数回目の登場となります,現在は電源系のとりまとめやPMsをしておりますB3の米山まうむです.ブログはもっと気軽に更新していきたいなと思いながらもあっという間に日々が過ぎていくのでここでちょっと書いておきます.本当は対面とオンライン混合で実施しました2020年度年末報告会について書いておこうと思っていたのですが,時期を逃してしまいましたので,今回は打ち上げ目前の現在の衛星開発やその他いろいろいお話させてもらいます.

運用に向けた消費電力測定

 まず私の今のタスクについて.背景からお話すると,打ち上げ前の現在衛星の運用についての検討が重要事項となっています.衛星は開発が完了しましたが,衛星を運用するためには実はまだまだやらなければならないことがたくさんあります.衛星からのデータを受信し,それを復号(デコード)するためのソフトやハードの開発など地上局の整備,地球をぐるぐる回っている衛星に指令を送ったり,データを受信したりする段取りを決める運用検討,不定期に日本上空を通過する10分程度しか通信機会がない中で,円滑に運用できるようにするための運用者の教育など忙しく動いています.南部先生(元府大助教,現レヴィCEO)が年明けにおっしゃった「信じがたいかもしれませんが、衛星は宇宙に行ってからが本番ですから、しっかり準備しましょう。」との言葉を胸に準備に励んでいます.前置きが長くなりましたが,電力収支に懸念のある“ひろがり”の運用検討の一環として衛星の消費電力をFM(Flight Model)基板で実測しています.FM基板は衛星に搭載され宇宙に行くものと同等のものがもう一つ予備で手元にあります.FMの前のEM(Engineering Model)開発で消費電力は1度実測しているのですが,念のためにもう一度測定しようということで測定しています.一枚目の写真はカメラを動作させている瞬間です.実際の地上局(B6棟屋上のアンテナ)から指令を送信して,B6棟の屋内にあるこの予備の衛星基板で受信して試験しています.おなじみの衛星の黒い構体がないのでニクロム線,カメラ,LED,無線機,バッテリケースなどはあちこちに散らばっています.なお作業スペースは整理すべきです,ごちゃごちゃ具合に改めて反省しております.消費電力はテスターで電流と電圧を測ってそこから算出します.二枚目の写真がテスターをデータロガーとして使うためのソフトの写真です.衛星の基本状態では衛星の健康状態(いわゆるHKデータ)を断続的に送信しています(送信してしばらく休止してまた送信しするを繰り返している).テスターのデータはcsv形式で手に入るのですが,時刻データが1/100秒まであり,「   0:00'01"41 」のような形式で記録されるのでエクセルでは扱いにくく,また一つ一つ扱うのも面倒なのでプログラム書くかーということで久々にコードを書きました.これまでプログラムが必要なときは慣れているC言語でもっぱらコードを書いてきたのですが,便利なんだろうなと思いつつも敬遠していたpythonでやってみるかということでpythonで書いてみました(最後にpythonに触ったのは9月末のハッカソンだったかな?).ライブラリを使って処理はブラックボックスで楽に使いこなせればいいのですが,今どういうデータ型で扱っているのか,ライブラリ間での互換性などわかっていないことだらけでなかなか苦戦しましたが,この試行錯誤を乗り越えて成果物ができあがるのが醍醐味ともいえるもので,真っ当な生活習慣を生け贄に楽しくコードを書いていました.消費電力の実測結果は室蘭工大さんとの運用会議に使う資料なので出た値をまとめる作業がまだありますが,とっとと仕上げてしまいたいと思います.
 
