皆さま、こんにちは。

だいぶ間が空いてしまいましたが、本日は「フェイスリフト」の中でも少し趣向を変えて、額・こめかみリフトにも深く関係するお話を。

「目の上がたるんできたなぁ……美容外科でなんとかできないかな?」

そう思って検索すると必ず出てくるのが“眉下切開”という手術です。

眉下切開とは、文字通り「眉毛の下の皮膚を切り取って、上まぶたのたるみをスッキリさせる」手術。

傷が眉毛の下の隠れるので欧米人と比較して傷が目立ちやすい日本人に適しており、かつ、厚ぼったい皮膚も取り除けるため、一見すると非常に理にかなった「お手軽で効果的な手術」に思えます。

しかし、ここには大きな落とし穴があるのです。

それは、

「術後に目と眉が近づきすぎてしまい、顔の印象がキツくなる人が一定数いる」

ということ。

なぜ、良かれと思って受けた手術でそんな現象が起きるのか?

そのメカニズムを詳しく解説しましょう。


眉毛は「頑張って」今の位置にいる

本来、加齢とともに額やこめかみはたるみ、それに引きずられて眉毛も下がってきます。

ところが、多くの場合は「前頭筋(額の筋肉)」が頑張って眉を上に引き上げ、無意識に視界を確保しようとしています。

どういうことかというと、

  1. 加齢で額・こめかみがたるむ

  2. 眉毛が下がる

  3. まぶたの皮膚が目に被さる

  4. 視界が悪くなる(これ以上下げまいと、額の筋肉が眉を引き上げる)

という悪循環を食い止めるために「前頭筋」が頑張ってくれています。

この「頑張っている状態」で眉下切開を行うとどうなるでしょうか?

皮膚のたるみが物理的に無くなると、脳は「もう頑張らなくていいよ」と判断します。すると、額の筋肉がリラックスして眉毛が本来の(低い)位置までストンと落ちてしまうのです。

その結果、目と眉の距離が極端に縮まり、険しくキツい印象を与えてしまいます。


AIで比較する「眉が下がった印象の変化」

額のボトックスは「前頭筋」を弱めるボトックスなので、額のボトックスで失敗されたことがある方は直感的にこの状態が理解しやすいと思いますが、他の方もこの現象をイメージしやすくするために、AIに画像を作ってもらいました。

あくまで「眉下切開によって眉が落ちた状態」を想定した比較ですので瞼直上のたるみについては同じです。

 

眉下切開前イメージ
 

術後、眉が落ちた状態

 

いかがでしょうか。

どちらの方が、パッと見で「キツい印象」を受けるかは一目瞭然かと思います。

「どちらが若々しく見えるか」と聞かれれば、多くの方が一枚目(眉の位置が適切な方)を選ぶはずです。

厄介なのは、この眉の下垂が術後数ヶ月から1〜2年かけて徐々に起きてくるという点です(体感です)。


なぜ「眉下切開ブーム」は起きたのか?

眉下切開は短時間で施術でき、医師側にとっても参入障壁が比較的低い手術です。

SNSでは「目元だけ」をクローズアップした、眉が下がる前の(術後間もない)綺麗なBefore/Afterが溢れています。

この「部分的な成功例」の拡散が、現在の眉下切開ブームを加速させた一因と言えるでしょう。

もちろん、熟練の先生方はこのデメリットを熟知しており、「眉下切開が適応となる人は、世間で思われているほど多くはない」と警鐘を鳴らされてきました。しかし、SNSの勢いには勝てず...

患者さんご自身でも気づかないうちに「たるみは取れたけれど、なんだか顔が怖くなった……」という状態に陥っている方が少なくありません。さらに悲しいことに、本人は「まぶたの処置は終わったはず」という先入観があるため、若見えしない原因が「まぶたより上(額やこめかみ)」にあることに辿り着けず、いつまでも理想の顔貌になれないという迷宮に入り込んでしまうのです。

また、上述したように眉下切開は日本人にとって良い手術なのですが、この眉毛下がる現象はアジア人で起きる確率が高いことも、悲しいことに最近の研究でわかっています...


たるみの「根本原因」はどこにある?

