リフトアップの王様手術、フェイスリフト、に関するブログ。前回の続きから。

 

このシリーズも今回で3本目。1本目、2本目の記事を読んでいない方はそちらもぜひ読んでください。

 

さて、今回はDeep Planeについて。

 

私が“Extended Deep Plane Face and Neck Lift”と言い始めてから徐々に“Deep Plane”という用語が日本でも広まってきたと思います。今ではいろいろな術者がDeep Planeといっていますが“それ本当にDeep Plane?”と思われるようなものも見受けられるようになりました。真面目にフェイスリフトをしている医師ならいざしれず、ただの流行り言葉に乗っかっているだけの医師で手術を受けたら失敗間違いなしです。

 

ということで最終回の今回は玉石混合の“Deep Plane”について勉強していきましょう。

 

まずは概要から。Deep Planeの定義は3種類あります。

①(広義の)Deep Plane

②(狭義の)Deep Plane

③(さらに狭義の)Deep Plane

一つずつ見てましょう。

 

①広義のDeep Plane 

 

まず、一番広い意味での“Deep Plane”についてです。ここはフェイスリフトの神様の書いている教科書から引用を 

 

“the term deep plane has since come to be used generically by most surgeons for any procedure where there is some kind of modification of the SMAS is performed”

 

Aesthetic Plastic Surgery Video Atlas. Facelift with SMAS Flap. T. Marten

 

 

日本語に訳すと、“Deep Planeは何かしらSMASに手を加えているフェイスリフト”ということになります。

 

あら?と思われた方、正解です。

 

少しでもSMAS操作を加えていればそれだけでDeep Planeです。なのでHigh SMAS、Low SMAS、SMASectomyなども全部“Deep Plane”ということになります。なんだったらSMASの下を全く剥離せず、靱帯も触らないMACSリフトでも“Deep Plane”に含みそうな懐の深さを見せる定義です。

 

この定義があるので、私からみて「それ本当にDeep Plane?」と思うような手術でも“Deep Plane”で正しくなってしまうんですね。恐るべし言葉の定義。

 

②狭義のDeep Plane 

 

この辺りから私が指している“Deep Plane”となってきます。

顔の横から皮膚切開をした後、皮膚の下を進みます。そして目尻から下顎角あたりを結んだラインあたりからSMASの下に入りさらに剥離を進めて、皮膚とSMASを一塊にしてリフトアップする…これが(狭義の)“Deep Plane”となります。広義のDeep Planeと比べると、SMAS下の処理をきちっとしている、のは明らかです。

 

他のSMAS法などと比較するとメリットとしては

A. 中顔面への効果がある

B. SMASと皮膚を一塊にして牽引できるので皮下組織が温存できる

となります。

 

実はBがかなり重要です。そもそも母親の体の中で受精卵から体が作られていく時、『皮膚とSMASは同じ部分からできる』のであまりこの二つは剥がさないよ方が良いと言われています。

この二つを剥がすことで肌質が悪くなったり、毛穴が広がったり、毛細血管が拡張したり、などなど種々の問題が生じてきます。

この辺りについては、もう少し詳しく「Preservation Facelift」という概念とともに別の記事で説明させていただきたいと思います。

 

 

 

③さらに狭義のDeep Plane 

②と③の違いは非常に難しいです。美容外科医に聞いてもきちんと答えられる人は少ないと思います。というか論文の段階でもごちゃごちゃしています。

 

②の段階だとまだ2種類のDeep Planeが含まれていて

・中顔面において、表情筋をSMASに含めるDeep Plane

・中顔面において、表情筋をSMASに含めないDeep Plane

があります。

この中での後者、つまり、“中顔面において表情筋をSMASに含めないDeep Plane”がさらに狭義のDeep Planeになります。

 

私は両方のタイプで行っています。その時の手術の組み合わせだったり、SMASの厚さだったり。

 

 

