昨日、彩の国さいたま芸術劇場で、#佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団 を聴いてきた。

 

退院後、アマオケのコンサートに3回行ったが、本場のプロの音楽団体のコンサートは本当に久しぶりだ。
 

 

電車はまだおあずけ。暑さのこともあり、行き帰りともタクシーを利用。


帰宅後は少々疲れと頭痛を感じラグビーのサモア戦の中継そこそこに早めに床に着いたが、心地よい疲れだった。
自宅の近場で、世界最高の音楽を楽しめるのは素晴らしい。

 

客席は満席だった。ほとんどが、バロック音楽を楽しみたいファンなのであろう。
聴衆のステージに対する集中度が伝わってくる。
時折、咳が聞こえた他は、客席のノイズはまったく感じなかった。
さいたま芸劇は、こうした客層をしっかり掴んでいるようだ。

 

終演後、バッハの協奏曲のCDも購入し、佐藤俊介のサイン会に並び、しっかりサインもいただいた(ミーハー)。
浦和フィルが27日にここでオランダのフェルフルストを取り上げることを伝えると「珍しいですね!頑張ってください」と佐藤氏。

 

 

コンサートでは、極上のバッハを堪能した。
ピリオド楽器を自在に奏る妙技、佐藤俊介が操る自由自在で精緻なアンサンブル。
典雅な響きに歴史の豊かさと重みを感じた。

 

<以下、鑑賞レポ>

各パート1人、立奏のスタイル。チェロとハープシコードはもちろん座っているが、チェロは平台に乗り、高さのバランスを取っていた。
曲ごとに、楽器の配置を変えていたのも興味深かった。
 

リピエーノとソロの対比、各合奏群でどのようにアンサンブルが行われているかなど、コンマス・ソロヴァイオリンを務める佐藤俊介が演奏中に発信する信号が視覚的にも良くわかり、ライブならではの味わいを楽しめた。

 

コンサート前半、
 

バッハ/管弦楽組曲1番では小型のハープシコードを中央に縦に置き(奏者は後ろ向き)、弦楽器は下手側、管楽器が上手側。
バロックオーボエとバロックファゴットの鄙びた音色と超絶テクニックが素晴らしすぎる。最初の数秒で既に涙が出そう。どのような舞曲かが良く判るアウフタクトや拍の統一感。その中で極めて自由にアンサンブルが進行して行く。完成度の高さ。

 

ビゼンデル/「ダンスの性格の模倣」では管楽器と弦楽器を上手・下手入れ替えた配置。
初めて目にした作曲家だが、バッハと同時期のドイツバロック。
トラヴェルソ奏者がいつの間にかピッコロに持ち替えて、田舎のダンスが現前するワクワク楽しい演奏。

 

バッハ/Ob&Vn協奏曲では、ハープシコードを中央に、Solo ObとSolo Vnがそれぞれ上手・下手側にたつ。リピエーノはその外側。Vn,Va上手側、Vc,Cbが下手側。
バロック・オーボエの妙技が素晴らしい。二楽章の美しさに心打たれる。

 

コンサート後半、
ハープシコードを大型の楽器に替え、横向きに設置。
 

バッハ/Vn協奏曲E-durは、ハープシコードの後ろにリピエーノ(+通奏低音Fg)が並ぶ。高弦が上手、低弦が上手。
SoloVnはハープシコードの前、かなり下手側。
この曲では佐藤俊介のソロの妙技を堪能。曲想に応じて大胆にテンポを動かしたり大きく間を取る自由な演奏。三楽章は速めのテンポ設定でワクワク感。

 

ビュファルダン/5声の協奏曲より二楽章は、トラヴェルソのSoloと弦楽合奏の曲。
ビュファルダンはフランスバロックの作曲家。クヴァンツの師。
Vn協では取り外していたハープシコードの蓋を取り付け全開状態としその前にトラヴェルソが立つ。
蓋をトラヴェルソの反響板としてるのだろう。
リピエーノは全て、ハープシコード下手側に。奥に低弦とFg、手前にVnVa。
初めて聞く曲だが、こんなにも幸せな曲があったのか!トラヴェルソの優しい音色に心洗われる。

 

バッハ/ブランデンブルク協奏曲5番は、前曲と同じ配置。Solo Vnは少し中央に寄りSoloトラヴェルソとバランスを取った。
一楽章末尾のハープシコードのカデンツァは自由自在に奏され、その見事さに思わず拍手をしそうになった。最後のTuittiは譜面にはないトラヴェルソも加勢。
二楽章は装飾を多用し自由にAffettuoso。愛の歌の呼び交わしが美しい。三楽章はリズムを際立たせた演奏で、舞曲の楽しさとSoloとリピエーノの対比を立体的に表現。


この聞き慣れた曲が、こんなにも色彩に富んだ曲だったか、と驚くような、曲の部分々々の陰影がはっきり判る演奏だった。
テンポの伸び縮みや大きな間、強弱の変化など全てが自由自在に行われている。
それを支える精緻なアンサンブルの信号が交わされ、

新たな曲想に入るたびに、ドアを開けて「次の間」に移る感覚。

ドキドキしながら入り室内の装飾や絵画を眺めているかのような、
まるで欧州の中世のきらびやかな古城を散策しているような、
新たな感覚
を存分に味わい楽しんだ。

 

アンコールは、バッハ/管弦楽組曲2番からバディネリ、同3番からアリア。
幸せなアンコールで締めくくり送り出す、聴衆への有難い贈り物。