こんばんは,B4の森瀧です.

 

本日,宇宙に関する少し信じがたいニュースが飛び込んできたので,少しコメントしたいと思います.

 

そのニュースというのは,このブログのタイトルの通り,ロシアが人工衛星をミサイルで破壊する実験を行ったというものです.

「ロシアがミサイルで人工衛星を破壊、1500以上のスペースデブリに ISSの宇宙飛行士は一時避難」- ITmedia NEWS

 

報道によれば,この破壊実験でロシアが1982年に打ち上げた人工衛星「COSMOS 1408」が破壊され,約1500個もの破片がスペースデブリとなったとのことです.

 

宇宙開発に関わる各国が厳しい基準のもとスペースデブリを減らす努力をしている中,このようなスペースデブリを大量に増やす行為は決して許されません.

我々が超小型人工衛星「ひろがり」の開発を行う際にも内閣府による審査により,デブリを出さないようにすることが強く求められました.ひろがりについて打ち上げの頃から見てくださっている方はご存知かと思いますが,ひろがりは宇宙空間への放出から1週間,アンテナの展開に失敗し続け,電波が受信できませんでした.これはアンテナを固定しているテグスを切断がうまくいかなかったことによるものですが,ここでもデブリを出さないという要求が絡んでいます.

テグスを確実に切断しようとした場合,切断用のニクロム線とテグスの接点を増やし,ニクロム線の熱がテグスへしっかりと伝わるようにするほうが良いですが,テグスが複数点で切断されてしまうと,テグスの破片が生じてデブリとなってしまう可能性が内閣府により指摘されました.

この接触点の違いを図1に示してみます.黒線がニクロム線,青線がテグスです.多点接触の場合は,接触点の間の破片が生じ,デブリとなる可能性がわかるかと思います.

図1.テグスとニクロム線の接触点による違い

 

上に示したテグスの破片は,長さ数mm程度の非常に小さく,実際にこのような破片が生じるかどうかも定かではありません.実際の宇宙開発では,このようなほんの僅かなデブリの可能性もないように厳しい基準が敷かれています.

今回のロシアのように人為的に大量の破片を生じさせては,宇宙開発に関わる多くの人がデブリ削減に払っている努力が水の泡です.

 

今回破壊された衛星「COSMOS 1408」の軌道高度は500km弱とのことだったので,発生した約1500個のデブリは高度400km~500kmにかけて漂っていると考えられます.この高度には我々のひろがり含め,多くの低軌道衛星や,国際宇宙ステーションISS,そして先日打ち上げに成功した中国の宇宙ステーションも存在しています.

特に宇宙ステーションが存在しているというのは大変危険で,各国の宇宙飛行士が危険に晒されてしまいます.その中にはもちろん破壊実験を実行したロシアの宇宙飛行士もいます.実際,ISSの宇宙飛行士は今日の数時間の間,ハッチを閉じ,避難をおこなったようです.

ロシアはこのようなデブリは危険はないと主張していますが,低軌道の物体は秒速約8kmで移動しており,宇宙ステーションにぶつかれば,宇宙飛行士の生死に関わる大きな事故につながる可能性もあります.一般的な拳銃の銃弾の速度が秒速400m程度であるため,銃弾の20倍の速度でぶつかってくると考えると,デブリとの衝突がどれだけリスクのあるものか容易に想像できると思います.

 

 

過去には中国が同様の実験をして大量のデブリを増やして非難を浴びせられていたこともありましたが,このようなことがまたしても繰り返されたこと,そして最初期より宇宙開発を牽引し,現在も宇宙開発の中心的な存在であるロシアが人為的にデブリを大量発生させたということは非常に悲しいです.

 

今後の持続的な宇宙開発のため,ロシアが態度を改め,宇宙開発に参画する各国がデブリの削減に向けて協力していけることを願うばかりです.