さて、まとめますと、Deep Plane Faceliftと一口に言っても

①(広義の)Deep Plane

②(狭義の)Deep Plane

③(さらに狭義の)Deep Plane

の定義があり、①の定義が広すぎるのでフェイスリフト界隈が玉石混合のDeep Planeで溢れかえっている現状があります。海外でも同様の問題は見られるようで警鐘を鳴らしている医師がいらっしゃいました。“Deep Planeと言っているけどDeep Planeでないフェイスリフトを多く見受けられるようになった”と。

 

Deep Planeの恩恵が受けられるのは②、③のDeep Planeだけです。

流行りに乗ってDeep Planeと言いつつ、糸リフトでごかましている医師でフェイスリフトしたら失敗必至です。

 

さて、3部構成にしてお送りしたフェイスリフトのコラム記事お楽しみいただけましたでしょうか?

 

3部構成にしましたが、まだまだ語り足りない部分があるのでこれについては“番外編”があるとかないとか。

 

乞うご期待?

リフトアップの王様手術、フェイスリフト、に関するブログ。

前回の続きから。

 

リガメント(靭帯)とはなにか?

少しフェイスリフトについての知識がある方なら聞いたことがある「リガメント(靱帯)」。
骨から出て皮膚まで伸び、皮膚やSMASを骨にピン留めしてくれています。

皮膚やSMASが重力に引っ張られて落ちすぎないように止めてくれていると言われているのですが(佐々木はこの理論に懐疑的ですがこれはまたの機会に)、こいつがフェイスリフトのリフトアップを妨げる原因になっています。

フェイスリフトは顔の横でSMASや皮膚に引っ張る力を加えるしかないので、途中でピン=靱帯があると引っ張る力が顔の前まで届かないのです。


フェイスリフトと靭帯について模型を使って解説

イメージとしてはこんな感じ。


モデルは私の相棒、オステ男くん。青い布が皮膚・SMAS、オステ男くんの頬骨に刺さっているピンが靱帯だと思ってください。後にも書きますが実際には靱帯はもっといろんな箇所にあります。今回はわかりやすいように一箇所だけ…

フェイスリフトみたいに顔の外側で青い布(=皮膚・SMAS)を引っ張っていますが、顔の前のたるみが改善していませんね。このようにピン(=靱帯)があると顔の前の方まで引っ張る力が効かないのです。こんな状態でフェイスリフトしたら満足にリフトできず失敗となります。


ピン=靱帯を外してあげるとこんな感じ。

しっかりと顔の前まで引っ張る力が働いてますね。
このイメージでもわかっていただけるように“靱帯処置”はフェイスリフトで失敗しないために重要になってきます。

さて、この靱帯。顔のいろんなところにあります。どの靱帯を処理するか、というのは学会でもよく議論されるところ。結構しっかりしたフェイスリフトの術式だと外せる靱帯全部外しているものもあります。

が…そんなフェイスリフトでも太刀打ちできないことや部位があることがわかってきました。


その原因がこれ。

この図の黒い部分。裏にはテープが貼ってあります。

そう、どうやら靱帯以外の部分でもSMAS・皮膚が、ピン留め(=靱帯)までは行かないものの、“糊付け”されているようなのです。

この“糊付け”をつけたまま、ピン(=靱帯)を外して引っ張っても…

 

あら?あまりたるみが良くなっていない。

黒い部分を剥がして、引っ張ると…

上がった!たるみが解消されました!!


