Sir Charles Tompsonといえば名盤「Bick Dickenson Showcase」で音数は少ないのにキレキレというピアノ演奏で名前を知られています。

特にロシアの子守歌、ソロパートの一番手である彼のピアノソロがこの名演を作り上げたといっても言い過ぎではないでしょう。ポロポロっと、しかしインパクトあるそのピアノのトーンはこの後続く名人たちの矍鑠たる演奏への導入として忘れがたいものがあります。ピアノソロの素晴らしさではセロニアスモンクのBag`s Groove Take 1と並ぶと思います。
Vangurdにリーダー盤があるのは知っていましたがその後どうなったのか全く知らず、あの時代のジャズミュージシャンだから早世してしまったのかな、と無知な私は勝手に思っておりましたら、、、、なんとその後も何枚かリーダーアルバムを作っていて、さらに晩年は日本人女性と結婚して98歳で東京の病院でお亡くなりになったということを最近知りました。東京で録音したアルバムも何枚かあるようですが入手困難、アマゾンで注文したら手配できませんでしたという返事がきました(涙)
He died on June 16, 2016 at the age of 98 in a hospital near Tokyo, Japan. He had lived in the country with his wife Makiko since 2002.[4] Earlier he had a daughter, now known as Tina Hoffman, with blues/jazz singer Lauricia Lorraine Balsz. She has become a singer-songwriter. from https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Thompson_(jazz)
ドラッグや黒人差別が蔓延していたかの時代でこれだけ長生きするなんてすごいです。なぜ?お人柄なのか、と思ってしまったのが彼が1974年にメイジャーホリー、エドシグペンとのトリオで録音したアルバムを聴いたからです。

ジャケットのなんというか自然な笑顔からの中身はその通り、とにかくご機嫌になれるこのスイング感がたまりません。ジャズを楽しもう、というおおらかな生酛にさせてくれます。ロシアの子守歌の再演は勿論素晴らしいのですが一曲目のGee Baby, Ain`t I Good To Youのミディアムスローテンポでもうどうかこのままこのアルバムが永遠に続きますように、と思ってしまうほどご機嫌な演奏です。 Hey Thereなんて手あかにまみれた流行歌さえもバーボンをロックで片手に飲みたくなるぐらいウキウキさせてくれます。ソロでブルースを2曲奏でるのですがこれも乙です。思わずイヱェ~などと口走ってしまいます。このアルバム、何回聞いてもBick Dickenson Showcaseの芸風と全くぶれていない、ミュージシャンにありがちな「俺の音楽を聴いてひれ伏せ!!」的なノリではなくて「では聞いてください、これが私のピアノなんですよ」的な、それでいて時代を超えて楽しませてくれる音楽にただただ脱帽です。
彼のジャケット写真、ほとんどこのように素敵な笑顔です。温厚な笑顔を常に絶やさず、自分の芸を変えることなくショービジネス界の荒波をひょうひょうと乗り切ってきた(本人にはそんな意識なかったのかも)からこそ長寿を全うされたのではないでしょうか。

