こんにちは!B4の森瀧です.
私達が現在運用を続けている超小型人工衛星「ひろがり」ですが,地球の周りをぐるぐる回っているうちに,大気の抵抗を受けて徐々に高度が下がっていき,やがて大気圏に再突入します.「宇宙には空気がないんじゃないの?」と思われた方もいるかも知れませんが,ひろがりが周回している高度約400kmでは薄く大気が存在しているため,少しは抵抗を受けることになります.
高度約420kmで国際宇宙ステーションから宇宙へ放出されたひろがりは,この半年の間に少しずつ高度を下げ続け,昨日ついに400kmを切りました.そこで今日はひろがりの寿命(軌道寿命)について話をしたいと思います.
ここで,ひろがりの運用開始以前より情報を見てくださっている方の中には「ひろがりって4ヶ月しか運用できないんじゃなかったっけ?」と思っている方もいるかも知れません.
そうです,ひろがりの運用を開始する前まで,我々はひろがりの軌道寿命を4ヶ月と見積もり,報道等でも4ヶ月程度と公表しておりました.
ところが,実際にひろがりが宇宙空間へ放出され,高度情報を見ていると,4ヶ月の軌道寿命にしては高度の下がり方が非常にゆっくりでした.
そこで僕は,ひろがりの軌道寿命を計算するソフトウェアの出力値が不適切なのではないかと疑問に思い,すでに大気圏に再突入している過去の衛星を複数調べ,それらの過去の軌道情報データからおなじように軌道寿命を算出してみました.
すると,どの衛星も実際の寿命よりも大幅に過小に軌道寿命が算出されているではありませんか!!!
このことで,これまで使用していたソフトウェアが出していたひろがりの寿命は過小評価されていることを確信しました.
そこで,NASAが提供している別の軌道解析ツールを見つけてきて,そちらを試してみることにしました.まず,そのソフトウェアの妥当性を検証するため,先ほどと同じように,過去の衛星のデータを使って,軌道寿命の算出値と,実際の寿命を比較してみました.過去の小型衛星6機程度について調べてみたのですが,どの衛星についても,実際の寿命が算出値の範囲内に収まっていたので,このソフトウェアの算出値の妥当性が認められました.
そしていよいよ,このソフトウェアを用いてひろがりの軌道寿命を計算してみると...
なんと!最短で約1年2ヶ月,最長で約2年という長さでした!
軌道寿命が4ヶ月だと想定してキチキチで運用スケジュールを考えていたのがアホらしいですね笑
使用するツールの妥当性を検証するのは大事だなと痛感しました.
このことが判明したのが,4月の中頃で,それ以来このソフトウェアを使用して定期的にひろがりの残り寿命を計算しています.
ちなみに,現在のひろがりの高度は397.0km~399.7kmで,
残りの軌道寿命は最長で1年2ヶ月,最短で8ヶ月です.
すなわち,ひろがりは2022年6月~2022年12月のどこかで大気圏に再突入し,役目を終えることになります.
まだまだ長いですね...笑
今はまだ寿命予測の幅が半年と長いですが,高度が下がっていくにつれ,この幅もだんだん狭まっていき,より正確な大気圏再突入時期が予測できるようになります.
まだ少なくとも8ヶ月はあるため,たくさんデータを取りたいと思います.
運用初期のころのような優先順位の高い運用はもうあまりないため,そのうち日本列島の撮影にも挑戦してみたいなと思います!
ではまた!