Extended Deep Planeの使命

こんな感じでこの黒い部分、“糊付け”の部分も意外とリフトアップを邪魔しています。

実は“糊付け”の部分を外してあげるのが“Extended Deep Plane”の一つの重要な使命になります。

この“糊付け”って外すの大変なので私は時間をかけて丁寧に外しています。

一種の変態的なこだわりです。


まとめ

今回はフェイスリフトを受ける時に知っていただきたい“靱帯”、さらに一歩踏み込んで“糊付け”について説明しました。

次は最近用語が拡大解釈されている“DEEP PLANE”について書きたいと思います。

こうご期待。


必要であれば、この文章をWord、Text形式で書き出すことや、Instagram投稿・ブログ用に再構成することも可能です。

リフトアップの王様手術、フェイスリフト。

顔の横を切って、引っ張ることによってたるみを解消する手術になります。

 

糸リフトと違って皮膚に傷を残すからには”すぐたるみが戻った”、”何も変わらなかった”など失敗は避けたいもの。糸リフトよりも長い効果、良い効果を狙いたいところです。

そこで重要になってくるのが”SMAS”と呼ばれるものです。 

 

皮膚の下、皮下脂肪の一つ下にSMASというものはあります。

正式名称はSuperficial Musculoaponeurotic System。

簡単に説明すると皮下脂肪にもう一枚膜みたいなのがあります。これが重要なんですね。

 

さて、このSMASについてフェイスリフトの歴史を見てみましょう。

皮膚を切って引っ張るだけだとすぐに後戻りすることはフェイスリフトが誕生した1900年代前半ですでにわかっていました。この後戻りに対抗するために、皮膚ではなくSMASというものを引っ張ると効果が長続きする!とSMASの概念が提唱されたのが1900年代中頃。そこから色々なフェイスリフトが開発され、現在に至る。となっています。

 

現在主流の考えでは、”SMASを触らないフェイスリフトはありえない”といっても過言ではありません。SMASを触らないフェイスリフトはかなりの高確率で失敗します。

しかしながら、意外にも皮膚だけ切ってフェイスリフトしているクリニックも多くあります。特徴としては手術が短時間で終わること。きちんとSMAS処理していたら2-3時間では終わりません。まして1時間なんてそんなそんな。手術時間が短いので、患者さんの回転率はよくクリニック側は大儲け、ですが後戻りは早いです。色々な考えがありますが、私はこのタイプの手術を全くを持っていい手術だとは思いません。クリニックのための手術だと思っています。

 

 

 

少し話がそれましたが”SMAS”に話を戻しましょう。

 

先ほどSMASが重要であるという話をしましたが、実は少し前に形成外科分野で世界最高権威の論文雑誌に”SMASなんてないさ!”という趣旨の論文が掲載されました。

Minelli L, van der Lei B, Mendelson BC. The Superficial Musculoaponeurotic System: Does It Really Exist as an Anatomical Entity? Plast Reconstr Surg. 2024 May 1;153(5):1023-1034. doi: 10.1097/PRS.0000000000010557. Epub 2023 Apr 11. PMID: 37039509; PMCID: PMC11027987. 

 

 

今でいうX、旧twitterで少し騒がれていましたね。

 

皮膚しかいじらないフェイスリフトで大儲けしているクリニックが大喜びで反論に使ってきそうな論文です。おい、佐々木、SMASが重要といっておきながらSMASなんてないじゃないか💢というツッコミも飛んできそうですが落ち着いてください。

 

この論文、きちんと読むとわかりますが、”解剖学的にSMASは存在しないが、手術学的にはSMASは存在する”という趣旨の論文になります。

 

頭がこんがらがりそうなので解説すると、「この膜がSMASだ!」というものはないですが、「手術操作によって繊維や脂肪、靭帯、筋肉などをまとめて形づくるものがSMAS」となります。

 

つまり、”SMASはある”のです。そして、この手術操作によって作るSMASが重要であることは、先ほど書いた通り、長い歴史で証明されてしまっているのです。過去の失敗が現在に生きています。

 

この論文が出たところで結論は変わらず、”現在フェイスリフトにおいてSMASを触らないフェイスリフトはありえない”です。失敗のもと。NO SMAS, NO FACELIFT。 

 

 

さて、今回はフェイスリフトを受ける時に知っていただきたい”SMAS”について説明しました。

次回はもう少し踏み込んで”靭帯”について解説したいと思います。

 

こうご期待。