(前回のブログで「就活が終わった頃に書きます」と宣言しましたが、もちろん就活は終わっていません。絶賛苦しんでいます。)

 

まず、前日の同期A君のブログの感想を簡単に述べさせていただこうと思います。私も鉄道が好きでそれなりに鉄道には詳しい気でいましたが、やはり彼には到底勝てそうもないな(そもそも勝負はしていませんが)と実感しました。彼の記事を読んで、確かにここ最近御堂筋線の電車を乗り降りする際に足元を見ることが少なくなっていたなと初めて気がつきました。加えて、写真で比較するとホーム端のタイルの柄もモダンなものに変わっていることに初めて気がつき、いかに自分が漫然と電車に乗っているのかを痛感しました(ある意味では、乗客に意識させないレベルで快適性を向上させたということでもありますが)。また、ホームと車両ドアの段差・隙間の縮小の技術的な説明とバリアフリー化への寄与に対する願いも非常に興味深く拝見しました。

また、A君は記事中で「車両側が高い段差や隙間があるわけですから,従来規格の電車に対してこれを縮小するのは簡単ではないはず」と言及していますが、鉄道の安全運行に際しては「建築限界」という車両と線路に付随する構造物・施設物との間に侵してはならない間隔が設けられています。このバリアフリー化を行うにあたって建築限界をどのようにクリアしたのかということが気になり始めました。A君、もし知っていたらぜひ今度教えてください!

 

さて、そろそろ今回のブログの内容に話を戻しましょう。

前回のブログから日時が経ってないので大したことは書けませんが、今回は友人とお酒を飲んでいる時に湧いたある疑問、議論と浅い熟慮の末辿り着いた非常に簡単な疑問の答え、疑問の解決に伴って生じた新たな疑問についてつらつら書いていこうと思います。

 

今回話題にする疑問が浮かんだのは某友人と呑んでいる時でした。久しぶりに会ったからと、バカみたいにお酒を飲みまくって思考が混濁してきていた時、その友人が「アオのハコがキュンキュンするんよ〜〜〜〜」と以前と変わらないプレゼンをしてきました(アオのハコとは、週刊少年ジャンプで連載中の恋愛を主題とした漫画です、確かにキュンキュンします)。ハイハイそれは良かったですねーといつも通り受け流そうとしたその刹那、混濁した頭にある天啓が舞い降りてきました。

 

アオのハコの公式PVです。(昨年卒業されたある先輩も好きだそうです)

 

「キュンキュンする=恋愛漫画を見て胸がギュッとなるってどういうこと?」

というのも、「現実の自分と一切関係のない漫画の中の登場人物がどんなに眩しい青春を送っていたとしても、それはあくまで私と関わりのない世界の話であって自分の心を彼らに寄せる論理的な必要性はない」と、その時の自分は思ったのです。人間を完全に合理的に行動する主体と考えれば、この論理はまあまあ筋が通りうると思っています。しかし実際のところは、こんな冷たい見方をする私であっても恋愛漫画における切ない表情や心動かされる描写を見たら胸がギュッとします。しかも、それが意識的なものではなくほとんど無意識的に行われていると、自分を客観的に観察するとそう思うのです。

 

こんな感じで降って湧いた疑問とそれに対する取ってつけた論理を一瞬で導き出した後、その友人に「なんで胸がキュンキュンするん?」と問いました。友人は、「はあ?コイツ何言ってるんや」と言いたげな(実際言ってたかもしれませんが)表情をしていました。しかし、どうしてもこの疑問が気になってしょうがない私は、友人が捨てずに取っておいたジャンプのバックナンバーを引っ張り出して実証実験を始めました。

 

実証実験と言っても実際のところは、ジャンプのページをめくってキュンキュンするだけの非常に簡単かつ楽しい実験です。うん、確かにキュンキュンするな、ここの表情最高やな、みたいなことを友人と適宜確認しながら自分の感情の動きを客観視し、呆れつつも付き合ってくれる友人との議論のなかで、胸のトキメキを誘起しているものやトキメキの機序を探りました。

 

その結果、漫画を見てキュンキュンする原因は、(1)メタ的な視点から漫画の舞台を眺めた時に感じる胸キュン、(2)登場人物に乗り移って感じる胸キュン、の二つに大別されるという仮定を導きました。さらに、胸キュンが生じてしまうのは、作者の巧みな表現によって胸キュンを生じるように"読まされている"、感情の向かう方向を制御されているためであるという理解に至りました。

(1),(2)について、その具体的内容を以下に述べます。

 

(1) メタ的な視点による胸キュン

例えば、男性主人公-正ヒロイン-負けヒロインの関係において、負けヒロインが主人公に何らかの思いを打ち明けた場合に生じる胸キュンがこれに相当する。(男性主人公-正ヒロイン-負けヒロインという一般的でない単語を用いることはご容赦ください。)

