こんにちは!衛星プロジェクトB4の沈(シム)です.この度初めてブログの執筆をしてみました.

衛星の運用が開始されてから1ヶ月が過ぎ,管制室で約1.5時間ごとにCWの音を聞くという光景が日常化した矢先の緊急事態宣言発令でなかなかに厳しい状況となっております.私は院試勉強のために現在は運用から離脱しておりますが,地上局設備で開発を担当した部分もあるため,正常に動作しているかと心配になり,ひやひやする日常を送っています.今日は私が担当した地上局開発に関する懺悔をここに記録しておこうと思います.

 

開発!

 さて,私は通信系の一員として楽しく開発を行っていたのですが,地上局アンテナが衛星を自動で追跡できるようにするためのローテータ制御に関する開発を主に担当しておりました.このタスクを振られた当時は右も左もわからず(今もですが…),まずはpythonの勉強から始めました.そして,先輩からの助言もあり,TLEを取得し軌道を計算することで衛星の現在位置を割り出すこと自体はそれほどの苦も無く完成することができました.このまま順調にいくと思いきや,すぐに暗雲が立ち込めました.アンテナを実際に動かして制御するとなるとソフトだけでなくハードの知識も必要となり,ソフトとハードの統合に非常に苦戦しました.ローテータ制御用の回路は他の担当者に任せていたので,うまく動かなかったときの回路の検査となるとただの役立たずとなってしまいました.また,アンテナ制御の際にPID制御を用いようとし,実際に用いているのですが,制御の際に必要なゲイン(係数のようなもの)やローテータに印加する電圧の値を決定することにも大変時間を取られました.本来は,実測する前にある程度の予想をつけておき,調整することができたら良かったのですが,全く予想がつかなかったため実測しながら調整するという脳筋デバッグを行ってしまいました.

 

失敗!

 上述したような紆余曲折がありながらもなんとかソフト,ハードともに統合することができ,いよいよ現在軌道上にある衛星を実際に追跡してみました.「一発でうまく動いてくれ!」という願いもむなしく当然のように「あんまりうまく(追跡できて)ないですね!」という結果が得られました.というのも事前試験では調整できていたと思われていた制御ゲインが衛星を追跡しながらだと勝手が違い,またしてもゲインの調整をするということになりました.そして,やっとのことでアンテナを計算された衛星位置の向きに追従できるようになったのですが,今度は計算した衛星の位置が本当にあっているのかということを確かめるにはどうすればいいのかと悩まされました.最初の頃はISSのみを試験対象としていたのですが,ISSが常にアマチュア無線帯で電波を送信してくれているわけではないので確かめようがありませんでした.そこで.アマチュア無線帯を用いている衛星を探し,CWを発していそうであれば追跡してみるということを繰り返していました.ところが,全然CWが取れませんでした.原因が全く分からずまたしても立ち止まっていると,系内会議にて別案件でドップラーシフト対策をそろそろ行った方がいいなという話をしているのを聞きました.ドップラーシフトとは衛星が移動することで電波が基準周波数からずれる現象のことで,衛星追跡の試験をするときは無線機の周波数を一定にしてしまっていることに気が付きました.そして,手動で合わせるとCWが聞こえるようになり,安心しました.自分が担当している部分のみにばかり目が行き,地上局全体の流れを考えることができていないという典型的な失敗をしてしまいました.

 

運用!

 2021年3月に「ひろがり」がISSから放出され,運用が始まりました.その前に,衛星追跡のためのソフトを人が使いやすくするように作り変える必要がありました.機能としては,衛星を追跡することができてましたが,現在の衛星の位置,アンテナの向き,次のパスの情報などを見やすいようにするというものでした.なので,今までCUIで実装していたものをGUIで実装しなおそうとしたのですがうまくいかず,他のタスクとの兼ね合いもあり結局,他人に任せてしまいました.私の代わりにこのGUIの実装を担当してくれた方のおかげで,ボタン操作でアンテナを操作することができるようになり,運用するにあたって非常に助かったと思います.

 このように,運用のための事前準備ができ,後は衛星「ひろがり」からのCWを待つのみとなったのですが,他の方がブログに書いてある通りファーストパスまでにかなり時間を要してしまいました.ファーストパスの確認を取れた時,私も居合わせていたのですがとても嬉しく思いました.ですが,それと同時に,CWは受信できたがFM通信はできるのか,コマンドアップリンクは通るのかといった心配が次々に押し寄せてきました.もし,衛星との通信でなにか不具合が生じれば,地上局アンテナの指向精度,ドップラーシフト対策あたりが疑われるのは必然なので,大変プレッシャーを感じていました.というのも,CWが受信できることは他の衛星を用いた試験で確認できていましたが,FM送信を行っている衛星がなかなか見つからずFMに関しては確認できていなかったからです.(このことも反省点です.)結果的には,コマンドアップリンクが通り,FM通信も行うことができたため,肩の荷が下りました.

最後に!

 ローテータ制御の開発は自分で言うのもなんですがかなりお粗末に進めてしまったなと思いました.今考えると,何であんなに時間をかけてしまったのだろうと感じる部分やもう少しうまく実装できたのではないかと思う箇所が多々ありました.開発自体は多くの方から助言をもらったり,作ってもらったりとしながら進めていき,楽しかったなとは思います.それに,衛星との通信ができた際には衛星をしっかりと追跡できているのということがわかり,この時に一番達成感がありました.長々と記録をつけてしまいましたが,できることならOJTは避けた方が良いということと,院試が終わればまた衛星開発に全力で取り組みたいということをお伝えして今回のブログを締めたいと思います.