こんにちは.M2の前田です.
先日宇科連でひろがりの高速通信ミッションについて発表してきたので宇科連の話題が旬なうちに高速通信ミッションを振り返るブログでも書いておこうという記事です.(軽く書くつもりがそこそこの文量になってしまいました)
ひろがりの高速通信ミッションの概要はここに載っているので忘れたアナタはここを参照してもらうとして結果を解説していきます.(https://www.sssrc.aero.osakafu-u.ac.jp/activity/opusat-ii-project/)
クライテリアは,ミニマムが「従来より高い伝送速度をもつ方式で通信が成立すること」フルが「いずれかの方式で実効速度が従来のものを上回ること」でした.実効速度は平たく言えば「単位時間にミッションデータをどれだけ取得できるか」ということなのですが,細かい話はおいておくとして,結果はこのようなものでした.
高仰角のパスでの通信実験の結果(青色で示すのがデコード率,緑色が実効速度です)
1番左がアマチュア無線のパケット通信でよく使われていた方式です.我々はそれ以外の5方式を開発しました.比較した方式全てで通信が成立していることはデコード率(送信パケットのうち地上局でデコードできたパケットの割合)が0%より大きいことからも明らかです.ミニマム達成ですね.そして実効速度も従来のものを上回っているものがあり,これにてフル達成です.
ここからが本題です.今から書くのは「早く通信できることはわかった.それはそれとして運用で使いたいか?」という話です.実効速度の速さは一連のデータを欠落なく取得することを意味しません.あくまで単位時間に取得できるミッションデータの量が多いという指標です.一方欠落が少ないということはデコード率が高いということです.さて,デコード率は低いものの実効速度は速い方式(図中最右のRC4FSK 19.2 RSというやつです)を運用で用いるとどうなるでしょうか.「歯抜けになったデータを早くたくさん取得できる」ということになります.これではオペレータは再送を要求することになるでしょう.取得する情報の完全性を犠牲にしてクライテリアの達成基準は満たす方式があったという結果です.デコード率100%は無理がある上に,それを考慮した上で「運用で使う際の利便性はどうなの?」ということは定量化し難いのでクライテリアに組み込めなかったのは仕方ないかと思っています.デコード率も実効速度も従来の方式を上回ったものもありミッションはサクセスですが,その一方で「速い!早速運用で使おう!」とはならない方式もあったという振り返りです.
問題はもうひとつあり,我々が誤り訂正を採用したのは再送を減らすという目的がありました.そして注目してほしいのはリードソロモンと畳込みを併用した場合で,このとき誤り訂正用のデータは結構盛り込まれています(図中の左から3番目と4番目です).にもかかわらずこのデコード率は再送を要求しないレベルとまではいかないでしょう.かといって誤り訂正用の冗長なデータが増えるとデータ伝送の効率も落ちますし,誤り訂正用データを増やせばいいというものでもありません.個人的には再送しないことは諦めて,再送手続を実装して再送にオペレータを介さないような形に改良するのもありかと考えています.
というわけで,成果の報告と,逆に課題も並べてみました.楽しんでいただけたら幸いです.不都合な点が見つかったということは改善に余地があるということです.効率よくデータ伝送する方式を開発できたことは確かなのでまだまだ改善を続けていきたいですね.
P.S.
宇科連では革新衛星を中心にいろんな衛星の設計を拝見し大変勉強になりました.ウチもバスの技術が一歩でも進んだ衛星をつくりたいなという思いが強くなりました.(ホントはこっちの感想も書きたかったのですが,それは封印します...)