そもそも、上まぶたのたるみは「額・こめかみのたるみ」のしわ寄せを受けた、いわば“被害者”です。

被害者であるまぶたの皮膚を切り取るだけで、原因である上方のたるみを無視すれば、どこかに歪みが来るのは容易に想像がつきますよね。(※もちろん、眉下切開がバッチリ決まる方もいらっしゃいますが、全員に適した魔法の杖ではありません)

「じゃあ、どうすれば自然に上まぶたのたるみを解決できるの?」

その答えこそが、額・こめかみリフトなのです。

……とお話ししたいところですが、少し長くなりましたので、この続きはまた次回に。

本日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

ではでは。

リフトアップの王様手術、フェイスリフト、に関するブログ。前回の続きから。

 

このシリーズも今回で3本目。1本目、2本目の記事を読んでいない方はそちらもぜひ読んでください。

 

さて、今回はDeep Planeについて。

 

私が“Extended Deep Plane Face and Neck Lift”と言い始めてから徐々に“Deep Plane”という用語が日本でも広まってきたと思います。今ではいろいろな術者がDeep Planeといっていますが“それ本当にDeep Plane?”と思われるようなものも見受けられるようになりました。真面目にフェイスリフトをしている医師ならいざしれず、ただの流行り言葉に乗っかっているだけの医師で手術を受けたら失敗間違いなしです。

 

ということで最終回の今回は玉石混合の“Deep Plane”について勉強していきましょう。

 

まずは概要から。Deep Planeの定義は3種類あります。

①(広義の)Deep Plane

②(狭義の)Deep Plane

③(さらに狭義の)Deep Plane

一つずつ見てましょう。

 

①広義のDeep Plane 

 

まず、一番広い意味での“Deep Plane”についてです。ここはフェイスリフトの神様の書いている教科書から引用を 

 

“the term deep plane has since come to be used generically by most surgeons for any procedure where there is some kind of modification of the SMAS is performed”

 

Aesthetic Plastic Surgery Video Atlas. Facelift with SMAS Flap. T. Marten

 

 

日本語に訳すと、“Deep Planeは何かしらSMASに手を加えているフェイスリフト”ということになります。

 

あら?と思われた方、正解です。

 

少しでもSMAS操作を加えていればそれだけでDeep Planeです。なのでHigh SMAS、Low SMAS、SMASectomyなども全部“Deep Plane”ということになります。なんだったらSMASの下を全く剥離せず、靱帯も触らないMACSリフトでも“Deep Plane”に含みそうな懐の深さを見せる定義です。

 

この定義があるので、私からみて「それ本当にDeep Plane?」と思うような手術でも“Deep Plane”で正しくなってしまうんですね。恐るべし言葉の定義。

 

②狭義のDeep Plane 

 

この辺りから私が指している“Deep Plane”となってきます。

顔の横から皮膚切開をした後、皮膚の下を進みます。そして目尻から下顎角あたりを結んだラインあたりからSMASの下に入りさらに剥離を進めて、皮膚とSMASを一塊にしてリフトアップする…これが(狭義の)“Deep Plane”となります。広義のDeep Planeと比べると、SMAS下の処理をきちっとしている、のは明らかです。

 

他のSMAS法などと比較するとメリットとしては

A. 中顔面への効果がある

B. SMASと皮膚を一塊にして牽引できるので皮下組織が温存できる

となります。

 

実はBがかなり重要です。そもそも母親の体の中で受精卵から体が作られていく時、『皮膚とSMASは同じ部分からできる』のであまりこの二つは剥がさないよ方が良いと言われています。

この二つを剥がすことで肌質が悪くなったり、毛穴が広がったり、毛細血管が拡張したり、などなど種々の問題が生じてきます。

この辺りについては、もう少し詳しく「Preservation Facelift」という概念とともに別の記事で説明させていただきたいと思います。

 

 

 

③さらに狭義のDeep Plane 

②と③の違いは非常に難しいです。美容外科医に聞いてもきちんと答えられる人は少ないと思います。というか論文の段階でもごちゃごちゃしています。

 

②の段階だとまだ2種類のDeep Planeが含まれていて

・中顔面において、表情筋をSMASに含めるDeep Plane

・中顔面において、表情筋をSMASに含めないDeep Plane

があります。

この中での後者、つまり、“中顔面において表情筋をSMASに含めないDeep Plane”がさらに狭義のDeep Planeになります。

 