図1 衛星構体がなくいろいろ簡易な余りもので組んだ衛星
 
図2 テスターの電圧と電流の計測値
 

2,3回生の運用練習

 運用に向けた準備の一つとして,運用できる人材の育成があります.主に3回生はこれまでもある程度衛星開発に関わってきていますが,2回生は“ひろがり”開発にはあまり関わっておらず,最近になって地上局の準備や設計の反省などで関わっているという感じです.また3回生
についても自分の系のことはわかるが,他系のことはあまりわからないというメンバーが多く,例えば(槍玉に挙げるわけではありませんが)構造系だとこれまでソフト面の関わりが薄く,指令(コマンド)を送るといったことには慣れていませんし,ミッションやバス(衛星の基本システム)のソフト面での理解が薄い側面があります.このような中で,運用時には平均1日数回日本上空を“ひろがり”が通過する10分程度の“パス”に合わせて運用者が衛星のデータを受信したりコマンドを送信したりしなければなりません.何が恐ろしいかというと平均1日数回は昼間に来るとは限らないということです.他大の教訓を聞いていると,運用は衛星が動くうちにできるだけ急いで行うのが望ましいようですし,“ひろがり”はパドルや厚板構造を展開すると空気抵抗ですぐに大気圏に落ちてきます(軌道寿命が短くなる)ので悠長に構えていられません.夜中のパスも無駄にしないためには交代シフトを組む必要があります.またISSへ到着後1ヶ月後程度で衛星が放出される前例が多いことから,3月末か4月からの運用が予想され,大学の授業を受けながら運用することになるのはまず間違いありません.そういった事情から少しでも多くの人員を運用に投入できるように今のうちに教育しておかなければならないのです.衛星全般については理解してくれてはいますが,“ひろがり”固有の内容や運用といった側面からの知識を付けてもらうためにまず運用計画を読んで理解してもらう必要があるのですが,数十ページのワード資料をいきなり読んでもらうのは気持ちが続かないですし,内容も頭に入ってこないと考えています.そこをどううまく拒否反応を出させずに習熟していってもらえるかを考えるのが大事だという思いで,2,3回生のマネジメントポジションのメンバーたち(PMs)と方針を策定中です.教育をする側と教育を受ける側,双方のコストを天秤にかけバランスを取りながら,運用者の育成という目的が達成されるよううまくやっていきたいと思っています.下の図は運用について先輩方や南部先生,室蘭工業大さんがみんなで運用に関する事項を整理したもの.南部(元)先生の会社が開発しているツールであるBalusを使用させていただいております.ありがとうございます.これだけ多数の要素からなる内容を文書にしたもの(運用計画書)を読むと思うと萎えますよね(笑)
 
図3 運用のフローや関連項目についてBalus 2.0でまとめたもの
 

1回生への系配属に伴う衛星システムの説明

 1回生がCan-Sat開発を終え,各プロジェクト(衛星開発 or ロケット開発)に配属されました.さらに衛星プロジェクトとして各系に配属することになりました.衛星開発では一般的にバスシステムを機能や電源系,構造系,通信系,姿勢系などの“系”に分割し開発を行います.衛星開発に合流する1回生の希望を元に配属するのですが,そもそも衛星開発については詳しく知らない1回生向けに全般的な説明をする必要があります.そのための資料を現在作成しており,何をどう説明しようかとあれこれと考えています.我々が開発するCube-Satに特有の話やもっと一般的な軌道や衛星システム全体の話など,小木曽先生の衛星システム設計学の授業資料などを参考にして作成中です.自分が1回生の頃,同じこの時期に衛星全般の説明をB3の先輩にしていただいたことを思い出すにつけて,自分もセンターの中でどんどん上の世代になっていっていることをしみじみと実感しています.自分も経験・知識ともにまだまだだという認識ではありますが,それでも宇宙に片足をつっこんでいるので自分のもつ知識を前提とした“わかっている人”向けの説明にならないよう,丁寧に説明しなければと思います.
 
そういえば1回生への説明の発表資料に一部使用したJAXAのJ-SSODに関する資料で運用シナリオの例に“ひろがり”が例に出ていました.以前PERSEUSで講演していただいた常間地さんがCEOを務めるWARPSPACEの“WARP-01”とツーショットです!↓のリンク先資料の最終ページ
 
 
 ということでここらへんで筆を置いてタスクに戻りたいと思います.“ひろがり”の乗ったアンタレスロケットの打ち上げ(2月21日(日)午前2時36分(JST))と翌22日夕方のシグナス補給船のISSへのドッキングはぜひご注目ください.それでは!