君がため 春の野に出でて 若菜摘む
わが衣手(ころもで)に 雪は降りつつ

あなたに食べてもらおうと思って
早春の野に出て若菜を摘んでいます。
そんな私の袖に、雪がひらひらと舞い落ちていますよ。

■■解説■■
若菜とは春の七草のこと。
1月7日に七草粥を食べて無病息災を願う習慣は江戸時代に広がった習慣だけど
原型はこの時既にできていた
元々は中国から伝わった宗教的行事、踏青(とうせい)というもので
若菜を摘みながらピクニックに行くという。

ここでいう春は新春のこと
年賀状に書く新春のお喜び申し上げます。
ってあれなので、雪が降っても全くおかしくはない。

おそらく、若菜を誰かに届け
その時に添えられた歌

百人一首は、これぞといったよりすぐった歌を集めているので
かなりの技巧を配した歌が多い。

そこにあって、この歌は何とシンプルなのか。
掛詞を始めとして
何の技巧も用いてはいない。

逆にこのシンプルさがおおらかな印象をうんでいる
光孝天皇の性格と相まって風格を感じる歌

■■光孝天皇■■
光孝天皇は極めて穏やかで無欲な性格

藤原基経が陽成天皇下ろしをしようとして
では次を誰にするかと考えた時
この性格の故に、選ばれたと言えるでしょう
藤原基経からすると扱いやすいという事なのでしょう。

時すでに、55歳
在位わずか4年足らずで58歳にして亡くなる。

人生とは面白いものですね

無欲ということが最終的に良い方向に転がるのですから。

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