「足が落ち着かない。」



何度も足を動かそうとしてもフィトする位置など寝台バスにはないのだ。これはもう小学校の頃からわかっていた。どんなに身体が小さかろうと、隣に人がいなくて2人分の席があったとしても決して安眠などココでは得られるわけはない。それに加えてこの緊張感。絶対に落ち着けるわけなんてなかった。



名古屋~徳島夜行バス。


大学に入ってこれが6度目の旅なのだがいつも出発は何ともいえない気持ちになる。今いるところの愛着から来る名残惜しさ。新しいものに出会う期待。その他モロモロがミクスチャーされ周囲とは違った空気を吸っている気分になる。

周りには帰省か仕事で徳島に行く人々のどちらか。俺みたいにザックを背負っている奴なんて誰もいやしない。


「着いた先は全く知らない世界。知り合いなんてそこにはいなくて、頼るべきものは自分ひとり。」




今回は日本だから何とかなるのだろうと思っていたが、ホテルには絶対泊まらないという意味のわからない決断をしていた。そうやって毎回、自分に対して無意味なプレッシャーをかけることによって一種の快楽を得ていたりする。多分それって登山家と同じ気分なんだろう。

そんな事を考える自分をキモイと思いつつも、最高の、そして極限に膨れ上がった自己愛に包まれている自分に居心地の良さを感じている。結局キモイのだが・・・。


さっきの位置だと右足は楽なのだが、左足が窮屈で壁と右足に挟まれてすねのあたりが痛くなってきた。

俺は今度は左足を楽になるように位置を変えた。そしたら今度は腰らへんが窮屈に思われるようになってきた。


もう寝ていると自己催眠をかけることにした。身体の位置を気にしていたら絶対に寝れなくなる。明日からの野宿に備えて今は眠るしかない。こんなにいいベットはないんだと自分に言い聞かせた。そしたら意外とすんなり寝れた。





結構眠っていた。気付いたら俺の足はバスの廊下のほうへ垂れていた。そこに今にも出て行きそうな人々が俺の足を避けながらバスから降りようとしている。俺は慌てて、足を引いた。


ここは鳴門らしい。目的地まであと20km。俺はここからずっと起きている事にした。まだ薄暗いがもう朝だ。

寝ている間に大鳴門橋を通り過ぎたらしい。ちょっと残念だったが、もう自分が四国にいることに興奮した。


バスの窓から2時間後の俺の姿であろう白装束を着て自転車で走っている人を見た。俺があれをするなんて考えるだけでゾッとした。




目的地である徳島駅に着いた。