私は両方のタイプで行っています。その時の手術の組み合わせだったり、SMASの厚さだったり。

 

 

さて、まとめますと、Deep Plane Faceliftと一口に言っても

①(広義の)Deep Plane

②(狭義の)Deep Plane

③(さらに狭義の)Deep Plane

の定義があり、①の定義が広すぎるのでフェイスリフト界隈が玉石混合のDeep Planeで溢れかえっている現状があります。海外でも同様の問題は見られるようで警鐘を鳴らしている医師がいらっしゃいました。“Deep Planeと言っているけどDeep Planeでないフェイスリフトを多く見受けられるようになった”と。

 

Deep Planeの恩恵が受けられるのは②、③のDeep Planeだけです。

流行りに乗ってDeep Planeと言いつつ、糸リフトでごかましている医師でフェイスリフトしたら失敗必至です。

 

さて、3部構成にしてお送りしたフェイスリフトのコラム記事お楽しみいただけましたでしょうか?

 

3部構成にしましたが、まだまだ語り足りない部分があるのでこれについては“番外編”があるとかないとか。

 

乞うご期待?

リフトアップの王様手術、フェイスリフト、に関するブログ。

前回の続きから。

 

リガメント(靭帯)とはなにか?

少しフェイスリフトについての知識がある方なら聞いたことがある「リガメント(靱帯)」。
骨から出て皮膚まで伸び、皮膚やSMASを骨にピン留めしてくれています。

皮膚やSMASが重力に引っ張られて落ちすぎないように止めてくれていると言われているのですが(佐々木はこの理論に懐疑的ですがこれはまたの機会に)、こいつがフェイスリフトのリフトアップを妨げる原因になっています。

フェイスリフトは顔の横でSMASや皮膚に引っ張る力を加えるしかないので、途中でピン=靱帯があると引っ張る力が顔の前まで届かないのです。


フェイスリフトと靭帯について模型を使って解説

イメージとしてはこんな感じ。


モデルは私の相棒、オステ男くん。青い布が皮膚・SMAS、オステ男くんの頬骨に刺さっているピンが靱帯だと思ってください。後にも書きますが実際には靱帯はもっといろんな箇所にあります。今回はわかりやすいように一箇所だけ…

フェイスリフトみたいに顔の外側で青い布(=皮膚・SMAS)を引っ張っていますが、顔の前のたるみが改善していませんね。このようにピン(=靱帯)があると顔の前の方まで引っ張る力が効かないのです。こんな状態でフェイスリフトしたら満足にリフトできず失敗となります。


ピン=靱帯を外してあげるとこんな感じ。

しっかりと顔の前まで引っ張る力が働いてますね。
このイメージでもわかっていただけるように“靱帯処置”はフェイスリフトで失敗しないために重要になってきます。

さて、この靱帯。顔のいろんなところにあります。どの靱帯を処理するか、というのは学会でもよく議論されるところ。結構しっかりしたフェイスリフトの術式だと外せる靱帯全部外しているものもあります。

が…そんなフェイスリフトでも太刀打ちできないことや部位があることがわかってきました。


その原因がこれ。

この図の黒い部分。裏にはテープが貼ってあります。

そう、どうやら靱帯以外の部分でもSMAS・皮膚が、ピン留め(=靱帯)までは行かないものの、“糊付け”されているようなのです。

この“糊付け”をつけたまま、ピン(=靱帯)を外して引っ張っても…

 

あら?あまりたるみが良くなっていない。

黒い部分を剥がして、引っ張ると…

上がった!たるみが解消されました!!


Extended Deep Planeの使命

こんな感じでこの黒い部分、“糊付け”の部分も意外とリフトアップを邪魔しています。

実は“糊付け”の部分を外してあげるのが“Extended Deep Plane”の一つの重要な使命になります。

この“糊付け”って外すの大変なので私は時間をかけて丁寧に外しています。

一種の変態的なこだわりです。


まとめ

今回はフェイスリフトを受ける時に知っていただきたい“靱帯”、さらに一歩踏み込んで“糊付け”について説明しました。

次は最近用語が拡大解釈されている“DEEP PLANE”について書きたいと思います。

こうご期待。


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