我々読者は、登場人物の関係、そのコマに至るまでの感情の流れ、そのコマの場所、そして登場人物が存在する環境・季節という物語の構成要素を全て理解できる立場、いわば神的な立場である。これら全てを把握した上で登場人物の行動や発言を"見た"とき、その行動・発言の背後にあるこうした事情に思いを馳せ、胸キュンが生じる。上の例に則れば、負けヒロインの告白を受けても男性主人公が胸キュンすることはないが、"負けヒロインの思いは叶わない"と知っている我々読者は胸キュンを起こす。

この胸キュンを誘起するため、漫画のコマはその場面の主要な登場人物や建物、舞台道具が含まれるように鳥瞰的に描かれる。もしくは、主人公の後ろ側からヒロインを眺める視点でコマを描くなど、カメラで情景を切り取るような、メタ的な描写がなされる。

 

上記のPVで言えば、21秒あたりのこのコマがメタ的な視点による胸キュンに相当すると思われます。

(再生ボタンを押すと、21秒あたりから動画が再生されます。)

 

(2) 登場人物に乗り移った胸キュン

正ヒロインのみがアップで表示される場面において、正ヒロインが主人公に恋愛感情から生じる発言や行動をした際に生じる胸キュンがこれに相当する

我々読者は先般の神的な視点を離れ、正ヒロインと同じ二次元上の男性主人公に乗り移る。したがって、正ヒロインから向けられる感情は自分に向けられたものと読者は認識するため、正ヒロインから一般の恋愛関係上で望ましい行動・発言をされると自分に対する行動・発言と錯覚し、胸キュンが生じる。

この胸キュンを誘起するには読者を登場人物と錯覚させなければならないため、男性主人公はコマ上に描写されない。さらに、コマ上のピントは正ヒロインにのみ合わされ、その表情はいつも以上に緻密に描かれる。背景の情景描写や無駄な物体はできる限り排除され、登場人物と大きなフキダシのみが描かれる傾向がある。

 

上記PVの11秒あたり

恋愛漫画の醍醐味といえばやっぱこういうコマだよね!!

 

他、胸キュンを誘起するには、「ここが大事なところだ!」と読者に認識してもらうために、フキダシ内の文字を太文字にしたり、フォントを通常のものから楷書体風のものに変更する、さっきまではなかった謎の葉っぱや光、風を描くなどの誘起方法が取られうる。

 

漫然と読む私はあまり気がつきませんが、漫画には様々なフォントが使われています。
ここで気になるのは、フォントとそれが引き起こす効果の関係において「鶏と卵どちらが先か」という問いです。

 

以上、胸キュンには2つの原因があり、表現やコマの書き方を工夫することで読者の胸はギュッとしているのではないかということを書きました。最初の方で「胸キュンが半無意識的に生じている」と私が感じた理由は、物語にのめり込み作者の術中にまんまとハマってしまったためであろうと今は思います。

 

そんなこんなで長々と訳の分からないことをつらつらと書き、おおなんか良さげな答えが見つかってよかった俺頭良いわ〜〜〜と安心していました。しかし最近、W杯の日本の活躍を見て、これらのことは「共感」という非常な簡単な言葉で表せるということに気づきました。胸キュンを引き起こす原因やその機序がどうであれ、胸キュンは「共感」に内包される現象です。結局、大量のお酒とお金、そして時間と脳のリソースを投入した私の思考は上記の長々しい文章を出力しましたが、実際のところは大きな遠回りをして普遍的な正解に行き着いただけだったのでした。

 

さて、そんなこんなで一旦天啓の始末は着いたのですが、また新たな疑問「なぜ共感してしまうのか、また共感する対象の選択はどうなされるか」が気になっています。この疑問が湧いたのも、先ほども挙げたのですが、最近日本を熱狂させているW杯日本代表の劇的な活躍を見たためです。というのも、日頃はサッカーにあまり興味のない自分であってもW杯日本代表の劇的な活躍には共感・感動しており(ミーハーな自分に対する嫌悪感をひどく覚えつつも...)、なぜ日頃は興味がないのにこういう時だけ共感するのかが気になっています。また、世の中に無数とある共感しやすいものの中からどのような基準で自分が共感する対象を(意識的であれ無意識的であれ)選択しているのかなあとぼんやりと気になっています。

 

こんな毒にも薬にもならないようなことをぼんやり考えながら年末年始を迎えようかなと思っている今日この頃です。今日みたいななんかよく分からないブログは稀で、明日からは面白い文章がたくさん見られると思うので、ぜひ12/25までSSSRCのアドベントカレンダーをお楽しみください!ではまた会いましょう。

 

"胸キュン"って少し昔の言葉づかいだったかなとブログを書き終えた今思っています。

RYDEENとか東風とかはめっちゃカッコいい一方で、何というかこういう遊び心のある楽曲も作れるYMOって凄かったんやな。