この記事はSSSRC Advent calendar 2021の記事です!

 

本日は2回生鳴海の茶番にお付き合いください!

 

第14話「寂寥

 師走のある日の昼間。あれは鉛を張ったような曇り空の日、僕は友達と3人で出かけた。

「時として男にはやらなきゃあいけねえことがあるんだぞ」親父はよくそう言っていた。そうだ、僕らは男としてやるべきことをしに行くのだ。

 

 中百舌鳥から御堂筋線に乗って難波まで向かう。煌々な車内で味気ない会話をする男3人。時間が経つほどに話が途切れ途切れになっていく。暫くすると、窓の外が黒から白になった。どうやら難波に着いたらしい。座席に張り付いた腰をよいしょと上げ、僕たちは絢爛な世界に降り立った。

 

 降り立って直ぐ、「腹が減っては戦はできぬ」とK氏が口にした。僕らは皆揃って、移動だけで綿のように疲れており、お腹が空いていた。そこで、少し遅めの昼食を食べることにした。食べに向かった先はサイゼリア。ここでの記憶はエスカルゴを初めて口にした以外には消えてしまった。

 

 小腹は満たせたところで、いよいよ目的地へ向かう。 目的地のお店に近づくにつれて3人の歩幅が小さくなる。「帰りたい」と弱音を吐くK氏。「逃げるなK氏!!逃げるなァ!起きて戦え!」とK氏を鼓舞するA氏。その様子を拱手傍観する自分。そうこうしている間に、到着してしまった。メイドカフェ「カフェe-maid」に。

 

 到着したのはいいものの、お店の入り方がわからず僕らは立ち往生していた。その間にも「魔人ブウさま〜どうぞ中へ〜」などと他の客の名前が呼ばれ、次々と店の中に入っていく。ここで勇気を出さねば男が廃ると思い、メイドさんに声をかけた。入店したい旨を伝えると「暫くお待ちいただきますが、よろしいでしょうか?」と言われ、僕はたちまち首肯する。30分ほど経ったときであろうか。寒空の中待つ,自分達の名前が呼ばれた。「た〇〇〇ごさま〜どうぞ中へ〜」時は満ちた。

 

 店に入ると、僕たちのメイド喫茶に対する不安感は消え去った。店内はいかにもという感じではなく、抑制のきいた雰囲気であった。自分達によく合う。僕たち「旦那様」は店の奥の個室に案内された。

 

 個室に入ると、メニューが渡された。旦那たちは熟考の末、800円程度のケーキ、お茶、チェキセットを頼んだ。ケーキが届くまでの間、3人は意気揚々とたわいもないことを話していた。暫くするとメイドさんが快活にケーキを持ってきた。フォークが皿に当たる金属音が部屋に響き渡る。ケーキを食べ終え、一服しているとチェキの撮影に呼び出された。メイドさんと一対一のチェキである。隣に人がいて緊張することが久しぶりであったと思う。ハートは作れなかった。

 

 撮影後は暫く談笑し、旦那たち3人は帰宅の途についた。家に帰り、ふと今日のことを思い出してみた。メイド喫茶という新しいジャンルを開拓できた喜びと、拗らせている自分へのやるせなさだけが残った。